rokaさんの投稿一覧

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61 - 70件目/全150件
  1. 評価:4.000 4.0

    ストーカーに揺られて

    交通事故で記憶を失った男。
    その男のストーカーである女性が、恋人になりすます、というストーリー。

    個人的には、「ストーキング」と「一途で情熱的な恋」の境界なんて、結構曖昧なんじゃないの、と思っている。
    そんなもの、相手側の都合でいかようにも変わり得る。

    男性の皆さん、想像して下さい。
    職場から家までの帰り道、あなたの後ろをそっとついてくる女性がいます。
    彼女は通勤電車であなたに一目惚れしたのですが、内気なせいで、なかなか声をかけられないのです。
    古風な一面もあって、女性の方から声をかけるなんて、と恥じらってもいるのです。
    しかし、彼女は感じています。
    あなたのこそが、運命の人なのだと。
    ちなみに彼女は全盛期のスカーレット・ヨハンソンのような美貌とプロポーションを持ち合わせています。
    どうですか?
    彼女の一途な秘めた想いが胸に響きませんか?
    ついでに美貌とプロポーションも響きませんか?

    ほら見ろ!
    簡単に騙されやがって!
    そいつはストーカーだ!

    まあ、それはいい。
    それはいいのだが、「ストーカーに愛なんてない」というのは、いささか極論に過ぎると思う。
    適切でない愛し方を全て「愛ではない」と決めつけるのが、私は好きではない。

    だから、本作の主人公のストーカー女性を、私は応援していた。
    やり方はフェアではないが、真っ直ぐだし、可愛らしいし、ひとつの愛情の形として認めてあげたかった。
    というふうに、この漫画に誘導された。
    が、そのあたりで、不意に狂気の描写が来る。
    ここが、本作の巧みなところである。
    怖い。
    やっぱさっきのなし、真っ直ぐどころか三回転半くらい捻ってる。
    ヤバい、この女はやめとけ。
    でもなあ…というふうに、ストーカーに対する非常に微妙な感情を煽られる漫画。
    それはつまり、何をどこまで愛として認めるか、という永遠の問いを、読者に投げかけることに他ならない。
    そういう意味では、なかなか奥行きのある作品だと思った。

    • 9
  2. 評価:4.000 4.0

    メタファーとしての怪病

    マヨネーズの涙が出たり爪が唐辛子になったり、という「怪病」を主人公が解決する、というストーリー。

    基本は一話が短く、サクサクとテンポよく読んでいける。
    私はこういう形式の漫画がわりに好きである。

    「怪病」の設定自体は前述したように荒唐無稽だが、病の原因は、作品の文脈の中ではきっちり筋が通っていて、それが妙な納得感を与えてくれる。
    「病は気から」などと言うが、そのファンタジー版みたいな作品の着想は、なかなか面白かった。

    また、「設定だけは新しいけれど…」という作品が山のようにある中で、本作は、「設定以外」もパリッとしている。
    それを支えているのは、作品としての温かさだと思う。

    怪病に苦しむ人々の描き方に、とても愛情を感じる。
    考えてみれば、この漫画で描かれる怪病を患う原因なんて、私たちの多くが抱えているのではなかろうか。
    それでも、「そんなこと」で病気だなんて言っていられない、というような日々を、私たちの多くは送っているのではなかろうか。
    本作の怪病というのは多分に、我々が持ち得る様々な悩みや迷いや苦しみのメタファーなのだろうし、その患者たちへの優しさというのは、何とか日々を生きている人間そのものへの優しさのように感じられて、私は好感を持った。

    • 4
  3. 評価:4.000 4.0

    甘くて優しいどんでん返し

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    ある日、幼馴染みに「殺された」主人公が、幽霊となって幼馴染みの凶行を止めようとするのだが…というストーリー。

    「犯人」は第一話からわかってしまっている(ように見える)わけで、読者の側としては、ミステリ部分の焦点を「なぜ」に合わせて読むわけだが、それを終盤に一気に覆す返し技は、なかなか上手に決まっていたと思う。

    面白かったのは、それぞれのキャラクターが、登場したときとはずいぶん違う印象に変わっていく点だ。
    それ自体は別に作品において普通のことだが、「登場人物全員」がそうである、という漫画は、なかなかないように思う。
    そう決めて描かなければ、こうはならない。
    登場人物全員に、裏がある。
    しかし、その「裏」というのは、自分のダークサイドみたいなものを隠している、というよりは、誰しもが表に出せない弱さや強さを抱いて生きている、という提示であって、露悪的ではなく、むしろ優しさを感じるものであった。

