5.0
「この感動は自分のものではない」
このマンガの第一話には、「最強伝説 黒○」の第一話の冒頭そっくりそのままのシーンがあります。
どちらの主人公も、サッカーW杯日本代表の試合を熱狂的に応援しているその最中に、全く同じことに、気づいてしまう。
今、フィールドに立っているのは自分ではない。
ではこれは、誰の感動なのだろう?
どんなに感動したって、結局は他人事じゃないか。
カッコよくてチョイ悪で、尚且つ成績がよくて性格も良くて、誰からも好かれる人気者の八虎くんは、実は相当頑張っていて、その内面にはカラカラに乾いた虚無感があります。(「最強伝説〜」の黒○に言わせたら、アンタそんなに恵まれといて、一体なんの不満があんの!?的なキラキラ人生の王子さまです。何より夢も未来もある十代の高校生ですし…黒○は外見のパッとしない孤独な中年のオジサンですが、自分と人生の歩き方を変えると決意し、空回りしがちだけど必死に動き出します。しかし、「その何か」を全く見つけてもいないで動き出してるところが、リアルです。闇雲に変わりたいと願うオジサンの右往左往ぶりを楽しむ漫画でもあります)
対して八虎くんはさすがというか、「他人事の感動」に気がついてしまったたった数日後に、「その何か」に出会えてしまうのね笑 だからこそのこのマンガなんですが、八虎くんが「その何か」に踏み出すまでの葛藤が、こっちはこっちでリアルです。好きになってはいけない人に一目で恋に落ちてしまうのに近い。八虎くんは冷静に自分を諌めようとします。振り切ろうと思いつつ、どうしても諦めることが出来ない。どうしてもそれがやりたい。その選択で人生がまるきり変わってしまうとしても。堅実な人生を歩んでほしいと願う母親を失望させるとしても。八虎くんは周囲の人の気持ちを慮るとてもいい子なので悩んでしまうのです。それこそが彼の最大の長所であり短所でもあると、ある人物は早々と喝破します。
私的には、あんたの人生を生きてるのはあんたでしょ。あんたの親じゃない。自分の人生は自分の好きなことだけ、死ぬまでやれ!今やれるなら、絶対に今やっとけ!です。
色々吹っ切れて、やっぱりやろう!と「その何か」に向かって爆進する八虎くんの姿はがむしゃらで、イキイキしてます。応援したくなります。
あと、「過去の自分を模倣する」は結構、刺さりました。画家だけではなく、全ての表現者に刺さる言葉ではないかな…
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ブルーピリオド