読者は二人の気持ちが見えている。
だから、ああすればいいのに、こうすればいいのにって思う。思える。
でも、樹は?梓は?
お互い、自分の気持ちがよくわかってないときもあるし、たとえそれがわかったとしても、相手のことを考えて、もしくは自分が傷つくのが怖いからと、なかなか素直な気持ちが伝えられないでいる。根底にある自分の行動のもとになる思考が拗れてて(特に樹)、さらにその考えに至る経過の所以をお互い話して理解するには、すごく時間と経験と勇気がいるだろう。
梓は、樹と合宿で離れる前に、傷ついた樹に優しくしたいのと好きだから離れたくないという気持ちで一線を越えることをのぞんだ。でも、実際には樹と続けていくには、自分のやりたいことしたいことはすべてわがままなんじゃないかと思えてきて、樹は自分のために頑張ってくれてるのにと、枝を切るようにいろんなことを切っていくしかないと思ったけど、今里さんの「諸行無常だから大丈夫」という言葉に引き戻されたんだね。
樹は梓の要求に戸惑いながらも、梓が望むなら、と梓の要求通りにするけど、涙を流している梓に気付き、自分がひどいことをしているような気がして、その思いを正当化するために誰のせいか考えたら、父親のトラウマにつきあたってしまった。
いつも自分は悪くないのにって。でも、樹は自分のストレートすぎる言動が、結局は相手の圧になり無理をさせて、ひずみを生む結果になっていることをなんとなくだけど気付いていた。自分は悪くないと思っていたら、実は自分のせいだった。すごくつらくて悔しいだろうな。自分が大切にしている人を悲しませていたのは実は自分だった。自分が変わらないせいで。樹が悔しくて涙を流すのもうなづける。そんないっぱいいっぱいな時、梓に帰れとしか言えないよね。
お互いの気持ちや行動の意図が読めない二人には、冷静になるためにしばらく時間が必要かと。
お互いにつらいけど、二人が長く付き合うためには、必要なすれ違いだったと思いたい。
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ちよにやちよに
100話
100. 嫌い