5.0
意外と骨太の異世界社会派ファンタジー
ラプンツェルの如く、塔から出ることを許されなかった少年ディートフリートが、ヒロインアシュリーの教育によって視野を広げ、ついでに恋も…というのが、ざっくりしたあらすじ。でも髪の色が、金髪から燻んだ煉瓦色に変わったのは、塔に閉じ込められていたディートフリートではなく、魔力のないアシュリーのほう…教師と生徒という関係以上に、因縁のある二人のようです。
魔力が強すぎるが故に放置され、不信感の塊だったディートフリートが、アシュリーによって徐々に心を開き、世の中に目を向けていく過程は素敵ですが、やはり特筆すべきは、アシュリーの健気さと教育者としての素晴らしさ。彼女自身、差別されながら育ってきているので、困っている生徒がいると、躊躇なく手を差し伸べます、それこそ、自分のことは二の次にして…。そこが、ディートフリートにしても、読者にしても、どうにもじれったいところですが、ま、何があってもディー君がブレないので、安心です。
二人がお互いの気持ちを確かめ合う中で、魔力至上主義社会の歪みに気付いていく過程は、意外と社会派漫画の様相も?憲法の下で、基本的人権の尊重や職業選択の自由を、当たり前のように保障されている日本は、思っている以上に良い国なのかもしれません。
意外と骨太の、そして、期待以上に一途愛ダダ漏れの異世界社会派ファンタジー、もちろん星5超でお薦めです。
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落ちこぼれ魔女と恋を知らない天才魔術師