4.0
料亭を巡る人間ドラマ
主人公補正、不釣り合いなスパダリ、予定調和のハピエン、「そのためだけにいる」当て馬。時代劇のジャンル違いみたいなラブストーリーに、食傷してる方には目先が変わる作品です。
時は戦後。料亭の長女いち日は、料理人だった夫を戦争で亡くします。家を守るため再婚しますが、来た婿はかなり若いクセ者というお話です。
見どころはシナリオと周くんの設定の秀逸さ、これに尽きます。
主人公を甘やかさず、その時代ならではの苦難がきちんと物語に組み込まれている。個人の幸せの総和より家の存続が優先される時代を擬人化したような伯母、女が厨房に立っただけで目くじらを立てる社会や板長。あるべきトラブルをちゃんと描くのは、物語と真摯に向き合う作者だからこそでしょう。
19才の婿、周くんは、料亭にとってはスポンサーからの回し者でもある若者。先を読む力はあるけど分相応に世間知らず、しかもいざとなれば帰る家がある三男坊。自然、(悪気はないものの)料亭「桑の木」を経営の実験台にします。文句を言われても自分が強い駒である自覚があるので聞き流す、可愛げ皆無のおぼっちゃま。
彼の存在が、何がどう転ぶかわからないハラハラ感を作品に出していて、先が読みにくくなっています。
お仕事マンガ、お料理マンガの側面もある作品なので、
物資がやや充実しすぎな気がする(新巻鮭ならまだしも初物の鮭を京都で食べられたの?)のは少し気になりました。
そして絵のバリエーションが物足りないです。顔の輪郭が老若男女日本人アメリカ人で大差ないのは、本来編集者が物言いすべきところでしょう。メディア化は実写化で正解だったと思います。
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ながたんと青と-いちかの料理帖-