スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ:SWらしさと日本らしさを追求 ライトセーバーアクションに剣道の“正眼の構え” 多田俊介監督インタビュー
配信日:2026/08/06 19:01
人気映画「スター・ウォーズ」シリーズのアニメーションプロジェクト「スター・ウォーズ:ビジョンズ」の新作で、初の長編シリーズ「スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ」が8月5日にDisney+で日米同時全話一挙独占配信された。新作は、ライトセーバーを巡るジェダイの物語で、迫力のライトセーバーアクションが繰り広げられる。多田俊介監督に制作の裏側、ライトセーバーアクションのこだわりを聞いた。
◇「スター・ウォーズ」と「ヤマト」「ガンダム」の違い
「スター・ウォーズ:ビジョンズ」は、日本のアニメ制作会社が全9作のオリジナル短編アニメーションを制作するプロジェクトとして、2021年に第1弾が配信された。「スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ」は、第1弾の神山健治監督による「九人目のジェダイ」、第3弾の塩谷直義監督による「The Ninth Jedi: Child of Hope」の続編で、神山さんが総監督を務め、Production I.Gが制作する。
多田監督は「『スター・ウォーズ/新たなる希望(エピソード4)』がドーンと盛り上がった時代の人間なので、それ以降ずっと『スター・ウォーズ』は追いかけています」という「スター・ウォーズ」ファンで、新作の監督を務めることが決まった際は「緊張するとか荷が重いというよりは、『おおそうか、あのスター・ウォーズに関われるんですね!』という喜びが大きかった」と語る。
多田監督は、「黒子のバスケ」や「銀河英雄伝説 Die Neue These」シリーズを手がけてきたが、クリエーターとしても「スター・ウォーズ」に影響を受けてきた。
「キャラクター演出においても、メカのガジェットにおいても、すごく影響を受けています。僕らの世代は『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』で育っているので、やっぱりSFが好きなのですが、『スター・ウォーズ』は明らかに日本のSFとは描いている内容が違うんです。ヤマトにしてもガンダムにしても兵器なんですよ。ところが、『スター・ウォーズ』は“サイエンス”の部分は実はそんなに重要じゃなくて、ファンタジーSFとでも言うんでしょうか。例えば、『スター・ウォーズ』には帝国の宇宙戦艦や、同盟軍、反乱軍のXウイングなど戦闘機が登場しますが、それがミリタリー的な武器として、どういう機構でどんな人が開発して、どんな政治的な要素や設計思想があるのかは全く肝心じゃない。宇宙戦闘機も扱いが馬と変わらないんです。ファンタジーSFの世界を作るためのガジェットのデザインであるというところが『スター・ウォーズ』の特徴で、それが魅力だと思います」
「スター・ウォーズ」の世界観に「惚れ込んでいる」と語る多田監督だが、神山監督による「九人目のジェダイ」を見た時は「自分の不勉強さを恥じた」という。「九人目のジェダイ」では、主人公の少女・カーラの父として、ライトセーバーを作る“セーバースミス”のジーマが登場する。
「神山さんがガンスミスと同義で“セーバースミス”という名前で、ライトセーバーを作る刀鍛冶としてジーマを登場させましたが、『スター・ウォーズ』シリーズでは、そこを具体的に描いている作品がないんです。映画では設定としては存在しているのですが、ライトセーバーがどういう構造で作られているのかをきちんと描いているものがない。だから、第1弾の短編『九人目のジェダイ』でその部分を見て『あ、これは不勉強だったな』と。知っていたけど知らなかったという。そこで『九人目のジェダイ』の世界観をなんとなく理解しました」
◇ダース・ベイダーのような黒マスクの敵 改めて和を取り入れる
新作「九人目のジェダイ」の舞台は、ジェダイもシスもいなくなってしまった戦乱の銀河。強いフォースを秘めた少女カーラは、さらわれたセーバースミスの父ジーマを救うため、ジェダイ騎士団の復活を願う仲間と共に新たなジェダイを求めて旅立つが、力こそが正義と信じ圧倒的な力で銀河の秩序を塗り替えようとする謎の将軍ナワームが立ちはだかる。
