4.0
悲惨な物語にこそ、笑いは必要
女性向けの漫画なので、主人公の2人がいずれも美形でスッキリした画面で描かれていますが、同じ設定で青年漫画だったら、殺伐とした画面だろうな、と思います。往年の名作映画、「ランボー」を彷彿とさせるヒーローですが、ベトナム帰還兵のランボー以上に、その生い立ちが悲惨です。人間兵器として育てられ、読み書きさえ教えられていません。つまり、どんなに命がけで手柄を立てても、あくまで一兵器としてしか扱わない事が前提なのでしょう。戦争が終わったから、戦功を讃えて貴族にしてやろうと、その前に貴公子として相応しい矯正を受けろ、と更生係のヒロインが送り込まれます。一見有難いかのような処遇ですが、戦争が終われば、危険人物でしかないヒーローを、厚遇で抱き込んでしまえ、という目論見が透けて見える、かなりな胸クソ設定です。戦闘に特化して適応してきたヒーローは、ゆっくり布団で眠る事すら、生まれて初めての経験で、適応に戸惑うという気の毒ぶりです。かなりヘビーなテーマを、「狂犬な彼を貴公子に変えてみせます!」というノリで描いている本作品。テーマが余りに重すぎるためか、コメディに振り切るという、まさかの手法で暗さを払拭しています。何とか、致命的な傷つきを負ったヒーローに穏やかな日々を与えてあげてほしい、と更生係のヒロインおよび制作の方々に、願わずにはいられません。
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狂犬な彼を貴公子に変えてみせます!