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作品レビュー
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81 - 90件目/全107件

  1. 評価:5.000 5.0

    別格の恐怖

    ホラー漫画は結構読んだが、サイコものとしての怖さは、ちょっと別格なんじゃないかと思う。
    一種の正体不明性と、突っ放したような後味が絶妙に嫌だ。

    何がホラーって、座敷女の行動原理が、根本ではさっぱりわからない、ということだ。
    例えば、「面白半分で肝試しに行ってひどいめに遭う」とか、「新種のウィルスが蔓延した結果、街にゾンビが溢れる」とか、「過去のちょっとした罪を怨まれて復讐される」とか、そういうある種の因果関係みたいなものが、この漫画にはない。
    主人公はただ、運が悪かっただけだ。
    正体不明の何かが唐突に現れ、私たちの日常をあっさり崩壊させる。
    本当のホラーって、そういうことなんじゃないかと思う。

    訳がわからないというのは、とても恐ろしい。

    • 8
  2. 評価:5.000 5.0

    生きづらさ、そして、カートのこと

    別サイトで読んだ、同じ作者の「センコウガール」が素晴らしくて、この漫画に飛んできた。

    女装癖とか同性愛とか、そういうことは多分、作品の本質ではなくて、核心にあるのは一種の生きづらさ、なのではないかと思う。
    なりたい自分、なれない自分、求めていたはずの「自分らしさ」すら、見出だしたはずの「本当の自分」すら、いつの間にやら見誤っていた気がする自分、ぐちゃぐちゃに絡まったまま、それでも生きてゆくしかない自分。
    そんな若い魂の痛みが、ひりひりするくらいに伝わってきて、胸が痛んだ。

    タイトルは明らかにニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」をもじっているけれど、カート・コバーンという人もまた、強烈な生きづらさを抱えていた。
    瞬く間にロック・スターに成り上がってしまったという現実と、「こんなものになりたかったわけじゃないのに」という無い物ねだりの相克の中で、カートは生き、死んでいった。
    そんなカートの姿が、この漫画の登場人物たちにだぶって見えた。

    もう少し、書きたいことはあるのだけれど、続きは、「サイドB」で。

    • 7
  3. 評価:5.000 5.0

    揺さぶられる感傷

    昔読んだ小説の中で、語り手が「今までの人生で得たものと失ったもののリスト」を作ろうとするくだりがあった。
    まだまだ長い人生だ(と思う)が、私はこれから、何を得て、何を失って、生きてゆくのだろう。
    そして、死んでゆくのだろう。
    この漫画を読んで、そんなことに思いを馳せた。

    「うせもの」は「失せ物」である。
    「探し物」ではないのだ、本来は。
    だから、私たちはその多くを、見つけられない。
    取り戻せない。
    でも、永久に失ってしまった何かと、誰かと、もう一度、向き合うことが出来たなら。
    せめて、この世の別れの際に。
    そんな感傷を、ぐらんぐらんに揺さぶられる作品。
    駄目だ、涙なしには読めなかった。

    • 7
  4. 評価:5.000 5.0

    ホラーって楽しい

    マッド・メディカル・ホラー・ブラック・コメディ、とでも言うか、とても楽しい漫画である。

    「ブラック・ジャック」のホラー・コメディ版、というと少しは伝わるだろうか。
    あるいは、「ブラック・ジャック」と「笑ゥせぇるすまん」を足してグロテスクな味つけをした、というか。

    とにかく、主人公である人造人間・ふらんのキャラクターがいい。
    人間離れした(まあ人造人間だけど)圧倒的な医療技術、常識と倫理観の完全な欠如、それでいて、彼女は決してサイコ系のキャラクターではなく、基本的には「善意」で動いている。
    世のため人のため、である。
    そうして善を為そうとして、結果的に酷いことばかりやっている。
    が、考えてみれば、人間とはそもそもそういうものではなかろうか。
    ヒトラーだって、善と信じてやったのだ。
    その意味では、まことに人間らしい人造人間である。

    このあたりのバランス感というか、アンバランス感が絶妙で、出来事としては結構残酷な筋立てのエピソードが多いにもかかわらず、不快感も悲壮感もまるでない。
    これだけバッドエンドを積み重ねながら、後味はむしろ爽やか、というのは、凄いことだと思う。
    その奇異な読後感に私はすっかりやられてしまい、先を読むのが止まらなかった。

