5.0
イーブン
夫婦に限らず、男女の関係は、一見すると「そんなの夫が(ないし妻が)悪いじゃん!」という物事も含め、その責任は、イーブンなのではないか、と思う。
というか、イーブンということにするべき、ではないかと思う。
どうであれ、お互いに、お互いを、選んだ、という責任がそこにはあるから。
だから、作品として夫婦の問題を描くならば、そこには本当は「双方の視点」が反映されていないと、フェアではないのかもしれない。
そういう意味で、この漫画は素晴らしかった。
妻に共感する人が多いだろうと思う。
かといって、この漫画は「夫が悪い」と断罪しているわけではなく、夫婦がそれぞれの思いや価値観を抱えながら少しずつすれ違っていく様を、丁寧に、丁寧に描いている。
目に見えて近づく破綻が、やけに静かで、悲しい。
手っ取り早く読者の注目を引くなら、妻をさらっと不倫に走らせて、性的な描写をさっくり入れればいい(昨今の多くの漫画がそうするように)のだが、そういう安直な手段に流れていない。
そこに、作品としての気概みたいなものを感じたし、非常に好感を持った。
私は一人の夫であるが、幸い、この漫画のような問題からは遠い場所にいる。
ただ、ひとつ思ったのは、この漫画の夫にとって致命的なのは、性生活の問題以上に、「向き合おうとしない」ことではないか、ということだ。
要するに、彼は「向き合いたくない」人間なのだと思う。
そしてその姿勢は、夫婦の関係として、別に間違っているわけではない。
なぜなら、夫婦とは多分、正面から「向き合う」ための存在ではなく、「横に並んで」歩いてゆける相手だからだ。
本質的には、文字どおり「向き合って」することよりも、横に並んで眠ることのほうが、大切なのかもしれない。
けれど、その歩みが、ずれてしまった場合には。
どちらかが進みすぎたり、遅れたりした場合には。
立ち止まって、歩み寄って、向き合わなければならないときも、来るだろう。
きっと、そこから逃げてはいけないのだ。
少なくとも、愛している、と言いたいならば。
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