4.0
ハードボイルドとエンターテイメント
「静かに暮らしたい」というタイトルを見て、ジョジョファンであれば真っ先に吉良吉影を思い浮かべるはずなのだが、私も例外ではなく、それで読み始めた。
吉良吉影とは全く違うスズキさんの話だったが、面白かった。
テンポよく、一気に読ませるのにちょうどいい尺の設定にも好感を持った。
女性の殺し屋、それも、色仕掛けではなく、正統派の(?)殺し屋、という時点でリアリティーは著しく欠落の方向へ傾くが、そのハンデを覆すくらい、登場人物たちのキャラがパリッと立っていて、ある程度、一貫性がある。
「ある程度」と書いたのは、冷徹な殺し屋であるはずのスズキさんが少年に肩入れする根拠みたいなものが、いささか薄弱に感じられたからである。
個人的には、スズキさんにはもう少しドライでいてほしかった。
ただまあ、冷血に徹しているつもりでも、不意に情が湧いてしまうのが、人間というものなのかもしれない。
一番好きだったのは、スズキさんの過去のエピソードである。
幼い頃の自分を助けてくれた殺し屋を殺し、あくまで血の通わない殺し屋として生きることを選んだスズキさんの姿には、胸をしめつけられた。
だからこそ、少年に対する執着にもうひとつ、何か欲しかった、という思いは残るものの、トータルとしては、甘みと苦みを適度に抱き合わせた、ハードボイルドとエンターテイメントを同居させた、なかなかの良作だと思う。
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4
スズキさんはただ静かに暮らしたい