5.0
傍観者とは誰か。
今のところ、「傍観者」を気取るのは主人公のレイチェルで。物語は基本、彼女の視点と想いで綴られている。途中から他の人物の視点で是非お願いしたいと願っているのだが。出来れば全員の。
レイチェルは切ない片想いをしている。ずっと。隣の家の息子、ノアは実の姉アリシアに恋をしている。姉は難病を患い、余命いくばくも無い。レイチェルは進んでその優しい姉と親友となり。ノアはそんな優しいレイチェルを信頼して。アリシアもまた、天使のごとくの優しさで、レイチェルとノアを愛している。仄暗ささえあるノアのアリシアへの想いを、ノアごと愛してしまったレイチェルの苦しみ。ノアもまた、レイチェルに少しずつ、本当に自分では気付いてもいない想いをレイチェルに抱くようになる。レイチェル自身は、ノアとアリシアの恋路の傍観者だと、苦しみながらもそれを尊び、もう、これは無償の愛では無いかと思う。本当はそんな苦しみ合いながらも心の奥底で紡ぎ合うレイチェルとノアの恋を傍観者であるアリシア視点で紡いでも見て欲しい。または。少し嫉妬もあっただろう、レイチェルからのアリシアへの愛情を、またアリシアからレイチェルへの優しさを愛と呼ぶのなら。それを見守るノアこそがまた傍観者なのだ。ノアの兄や家族。レイチェルの父の会社の男。彼等を取り巻く人たちもまた、傍観者で。転じて我々もまた傍観者の1人でもあるのだ。レイチェルとノアの。苦しみながらきっと成就される恋の。結末が温かなものでありますように。一傍観者として、願っている。
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傍観者の恋