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作品レビュー
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31 - 40件目/全406件

  1. 評価:5.000 5.0

    細部と、哲学と

    「闇金ウシジマくん」が終わってしまい、ファンであった私はちょっとしたウシジマくんロスに陥っていたが、その穴を埋めるような快作がスタートして、胸が躍った。

    いささか語弊はあるが、「悪徳弁護士が主人公の闇金ウシジマくん」とイメージしてもらって構わないかと思う。

    「闇金ウシジマくん」でもそうだったが、作品の骨子を支えるのは、裏社会の圧倒的なディテールである。
    この作者は、マジで取材の鬼だと思う。
    もちろん、私たちの多くは裏社会の実情に詳しくないし、現実がこの漫画のとおりなのかはわからない、というか、多分、そんなわけはなくて、いくぶん漫画的な誇張やデフォルメはあるのだろう。
    しかし、一般読者としては「うわ、マジでこんなことありそう。知らんけど」と思うしかない、そういうレベルのリアリティーを、脚色を含めて作品の中に構築するのが、この作者は非常に上手い。

    以前、「闇金ウシジマくん」のレビューの中で、「子どもですら単純な勧善懲悪なんか信じない時代に、ウシジマくんがヒーローになり得たのは、明確な哲学を持っているからだ」という意味のことを書いたが、その点は、本作の主人公である九条も全く同じだ。
    「私は依頼人を貴賤や善悪で選別しない」
    「法律の世話はできるが、人生の面倒は見られない」
    世間一般の倫理観からは外れているが、九条はあくまで自分の哲学を守って生きている。
    九条の横顔にウシジマくんの姿がだぶって、私はちょっと感動してしまった。
    この感慨は、「闇金ウシジマくん」を最後まで読んだファンなら、わかってくれるのではないかと思う。

    また、相変わらず、ダークでありなら、きっちりエンターテイメントとして成立させる手腕も素晴らしい。

    ウシジマくんなき時代に、新たなダークヒーローの誕生を告げる、期待度抜群の作品。
    ウシジマくんファンは、必読である。

    • 41
  2. 評価:3.000 3.0

    腑に落ちないところも

    原作は、新書。
    少年院に収監される少年たちの中に軽度の知的障害を持つ者が多いことに着目して、認知能力を改善するためのプログラムの必要性を論じた本であるらしい。
    (申し訳ないが、未読。)

    作品の性質上、当然と言えば当然だが、少年院の少年(女性も含む)たちの記録が、淡々と綴られる。
    だが、退屈という印象はなく、不思議と読ませる。
    このあたりは、この漫画家の特質かもしれない。
    決して「上手い」絵ではないが、なかなか豊かな表現をする。

    また、この漫画の作者は、他の作品も含めて、エンターテイメントのための過剰な演出はしない、と心に決めているような印象を受ける。
    賛否あるだろうが、私は、その姿勢を支持している。
    「現場」をリアルに描こう、という志は、この人のどの作品でも徹底されており、大したものだと思う。

    気になった点は、二つ。
    ただし、どちらも原作段階の問題であり、漫画の問題ではないのだが。

    ひとつは、タイトル。
    個人的には、好きになれない。
    新書を売るためにインパクトのあるタイトルを、というのはわかるし、事実、それが成功して本は売れたわけだ。
    しかし、穿った見方かもしれないが、「ケーキを3等分することも出来ないんでっせ、ヤバくない?」というような、少年たちの知能の異常性を見世物的に扱ったような印象を受けて、ちょっと、首を捻った。
    作品の中身を見れば、全くそんなことはないのだけれど。

    もうひとつは、「軽度知的障害」という設定だって、所詮は誰かが決めた恣意的なボーダーなんじゃねえの、ということだ。
    少年犯罪と認知能力の間には相関性があり、認知能力の改善が非行の抑止になり得る、という原作の主張に基づいて、この漫画は描かれている。
    しかし、その根本のところを、私はイマイチ信用できなかった。
    それは事実であるかもしれないが、事実の一部でしかないと思うからだ。

    例えば、少年犯罪と、残酷な描写のあるホラー映画の影響が結びつけられる、というのとそう変わらないレベルの、眉唾物の話だと言ったら、さすがに失礼だろうか。
    こんな考えは希望がなさすぎるかもしれないが、ホラー映画を見て凶悪犯罪に走るような人間は、別にジブリを見たって同じだろ、と私は思う。
    ちなみに私は、残酷な描写のあるホラー映画、大好きですけどね。

    • 41
  3. 評価:2.000 2.0

    自由と責任と金田一少年

    夫がろくな人間ではない、ということには何の異論もない。
    世の中にこういう夫婦が多くあって、苦しみながら何とか生活している妻が多くいることにも異論はない。
    その痛みが生半可なものではないことにも、本当に、異論はない。
    ただ、申し訳ないが、自分の不幸を他人のせいにする大人が、私はどうしても好きになれない。

