幾らアルンデル魔力があったとはいえ、リリエルの行動が今までさほど問題にならなかったのは、エルザに対するような態度を他の人に取らなかったから、というのもあるだろう。
エルザへの態度を反省している、という母の言を受け、リリエルは、病弱な妹のせいでいつも後回しにされて寂しかったとでも姉が言ったのか、と実に的確な返しをしている。つまり、エルザが何となく家族から浮いていて「可哀想」な理由を、リリエルはちゃんと分かっているのである。
問題は飽くまでも両親であって、たまたま病弱に生まれただけのリリエルに、何の罪もある筈がない。だというのに、何か罪悪感めいたものがあって、落ち着かなかったのだろうな、と想像される。もしかして、エルザの株を上げるため、というもっともらしい言い訳を付けて、勝手に私物を売ってお金に換えていたのも、この辺りのフラストレーションの結果だったのかもしれない。
多分、エルザだって最初は苦情を述べた筈だ。が、結局は折れた。何を言っても無駄と諦め、消極的に受け入れていたエルザも、祖母の形見にまで手を出されて、ついに堪忍袋の緒が切れた。そこで平手打ちを食らって、リリエルの方も不満が爆発した。
ここでリリエルは、たとえデタラメでも言った者勝ちで、勢いさえあれば適当に乗り切れる事、そして、なんだかんだでエルザは自分を許すという事を学び、味を占めたのだろうな、と想像する。平手打ちをきっかけに始まった悪女評価に乗っかり、都合の悪い事は全部姉のせい、表向きは庇うような事を言いながら、チラリチラリとマイナス情報を提供して、誤解を助長するように持って行った部分もあるのではなかろうか。
という事を考えると、アルンデル魔力の低下とかなくても、エルザというスケープゴートがいなくなった時点で、リリエルの評価が下がるのは当たり前の話で、別に驚く事ではない気がする。
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悪女は変化する
085話
第84話