5.0
穏やかに育まれる死神との愛
この作品のヒロインの没落華族の千鶴は、新華族の三条家の使用人として奉公しながら、酷く虐げられる日々を送っていた。 そんなある日、千鶴は、小石川の街に蔓延る死に至る流行り病を鎮める為の生け贄として、死神に花嫁として捧げられることとなった。
千鶴は、死神のもとに嫁ぐと驚愕の事実を知る。
死神の名は八雲。実は、死神は人間の命を刈り取って死に追いやるような恐怖の存在などではなかった。人間は、死神の案内無しで死ぬと、魂が迷い彷徨い悪さをするようになって苦しむ事になってしまう。だから死神は、人間の魂を黄泉へと安らかに導き人間を救う働きをしてくれていたのである。人間の寿命はあらかじめ決まっていて、流行り病による死も、死神のせいなどではなく、元々決まっていた寿命に過ぎなかった。死神は優しい存在だった。
死神の八雲は、死神見習いの浅彦と、幼い人間の子供の一之助と暮らしていた。一之助が、千鶴にとても良く懐いて、無邪気で可愛い。
一之助は、両親に虐待されて、死にたいと絶望の淵にいたところを八雲に救われていた。 そんな一之助が、母親の死の間際に、母親に「愛している」とぎゅっと抱き締めてもらって、『愛されていたのだ、生まれてきて良かったんだ!』、と実感出来たシーンには、思わずホロリ泣かされた。千尋は「これからは、自分が一之助の心が壊れないように愛情を注ぐんだ!」、と八雲に誓う。八雲は、一之助の本心に気づき心を救ってくれた千鶴にありがとうと感謝する。胸が熱くなる場面だ。
八雲には、愛というものがよくわからなかった。けれども純真無垢で慈愛に満ちて健気で芯の強い千鶴と過ごすうちに、八雲にも変化が起き始める。
千鶴も、八雲の心に寄り添いたい、という想いが日々強くなっていく。 二人の今後の展開が楽しみです♪
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死神の初恋~没落華族の令嬢は愛を知らない死神に嫁ぐ~