    嗚呼、ホラーって楽しいなあ、という感慨を抜群の疾走感で届けてくれる、悪意の皮を被った善意に満ちた、良質な作品。

    序盤でいうと、「CHRYSALIS」のエピソードは必見である。

    • 6
  5. 評価:5.000 5.0

    死者と踊るダンスポップ

    人の死が一日前に「見えて」しまう少女のストーリー。

    以前、この作者の「死にあるき」という漫画のレビューで、私は「主人公の朱鷺子は他のどの漫画のキャラクターとも明確に違う、そのキャラクターの完成度は突出しているが、漫画としての表現が追いついていないように思う」という意味のことを偉そうに書いた。
    本作で、作者は、飛んだ。
    それは、ほとんど驚愕を覚えるほどの飛翔だった。

    まず、画力の著しい向上。
    何と言っても、これに尽きる。
    最初、私は同じ作者の漫画だとわからなかった。
    読んでいくうちに、死を巡る表現に既視感を覚えて、もしや、と思って確認して、「死にあるき」の人だ、とやっとわかった。

    主人公の造形も、全く違う。
    皐月は、朱鷺子ほど強くなれないし、冷たくもなれない。
    朱鷺子のように圧倒的にぶれない軸もないし、達観もしていない。
    私たちの多くと同じように、傷つき、迷い、それでも目の前の誰かを死なせまいと、死の影にまみれながら、懸命に生きようとしている、その健気さと、可愛らしさ。
    朱鷺子は、絶対的に孤独だった。
    しかし本作は、本来誰にも理解されないはずの皐月を、決して独りにはしなかった。
    その選択は、正解だったのではないかと私は思う。

    「死にあるき」が、ただ死を見つめ、死者の中を闊歩する少女の物語だったとすれば、本作は、死者のど真ん中で、ただ死を見つめることなんか出来ないと心に決めている少女の物語である。

    「死にあるき」は、絵としても、作品のトーンとしても、どちらかと言えば陰鬱で、そこはかとなくカルト作品の雰囲気を漂わせていた。
    だが、本作は、考えられないくらいポップな地平で展開される。
    徹底的に死を扱いながら、これほどまでにポップな作品なんて、他にコナン君くらいのものではなかろうか。
    それでいて、死を巡る切れ味鋭い作品の展開は、バリバリに健在である。

    そこには、賛否あるだろうと思う。
    よくも悪くも、「死にあるき」の朱鷺子、あの「寄らば斬る」とでもいうような尖った魅力があるかと言えば、ノーである。
    ゴリゴリのパンクロッカーが、ダンスポップをやり出したような違和感も、ちょっとある。
    だが、そのダンスポップの中には、パンクロックの精神が、確かに生きている。
    私はそう思うから、この素晴らしいポップソングを、心の底から称賛する。

    • 6
  6. 評価:5.000 5.0

    ざわつく心の空の色

    説明不能の「心がざわつく」思春期コミック、というのが売り文句だが、このコピーは完璧だと思う。

    漫画の表現として、圧倒的に斬新だ。
    この唯一無二ぶりは、突出している。
    本作と似ている漫画を読んだことがない。
    というか、きっと、無理なのだ。
    例えば、「ドラゴンボール」や「スラムダンク」や「ジョジョの奇妙な冒険」を真似することは出来ても(そのクオリティーは別にして)、この漫画を真似することは、多分、出来ない。
    それほどまでに、突き抜けたオリジナリティーである。

    そして本作は、おそらく私が読んだ全ての漫画の中で、最も説明が困難な作品でもある。
    「どんな漫画なのか」と問われても、私は、答えられない。
    また、「読んでどんな気持ちになったか」と問われても、答えられない。

    悲しみとも、苛立ちとも、怒りとも、切なさとも、歯がゆさとも、違う気がする。
    それでいて、その全てがあるような気もする。
    敢えて言うなら、まさに「心がざわつく」ということになるかと思う。

    もしかしたらそのざわつきは、決して言葉に出来ない想いに囚われながら我々が過ごした、思春期という時代そのものの影なのかもしれない。
    私たちがこの作品の中に見るのは、かつて自らが抱いていた、名前も行き場もない、若い想いの欠片なのかもしれない。
    そういう意味では、これほど克明に「あの時代」を描いた漫画というのは、他にないのではないかと思う。

    そういえば、「あの頃」に私たちが眺めていた心の空は、白にも黒にも染まらないまま、何となく、灰色だったような気がする。

    • 6
  7. 評価:5.000 5.0

    それは、革命だった

    当時、中学生で少年ジャンプを読んでいた私たちにとって、この漫画が与えた楽しさと衝撃は、尋常ではなかった。
    ジャンプの発売日の翌日、私たちは登校すると、真っ先に今週号の「マサルさん」について話した。
    同時期の連載に「スラムダンク」も「ダイの大冒険」も「るろうに剣心」もあったのに、何よりも「マサルさん」について話した。

