5.0
オリジナリティ強めの転生もの(長文デス)
転生ものはある程度決まったパターンにバリエーションを加えて創られることが多い印象ですが、これは趣が違います。過去の自分に転生ではなく、時間の流れに沿って別の人に転生するオーソドックスな生まれかわり。
令和のドライさよりも昭和の重い湿り気のようなものを感じますが、後者にありがちな復讐や呪いはありません。
ヒロインは領民のクーデターで処刑されるので生まれ変わって復讐する話でもおかしくないのに、彼女の中にあるのは後悔、戸惑い、そして贖罪です。
特徴的なのがヒロインの心の声、想念が一人称で滔々と語られること。まるで一人芝居かシェークスピア演劇の独白シーンのよう。
それはヒロインがあれこれ考える面倒くさい、じゃなくて(ごめんなさい🙇)真面目な性格に設定されているからなのか原作者氏のスタイルなのかわかりませんか、彼女の想念の渦に巻き込まれて抜け出せなくなる感覚に襲われます。それを惹きつけられる、魅力的と感じる人もいれば重いと感じる人もいるでしょう。
いずれにしても原作者氏は言葉を紡ぎ出す力があり、オリジナリティを出そうとしている方なんだろうなと思います。
タイトルが長過ぎないのもそうだと思います。
長いタイトルは数ある作品群から読者の目に留まるようあらすじがすぐにわかるための工夫だと思いますが、最近はそういうのばかりで逆にどうなんでしょうね…
短いタイトルで勝負するということはよほど自信があるのか、ピピッと来た人だけ読んでくれればいいと考えているのか、どちらなんでしょう?
ストーリーの結末はたぶんヒロインが領主と結ばれるんだろうなと想像します。
でもふたりがこれまで背負ってきた因縁を考えるとすっきり解決してハピエンではなく、ふたりとも心に残った古傷をそっと抱えて生きていくことになりそうな予感がします。どんな終わり方になるのか気になります。
そんなわけで、他と少し違うものを求めている方に強くお勧めの作品です。
-
0
狼領主のお嬢様