5.0
許される不倫があるとしたら
小田ゆうあ先生の作品は、まず問題定義があって、そこから相応しいキャラクターを作っているのかと思うくらいに考えさせられるマンガだと思います。
「斉藤さん」では保育園周りの大人たち、最新作「かろりのつやごと」ではルッキズム。この「ふれなばおちん」では不倫のボーダー、純愛と不倫の境界といったところでしょうか。
「いいお母さん」でいる事に全てをかけているヒロインが、夫の策略で元俳優の男と出会い、物語が始まります。夫は妻に女らしさを取り戻して欲しくて「妻を誘惑してほしい(妻のまわりにいて、妻が意識するように動いてほしい)」と男に持ちかけ、見返りに社宅入居の便宜を図ります。側から見れば「自分たち夫婦の仲が深まるように当て馬になれ」と言っているも同然の傲慢な申し出。男(若くはないけど色気があり、モテるタイプとして描かれています)は夫への反感もあって、妻の籠絡に乗り出すのですが…という話。
まず、そもそも夫の浅はかな行動がなければ二人は出会わず、恋に落ちることもありませんでした。妻に意識させたければ、自分を磨いていい男になる事もできたはずなのに、妻にだけ求める。仕事は妻もかなりのレベルでこなしている、というか妻は同性から見て相当なデキる女です。
一応、形だけは夫の目論見は当たります。限られた予算で時間で、妻は自分の外見に手を入れ、夫目線でも美しくなるのですが、それはもちろん男の為。
夫は女としての妻を失います。
キスはしたものの男女の仲にはならず、互いに思い合うだけの恋。しかも発端は夫という、なかなかに珍しい不倫劇です。
あなたから見て、この恋は罪ですか?という作者様の問いかけが聞こえるような作品です。
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ふれなばおちん