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二面性の罠
ストーカー被害が多発している昨今、この作品の意味を考えてみました。仁科がした行為は明らかに犯罪です。部屋中に張り巡らされた藤子の写真は明らかにコレクターの執拗な執念の結晶であり、一線を越えた狂気を感じるものです。しかし一方で、ベランダで一日の終わりに藤子とビールを飲みながら語り合う仁科は、紛れもなく好青年そのものです。共存するこの二面性をどう捉えるかは人それぞれですが、この二面性に潜む別の側面(嫉妬深さ、独占欲、懐疑心)が表面化した時、藤子が対応できるかは疑問です。
藤子は控えめな良い子ですが、困難や理不尽なことを我慢で対処するタイプでのようです。癒しは確かに必要ですが、暫定的な逃げで根本的な解決ではありません。彼女はドメスティックバイオレンス被害女性特有の共通点を持っています。つまり戦って乗り越える女ではありません。
この二人に対する見解は人それぞれですが、「癒しのお隣さんには秘密~」というよりも癒しのお隣さんの危うさのように思えて。二面性に潜む危うさに対し注意喚起を促す、意味のある作品なのかもしれません。
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癒やしのお隣さんには秘密がある