デミアンが一人でスワンに戻るという選択は、
つらい選択であることに間違いはない。クロエはもちろん、デミアンにとっても。
心理状態が崩壊寸前のクロエにとっては、デミアンと繋がっていた最後の糸が
音を立てて断ち切れるほどの、あり得ない非情な選択だったことでしょう。
緊急事態に自分の感情に流されず、未来を見据え
家族はもちろん、敵、仲間、領民、他国の状況もろもろの全体最適を考えて、
いま何を優先して行動すべきか、
たとえそれが大切な人を一時的に悲しませる決断になったとしても
目的達成のために、ためらうことなく行動できるのは、
優秀有能な、できる男デミアンだからなんでしょうね。
本当は、少しでも早く愛するクロエに会いたくて、スワンに連れていきたくて
自ら迎えにきたのに、あえて置いていく理由はおそらく2つ。
少しでもリスクにある場所にクロエを近づけたくないのと
もう1つは、やるかやられるかの戦場で、万一、クロエが身近にいて
何かあったとき、彼女を守ることを優先して、王位奪還への判断を誤るのを
防ぐためかな。
スワンでコンサートに行った後、ベルディエに向かう列車の中でデミアンが
ずっと人生の目標としていた果たすべき役目を目前にしながら
お前の心を掴むために列車に乗り込むとは・・・とクロエを抱きながら
「俺の愛の深さをお前はちゃんと知るべきだ」と彼女に言っているのが
そういうことなんでしょうね。
失いたくないが故に、留守の間、監視させるとは
彼女の心は離れていく一方ですが、それほどまでにクロエを愛しているのです。
まったくの独りよがりで自分勝手ではありますけどね。
意思の強いクロエの言動で、まだまだ波乱の様相ですが
もはや魂レベルで愛し合っているふたりなら、きっと乗り越えてくれるはず。
台風一過の澄み渡る青空のように、わだかまりが溶けてしあわせな二人の姿が
見えることを期待します。次回以降も楽しみです!
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その品格に反抗を
046話
第46話