    主要な登場人物たちは皆、誰かを傷つけた過去を悔い、再び誰かを傷つけてしまうことを恐れて生きている。
    正直、このあたりの描き方は、ちょっとナイーブに過ぎるような気もした。
    また、「佐原も実知も生きていた」「親の意向で死んだということにされていた」という展開には、さすがに「おいおい」と思ったし、いくら何でもハッピーエンドありきに過ぎるんじゃないか、という気もした。
    最初に書いた終盤の展開も、サスペンスとしてスパッと切れ味のあるどんでん返しというよりは、甘くて優しいどんでん返しである。
    ただ、そういう全て、登場人物に対する作者の愛情のように感じて、私は、好意的に受け止めたいと思った。

    • 16
  4. 評価:4.000 4.0

    設定を殺して

    新鮮なのは、「元極道のコンビニ店員」という設定そのものではなく、むしろその設定の「殺し方」みたいなところにあるのではないかと思った。
    本作は、いい意味で、とても慎重に設定を殺している。
    もう少し誤解を避けて言えば、設定から想起されるありがちな展開を、実に巧妙に回避している。

    私が何となく予想していたのは、次のようなストーリーだった。
    元極道のコンビニ店員である島さんは、普段はおとなしく仕事をしている。
    そこに何らかのトラブルが起きる。
    例えば、悪質なクレーマーが来るとか。
    そこに温厚そうな島さんが出ていって、クレーマーは「何だてめえは?」とかすごむけど、何かの拍子に刺青が見えてしまうとか、島さんが尋常でない殺気を放つとかして、クレーマーは「すみませんでしたー!」となる。
    みたいな。
    そういう漫画かと思っていた。

    違う。

    島さんは、元極道的なパワーを全く使わずに、あくまで温厚なままであって、その実直さや誠実さ、気配りや思いやり、洞察力、といったありふれた(?)人間的スキルでもって、コンビニの日常の諸問題を解決に導いてゆく。
    それを、一種の人情話として描いた漫画である。
    「ありがちな展開には絶対にしないぜ」という作者の気概が伝わるようで、その心意気や、よし。

    ただ、こう書くと、「あれ?元極道って設定、要らなくね?」と思われるかもしれないが、そうでもない。
    作中に流れるのは、すねに傷を持つ者が放つ独特の説得力と、「この設定がこの先で活きてくるんだろうな」という期待感だからだ。
    そういう意味では、かなり緻密に組み立てられた漫画だと思うし、それはこの先の話で、実証されるのではないかと思う。

    あとは、枝葉の部分になるが、作中、背中の刺青のワンカットで、島さんが元極道なのだ、ということをさりげなく提示するところなんかは、何ともセンスがあって、好感を持った。

    • 1,203
  5. 評価:4.000 4.0

    そこに愛はあるか

    雑な言い方で申し訳ないが、「こういう系」の漫画はだいたい嫌いだ。

    誤解を恐れずに言えば、最近よくある、妻が夫を「エッセイ漫画」という体裁の中で非難するやり方は、本当に汚いと思う(もちろん、「夫が妻を」でも同じだが、そういう漫画は読んだことがない)。
    はっきり言って、生き方として腐っているとさえ思う。
    私がそういう漫画に対して感じる思いというのは、芸能人と寝た後でスキャンダルを週刊誌に売ったりする人間に対して覚える嫌悪感に似ている。

    そこには何の愛もない。
    もちろん、永遠の愛というのはスーパーレアだから、大抵の愛は消えることもある。
    まあ、それはいい。
    それはいいのだが、愛が消えたからといって(あるいは、はじめから愛なんかなかったからといって)、もう好きじゃないから何でもありだよね、というやり方は、あまりに品性を欠いている、と思うわけだ。

    しかし、この漫画は、違った。

    そこに、ちゃんと愛があった。

    夫婦も、親子も、人間だから、生きていれば、色々あるのだ。
    誰の人生だって結構ハードモードで、愛があろうが金があろうが、上手くいくとは限らないのだ。

    だが、愛があれば、出発点になり得る。
    それもおそらく、他の全てに比べて、かなりマシな出発点に。

    私はそう思うから、この漫画の提示した現実的な夫婦の顛末が、なかなか好きであった。

    • 8
  6. 評価:4.000 4.0

    懐かしさと物足りなさ

    オリジナルの十年後、という設定。

    郷子が童守小学校の教師になっていたり、広がセリエAの看板選手になっていたり、あの「A」の再来もあったりと、オリジナルを読んでいた世代には、懐かしい。
    その中で、ぬ~べ~だけは何ひとつ変わっていない、というのも、またいい。

    ただ、ちょっと物足りなさを感じたのも事実だ。

    ひとつは、私が「いずな」を読んだせいである。
    あちらは青年誌なので、「大人向け」の恐怖がなかなか大胆に描かれており、ぬ~べ~とは違ってすっかり歳をとった私としては、「いずな」の後でこの少年向けのホラーに戻るのは、ちょっとしんどかった。