    現代の日本社会には問題もたくさんあるが、素晴らしいこともいっぱいあって、そのひとつは、基本的には互いの自由意志に基づいて結婚ができる、ということだ。
    自分の生きたい相手と一生を共にする自由がある、ということだ。
    これほど素敵なことが他にあるか、と私は思う。
    少なくとも、江戸時代はこうはいかなかったのだ。

    それほど素晴らしい自由であるから、当然、そこには責任がつきまとう。
    結果的にどんな相手だったのであれ、どんな経緯や偽りがあったのであれ、選んだのは、自分であるはずだ。
    仮に、結婚してみたらアル中でヤク中のバイオレンス野郎だった、という場合ですら、選んだのは、自分なのだ。
    その重大な責任を置いといて、「結婚したら変わってしまった」とか、安直に被害者ヅラするのが、私は嫌いだ。

    ある人が「この人と幸せになりたい、じゃなくて、この人とだったら不幸になってもいい、っていうのが、愛なんじゃないかしら」と言ったそうだ。
    それは、極端かもしれないが、ある部分、完璧に正しい気もする。
    酷い人間だから別れたい、ではなくて、酷い人間であってもこの人がいい、というのが夫婦なのではないか、と私は思う。
    いや、そうではない、というならば、その結婚はやはり、失敗という他にない。
    ただし、大人がどんなに失敗を悔いようが、その大人の姿を見て生きる子どもがそこにいるということは、肝に銘じておかなくてはならない。

    中学生のときに読んだ『金田一少年の事件簿』で、金田一君が「自分の不幸を他人のせいにするのは、ガキだって言ってんだよ!」と言っていた。
    そのときから、私はずっとそう信じてきたし、これからも信じていきたい。
    ありがとう、金田一少年。
    漫画って、いいなあ。

    • 42
  4. 評価:4.000 4.0

    酒への愛情

    個人的には「恋する二日酔い」があまりに素晴らしすぎて、こっちはそこまで夢中になれなかった。
    ただ、作者の酒への愛情は、とてもよく伝わってきた。

    酒は、付き合い方を間違えると人生が破綻する足がかりになってしまうけれど、上手に付き合えば、人生を豊かにしてくれる可能性は、間違いなくある。

    「恋する二日酔い」が「酒が特別になる人生の瞬間」を綴った漫画であったとすれば、この作品は、徹底して「ごくありふれた日常の中にある酒の魅力」を描いている。
    特別な時でもなく、特別な相手とでもなく、特別な場所でもなく(チェーン店だもんね)、ただ、仕事帰りに飲む一杯の酒が、どれほど日々を潤してくれることか。
    それに慣れてしまうことなく、深く味わいながら生きることが出来たなら、その酒はきっと、豊かな酒だろう。

    こんなふうに酒に対する愛情を表現できるのは、素敵なことだと思った。

    • 39
  5. 評価:3.000 3.0

    忘れられた設定

    オーソドックスな復讐モノで、特筆すべき点もないが、派手な破綻もなく、わりに丹念に作られている印象は持った。

    ただ、ちょっと気になるのは時代性で、「昭和30年」という設定には首を捻った。
    時代を感じさせる描き込みみたいなものはほとんど皆無で、舞台が現代であると言われても何の違和感もない。
    つまり、昭和30年をまるで描けていない、ということになる。
    というか、作者もその設定、忘れてないか?
    登場人物の一人が「私の株は爆上がりだわ!」とか言ってるし。
    昭和30年に「爆上がり」はないだろう。

    おそらく、舞台となる島が、名家の娘一人に実質的に支配されている、という前近代的な共同体の存在に説得力を持たせるために、時代設定を現代から外したのだろうが、それならそれで、もっとちゃんとしてくれ、という気にはなった。

    • 39
  6. 評価:5.000 5.0

    ノスタルジア、そして、戦う子ども

    この原作者の漫画化作品は「死者恋」「フクロウ男」と読んできて、これが三つ目。
    「フクロウ男」も結構凄かったけれど、本作には完全にやられた。

    話としては、いわゆる「ループもの」で、主人公の少年は、友達を救うために、同じ一日を何度も繰り返す。

    私はそもそも短編小説という表現形態が好きで、短編小説の良質な漫画化も好きである。
    その点から言えばもう、本作は満点という他にない。

    何がいいって、作品の空気感がいい。
    ピンポイントの世代で言えば、私より少し上の年代により刺さるのだろうが、描かれているのはほとんど普遍的と言って差し支えない、あなたや私の「あの頃」であり、そのノスタルジックな手触りは、絵柄と相まって、とても魅力的に映った。
    そのノスタルジアと、反復される友人の死、というもの悲しいファンタジーが、一種特異な世界観を創出している。

