5.0
想像以上に心理描写が深い
主人公の小説家・青葉よもぎは、
長年男女の関係だった出版社社員の東雲が別の女性と結婚することをきっかけに
東雲と離れることになる。
失恋や肉親、親しい人との別れは、自分の体の一部を失うくらいの痛みを感じると言われる。
よもぎにとって東雲との別れは、よもぎの体の一部を失うくらいの痛みを抱えることになったと思う。
小説家のよもぎは新しい小説のジャンルを開拓するために女性用風俗の利用を予約したところ、
ホテルに現れたセラピストは家政夫としてよもぎの家に来ている青年・金城で・・・
このくだりを表面的に読むと恋愛漫画的な展開に見えるけど
心理学的に読むと
失恋によって失った自分の一部を
失恋のきっかけになった男性ではなく
別の男性によって取り戻すことができるのか
そういうふうに読めると思う。
執着心の強い人だと失恋のきっかけになった人物にこだわるけれど
生きていくうえでは別の人によって失った自分自身の一部を埋められた方が得策に決まっている。
でもそこまで人間は割り切れる生き物なのか
たとえ割り切れたとしても、その過程は苦役や地獄なのではないのか
けっこう重めに読んでいってます。
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