    シュール・ギャグ、ナンセンス・ギャグ、呼び方は色々あるのだろうが、「マサルさん」の破壊力はあまりに斬新で、それは、私たちの世界にあった「笑い」のあり方を、すっかり変えてしまったのだった。
    それはほとんど、革命だった、と言ってよい。
    そんな漫画を、他に思いつけない。

    私は、あるいは私たちはもう、十年以上、「マサルさん」を読んでいない。
    しかし、今でもときどき、妻が私に、この漫画の言い回しを真似て語りかけてくることがある。
    革命、というのは、そういうことである。

    • 6
  8. 評価:5.000 5.0

    受け継がれる精神

    個人的には、ジョジョは4部が一番好きで、3、5、6部が同点で2位、という感じである。
    正直、この(実質)7部は、単行本を買い続けている間は「どうなんだろう」と思っていた。
    しかし、完結してからあらためて一気読みして、印象が変わった。

    「たとえ命は途絶えても、受け継がれる精神がある」というのは、ジョジョ全編を通じての大きなテーマのひとつだと思う。
    実のところ、それが最も色濃く打ち出されているのは、この7部ではないか、と感じたのだった。
    その意味で、やはり本作も、どこまでもジョジョである。

    もちろん、熱いスタンドバトル、豊富すぎるくらいの魅力的なキャラクターたち(敵味方を問わず)も健在で、このあたりはもう、流石と言う他にない。

    • 6
  9. 評価:5.000 5.0

    気づいた

    「口裂け女」というあまりにベタで古典的な題材を使いながら、決して埋もれることのない、ハサミのように切れ味鋭いホラーに仕上げている。
    流石と言う他にない。
    この漫画の口裂け女の「正体」そのものが、ある意味で、怪談話や都市伝説の核心を射抜いていると思う。

    小さい頃、従姉妹の家に行くと、今はなきホラー漫画の雑誌が大量に置かれていた。
    そのどれもこれも、表紙を飾っていたのは犬木加奈子の絵だった気がする。
    当時の私にとって、犬木加奈子の絵は、たまらなく魅力的な怪しい世界への入り口に立つ道標のような、象徴的な存在だったのだと思う。
    間違いなくひとつの時代を築いた作者であり、私のような子どもは、きっと日本中にたくさんいたことだろう。

    二十年ぶりくらいに彼女の漫画を読み直して、やっと気づいた。
    私は、犬木加奈子という人の絵が、好きなのだ、と。
    というか、ずっと好きだったのだ、と。
    それこそ漫画で、「君のことがずっと好きだったんだって、やっと気づいたよ」とかほざく阿呆な男がいるでしょう。
    私はそのレベルである。
    しかし、おかげで、これからこの人のホラーを読む度に、温かい気持ちになれることだろう。
    そんな漫画は、私にはあまりない。
    そして、そんなホラー漫画は、ひとつもない。

    • 6
  10. 評価:5.000 5.0

    それは愛か

    「永遠の恋人」を探す不気田くん。
    しかし、彼の不遇な運命により、彼の見初めた女性たちは次々に命を落とす。
    主に不気田くんのせいで。
    ところが、その度に新たな永遠の恋人がソッコーで見つかる。
    この変わり身のはやさ。
    そんで、その女性もやはり死ぬ。
    不気田くんのせいで。
    もう笑うしかない。
    わたしはそんな不気田くんが大好きである。

    愛は、難しい。
    不気田くんのやっていることは最悪のストーカー行為だが、もし彼の想いが実ったならば、それは、美しい愛になり得てしまうわけであって。
    いや、実ろうが実るまいが、愛は、愛なんじゃないの、と。
    容姿が不気味だったりアプローチがちょっと変わっている(ちょっとどころじゃないけどね、実際)と、愛じゃなくなっちゃうのか、と。
    どうなんでしょうか、と。
    そういう意味で、この作品は、非常にインパクトのあるホラーであり、一方では完全にギャグであり、そして、愛とは何なのかを問いかける、異色のラブストーリーでもある。

    ラストの「ある愛の詩」には、うっかり感動してしまった。
    不気田くんは、自分の愛の敗北を認めたのだと思う。
    しかし私は、不気田くんの愛もやはり、愛だったのだと認めてあげたい。
    懸命な愛し方では、なかったかもしれない。
    それでも、愛は、愛だったのではないかと。
    だからこそ、敗北を認めた不気田君が、醜い彼が見せた全ての姿の中で、唯一、美しかったのではないかと。

    • 6
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