2つの短編に続く、初の長編を手がける上で多田監督が軸としたのは「キャラクター作り」だった。
「短編の続きを作るわけなので、その世界の中で新たな主人公たちがどういう物語を作っていくか。そこを描くのが一番のミッションでした。リアルミリタリーやSFを描くというよりは、新たなキャラクター像を作っていかなきゃいけない」
主人公のカーラやその父ジーマ、ジェダイ騎士団の復活を目指すジューロといった前作から登場しているキャラクターに加え、新作で本格的に登場するのが最大の敵ナワーム。ナワームは、ダース・ベイダーのような黒いマスク姿でありながら“青いライトセーバー”を操る謎多きキャラクターだ。黒いマスクは、戦国武将の甲胄の面具のようでもある。
「ナワームのビジュアルには、和風を取り入れています。というのも、ルーカス(ジョージ・ルーカス)自身も『スター・ウォーズ』を作るにあたって、大好きな黒澤明映画をリスペクトしてライトセーバーは日本刀、ジェダイは侍をモチーフにしているところがある。そこは、記号として受け継ぐと言うとおこがましいですが、我々も同じことをしていくという意味で、デザインは西洋甲冑より戦国時代の甲冑のフォルムを意識しました。ダース・ベイダーのヘルメットも、ルーカスは日本の兜を意識していますし」
ダース・ベイダーとの違いを出す難しさもあった。
「我々としては、同じ世界の話ではあるんだけど、直接繋がっていないということで違いを出すのに苦心しました。ダース・ベイダーと変えようとすると、日本の甲胄から離れていってしまう。ルーカスが最初に欲しいと思った日本的な甲冑のフォルムではあるが、新しさもあるというバランスを見極めていく作業をしていました」
◇“剣道的”ライトセーバーアクション
“セーバースミス”のジーマが作り上げるライトセーバーそのものにも和の要素を取り入れ、持ち手部分は日本刀の柄(つか)のようなデザインを意識した。「九人目のジェダイ」は数多くのライトセーバーが登場し、キャラクターたちが繰り広げるライトセーバーアクションも見どころの一つとなる。
「アクションに関しては、アニメーターさんの自由度を生かしたいと思っていました。戦い方自体に厳密な型を作ることは最初からやらなかったんです。ただ一つだけ、この作品ならではの和風のこだわりで、お互いがライトセーバーを構えて対峙(たいじ)している時は“正眼の構え”にしてもらいました」
“正眼の構え”は剣道の用語で、剣先を相手の顔に向ける構え方。多田監督自身、剣道の有段者であるといい、「日本的な様式の代表として」ライトセーバーアクションに取り入れた。
「戦い方のルールは作らないけど、刀を使う人の所作の基本として正眼の構えと、ジーマに関しては抜刀する時の居合の構えを入れてもらうようにしました。また、『相手を倒す気のないチャンバラにならない』ことも大事にしています。絶対に相手を斬れない距離でカンカンとやってもいけないし、近すぎてもいけない。そういうところがおかしくならないように気にしてやっていました」
剣道を取り入れたリアルな剣戟に「スター・ウォーズ」のジェダイならではのフォースの要素も積極的に生かそうとした。
「ただ、フォースを使いすぎると、それで全部解決してしまうので、あくまで剣戟の中で、何か方向性を変えるための緊急手段としてフォースが入っているという具合を考えました」
キャラクターやライトセーバー、アクションとさまざまな面に「スター・ウォーズ」らしさ、日本らしさを取り入れ、その上で新しさを追求した「九人目のジェダイ」。また、細かい部分にも「スター・ウォーズ」らしさをちりばめているという。
「例えば、人間以外の種族。メインキャラクターの中でも、カーラの仲間のホーメンは人間ではないですし、街中にも人間ではない種族やクリーチャーを多く登場させています。あと、一番強調したいところは、仲間のドロイドの99-99(フォーナイン)です。『スター・ウォーズ』で言うところのC-3POやR2-D2みたいな存在なのですが、しっかりキャラ立てしました。その活躍も見てほしいですね。我々としては大人気のグローグー(映画『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』のキャラクター)に対抗できるのは99-99かなと(笑)」
日本が作る、ライトセーバーを巡るジェダイの新たな物語。多田監督らスタッフのこだわりが感じられるはずだ。(しろいぬ/MANTANWEB)
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