    もうひとつは、設定の懐かしさの割には、あまりノスタルジックな手触りがなかったことだ。
    まあ、これは私のないものねだりもいいところで、あくまで少年誌の連載である以上、オリジナルを知らない読者をターゲットにするわけだから、ノスタルジーなんて場違いなものになる。
    それはよくわかっているが、うーん、もう一歩かなあ。

    • 4
  7. 評価:4.000 4.0

    青年か、少年か

    悪霊に憑かれた人間を葬る「はぶり」という家業を受け継いだ少年の物語。

    一応、青年漫画というくくりだが、私は、いたって普通の少年漫画として本作を読んだ。
    いい意味で、だ。

    序盤から九歳の少年が家族を殺_すとか、毎回首を斬り落とすとか、過激な描写と悲劇的な設定によって少年漫画の枠から外れているのだろうが、主人公の少年が苦難に立ち向かい、逆境や自分の弱さを乗り越えることで成長してゆく、という展開や主題は完全に少年漫画のそれである。
    青年漫画の皮をかぶった少年漫画、と言えるかもしれない。

    何かもうひとつ欲しい、という気もしたが、少年時代に少年漫画を読んでいたような気持ちで、テンポよく、それなりにワクワクできた。
    特に、不満はない。

    • 4
  8. 評価:4.000 4.0

    何て嫌なことを考えるんだ

    大切な人と死別した人間の前に、悪魔だか天使だかわからない少女が現れ、「24時間以内に人を3人殺せば、あなたの大切な人を生き返らせる」という契約を持ちかける、というストーリー。
    連作短編タイプの漫画である。

    「走馬灯株式会社」の作者が原作で、作画は別の人。
    この作画にちょっと癖があり、好みは別れるところかと思う。
    ただ、作品の雰囲気には、なかなか合っているのではなかろうか。

    話としては、スティーブン・キングの「ペット・セメタリー」的というか、ある意味で究極の選択、という感じのサスペンス。
    まあ、人間性を疑われるかもしれないが、私なんかは大して究極でもなく、そんなのサックリやっちゃうだろうな、と思う。
    ただ、この漫画の本質的な魅力はその設定ではなく、そこからの展開である。
    設定ネタ一本からすごいところまで広げる、というのは、おそらくこの原作者の得意とするところであって、「走馬灯株式会社」のときにも思ったが、この人は、本当に怖いことというか、嫌なことを考えるなあ、というのが率直な感想である。

    何もネタバレしたくない。
    気になる人は、是非読んでほしい。

    ただまあ、打ち切りっぽい終わり方はちょっと残念。
    もっと色々なエピソードを読みたかった。

    • 4
  9. 評価:4.000 4.0

    好感のもてる丁寧さ

    社内の様々な問題を調査し、適切な人事変更でもって対処する人事部の「社内探偵」を主人公にした作品。

    まず、人事部の活動が作品の中心、という設定が、個人的には新鮮に感じた。
    話の内容としては、職場あるあるというか、会社で働いている読者は特に、この漫画ほど極端にではないにせよ、似たような種類のイライラを抱えている可能性はあり、結構スカッとするのではないかと思う。

    特筆すべきは、その「スカッと」に至るまでの過程の丁寧さではないかな、と思う。
    昨今、「あなたのイライラ、スカッとさせます!」と言わんばかりの漫画が多いような気がするが、いかんせん過程が性急に過ぎて、逆にモヤっとする、というような作品が往々にしてある。
    しかし本作は、とても丁寧に過程を積み上げており、その点には好感を持った。
    そのぶん、テンポというか、進みの遅さは気になる読者がいるかもしれないが。

    • 321
  10. 評価:4.000 4.0

    パロディとしての神と人間

    千年に一度の神々のサミットみたいな場で、「人類はもう滅亡させたほうがいいだろう、地球によくないし」という結論になり(まあこれはもっともな話かもしれない)、人類滅亡が決定されるのだが、何だかんだあって、人類代表の13人vs神代表の13人(と数えていいかは知らないが)でタイマンをやって、人類の存亡を決めようじゃないか、という話になり、そこから始まるバトル漫画。

    当然、設定段階から荒唐無稽もいいところで、対戦カードは、呂布奉先vsトール、アダムvsゼウス、佐々木小次郎vsポセイドン、切り裂きジャックvsヘラクレス…といった具合なのだが、この滅茶苦茶っぷりが、バトル漫画としてはなかなか面白い。

    人間の側も神の側も、キャラ設定の面では突っ込みどころが満載だけれども、パロディ・バトル漫画として、あまり深くは考えずに楽しむのがよろしいかと思う。
    逆に言えば、時代考証や宗教的な考察にこだわる読者には、あまり向かないかもしれない。

    • 20

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