リリエルの場合、デルフィニア思想に傾倒したのが失敗だったよね。ワガママお嬢様がただチヤホヤされているだけなら大した問題ではなかったけど、社会で変に影響力を持ってしまったばかりに、それを失った時の痛手が大きく、取り返そうと躍起になってしまった。
しかし、自由を求めて邁進していた彼女が、他人の自由意思を奪って意のままにしようと思った時点で、彼女の思想は破綻している。ヘルに出会う前に、既に、皆が自分の言う事を聞いてくれなくなった、という言い方をしているのだから、語るに落ちている。
多分、弱者救済は彼女の中では後付けで、自由こそが本義なのだろう。かつて病弱で自分の体も思うに任せなかった事の反動と、エルザが体現している「貴族の義務と誇り」がもたらす閉塞への反発が、自由の概念と結び付いたんだろうな、と想像。
だから、彼女の行動はどこかピントがずれている。平手事件のきっかけになった、貧しい女性に剣を配る試みに、一体どれほどの需要があったのか。恐らく、そこで剣を得た女性の多くは、その剣を換金しただろう。剣なんて携帯にも保管にも気を遣わないといけないし、そもそも剣術を習う時間などどこにあるのか。どうせ習うなら、剣術より、剣を持つ相手を無力化する護身術のようなものの方が、実用的と思う。
自由が本義で、弱者救済はおまけだから、自分自身の贅沢には鈍感なんだろう。民衆が「愚か」なのは学ぶ時間がないから。時間がないのは、働かないといけないから。働かないといけないのは、お金がないから。だから、まずは貧困問題を解消しないと次の段階にいけないのに、そこをなぎ倒しているのも、問題の根本を分かっていないからで、彼女は一体、誰の、どんな政治学を学んだのかと、不思議でならない。
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悪女は変化する
086話
第85話