5.0
自分または誰かと重なるお話し
誰にでもある、どこにでもいる、平凡な主婦そしてママたちの物語なんだけど、なかなかドキッとするシークエンス多くて、つい一気読みしちゃった。
登場人物それぞれの視点で語られる内にいろんな面が出てきて、最終的に真実が見えてくるっていう演出方法、これ映画の世界ではラショーモン・エフェクトつって、黒澤映画の「羅生門」がハリウッドでリメイクされた時に生まれた用語なんだけど、それがものすごく上手く活かされてて、シンプルなエッセイ漫画みたいな作風なのにどんどん引き込まれてしまった。
この作者さん、夫婦間とか友達間の「小さなモヤっと感」を描くのがマジで上手いと思う。「妻が口を聞いてくれない」のやつでも、その辺すごく上手かったし、それだけに読んでて腹も立ってきたり。共感性ナントカが強い人は読んでてイライラするかも。だってあまりにも「いるいる、こーゆーの分かる〜」ってのが、わざとらしくなく、大袈裟でもなく、さりげなーく混ぜ込まれているので。
わざわざ騒ぎ立てるほどでもない、でも自分の中だけで消化しきれない、そんな小さなモヤモヤを積み重ねつつ、日常生活の煩雑に紛れてうやむやになっていって、でもどこかでプツンと切れたり、あるいは溢れてしまったり。それがラストのヨリさんなのかな。
原因や裏事情が分かるのは、これが漫画作品で、読者視点で見ているから。もしこの漫画の中の人物の1人だったら、きっと真実は分からないまま、作中のモブママたちみたいに、無責任に噂話してる側だったかもしれない。あるいは4人の内の誰かの立ち位置にいて、やっぱりモヤモヤしたまま日々を送っていたかも。
この、漫画的ご都合主義のハッピーエンドでもない、かといって悲劇的なバドエンでもない、あえて言うならメリーバッドエンドなラストは、とてもリアリティがある。現実ってこんなもんだよね。よくあるスカッと系の漫画ならこのムカつく姑あーちゃんの所業が晒されて有紀さんがツバサ君のままに戻れて幸せになって…みたいな勝ち負けで描かれるんだろうけど、現実ってそんな勧善懲悪モノじゃない。姑はこのままツバサ君の母親ヅラして生きていくんだろうし、夫であるバカ息子その愚昧さと妻へのモラDVに気付かないまま生きていくだろう。有紀さんもギャンブルに逃げたりと、非はあるけど気持ちは分からなくもない。
なかなか考えさせられる話だった。
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消えたママ友