    思うのだが、子ども、という存在は、大人ではあり得ない種類の戦いみたいなものを、日夜続けている気がする。
    その大半は、大人になってしまった我々の目からは些細な問題に映るので、私たちはいつしか、その壮絶さを忘れる。
    「下らないことで悩んでたよね」と。
    しかし、大人がどれほど子どもを笑っても、あるいは自らの幼さを自嘲的に振り返っても、やはりそこには過酷な戦いがあったのだと思うし、その欠片くらいは忘れたくないと私は思う。
    子どもと関わる人間であるなら、なおさらだ。

    本作が描いたのは、「昨日」が繰り返されるファンタジーであるのと同時に、大人には決して理解されることのない孤独な戦いを続ける少年の、つまりは、かつてのあなたや私の、普遍的な物語でもあったと思う。
    そういう意味で、本作は、戦い続ける子どもたちへのアンセムであり、その戦いを終えた大人たちへのレクイエムでもある。

    作品において「子ども」を描く、ということについて、これ以上に誠実な視線というものを、私はあまり知らない。

    • 37
  7. 評価:5.000 5.0

    持つ者、持たざる者

    昔読んだ小説の中で、「何かを持ってる奴はいつ失うかと怯えているし、何も持っていない奴は一生持てないままなんじゃないかと怯えている」という意味のくだりがあった。
    それを、思い出した。

    「お前はいいよな、出来るから」
    「あなたはいいよね、美人だから」
    それは一面でしかなくて、結局、才能のある人もない人も、生きてゆくということは、それほどイージーモードにはなり得ないのだろう。
    みんな、それぞれ何かしらの地獄を抱えて生きているのだろう。
    でも、十代の「僕ら」には、それがわからなかった。
    他人の地獄など見えなくて、自分のことばかりだった。
    そんな時代のワンシーンを次から次へと切り取ってみせたような、なかなか巧みな漫画だと思った。

    • 36
  8. 評価:5.000 5.0

    ざわ…ざわ…

    ざわ…ざわ…

    カイジ本編で強烈な印象を与えた利根川を主人公にしたスピンオフ……!
    どんな悪の美学を見せつけてくれるかと思いきや……意外……!
    作品の内容は……コメディ……!
    圧倒的コメディ……!
    別の作者にも関わらず、オリジナルと変わらない絵柄で、カイジ好きならニヤリとすること間違いなし……この魅力……悪魔的だ……!
    では、オリジナルを知らなければ楽しめないのか……?
    そうでもないっ……!
    初見の読者に対しても、決して排他的ではない……!
    僥倖……まさしく僥倖……!
    ならば、カイジを知らなくても読むべきか……?
    だが………駄目っ………!
    それこそが罠っ………!
    先にスピンオフを読むなど……悪手……これ以上ない悪手……!
    あくまで、オリジナルありきだっ……!
    その後で読んでこそ、この漫画は輝く……!

    ざわ…ざわ……

    • 35
  9. 評価:1.000 1.0

    気分が悪い

    善人が破滅しようが子どもが犠牲になろうが首が飛ぼうが内臓が散ろうが、大抵の内容は「漫画の中のこと」として許容できるつもりだったが、これは駄目だ、気持ち悪すぎる。
    直接的な描写や囚人たちの造形の話ではない(だったらもっと気持ち悪い漫画は腐るほどある)。
    こんな形で子どもという存在を「使って」しまえる製作者サイドの神経が、気持ち悪いのだ。
    申し訳ないが、そこまでして漫画にしがみつきたいのか?と嫌味のひとつでも言いたくなる。

    • 38
  10. 評価:5.000 5.0

    もう「殿堂入り」でいい

    学生時代はとても楽しく読んだし、今読んでも好きなエピソードはある。
    子どもでもついていける明るいトーンでありながら、時々、ギクッとするくらい人間のダークサイドや運命の残酷さに切り込んでくる、妙なバランス感覚が好きだ。
    「金田一少年」のように「復讐」に偏った犯人像ではなく、保身、金銭欲、誤解、奇妙なこだわりなど、動機が多岐にわたるのも見所がある。
    ときには「これ、コナン君だよな?」と思うような哀愁や切なさが犯人に滲む回があり、それが大好きだった。
    個人的には、「クモ屋敷」のエピソードがイチオシ。
    何より、殺/人事件という、一般に健全とは見なされがたいモチーフを、漫画の一ジャンルとして、あり得ないほどポップな地平に押し上げたその功績は、もう「殿堂入り」と言って然るべきではないだろうか。

    • 33
ネタバレなし:全ての評価 31 - 40件目/全406件

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