4.0
突然
突然の終わり過ぎる。何か物語を続けられない大人の事情があったのかと勘繰ってしまう。
夏瑚が、大好きだった幼馴染の泰星を、同じく幼馴染の憂奈に騙すように取られ、絢斗先輩との距離が縮まっていくところ、憂奈の異常さが徐々に明らかになっていくところ、絢斗先輩の本当の姿や過去が明らかになっていくところ、表現が丁寧で、夏瑚の強さ、優しさもあって、物語に引き込まれます。
でも憂奈と絢斗先輩の事件以降、夏瑚が絢斗先輩とちゃんと付き合うのはいいとして、先輩の抱えているであろう苦しみの描き方があまりに稚拙で説明的で、絢斗の言う"夏瑚が天使に見えた"、夏瑚が自分が天使だったたらいいのにと思う気持ちが浮き立ってこず、表面的過ぎる。もっと丁寧に時間をかけて、描いて欲しかった。本当にそんな事件に直面していたら、こんなもんじゃないはず。ルリカさんが本当は伯母ではなく主治医で、いつも支えていたとしても。
絢斗の抱える本当の闇や深い苦しみに触れて、夏瑚自身が悩んで、思いを巡らせ、それを踏まえて、私が天使だったらいいのに、と言って欲しかった。
憂奈の抱える闇だって相当なもののはず。それを、幼い頃の思いは描かれるものの、狂気的な部分がクローズアップされて、泰星がこれからもいつも近くにいるから大丈夫みたいな終わり方。えええー、それじゃ憂奈が可哀想すぎ。
泰星が憂奈の本性を知り、夏瑚の辛さと強さと優しさを知り、自分が子供だったことを痛感、強くなりたいと思うところは描かれてるけど、泰星自身の葛藤、憂奈との気持ちのやり取りが読み取れない。だから、いわば"危ない"憂奈を引き受け、寄り添っていこうとするところに唐突感が否めない。
なんか物凄く勿体無い終わり方です。残念。
- 192
天使だったらよかった