岬なこ:「最初は歌に自信がなかった」 “物語として歌う”ことで見つけた自分の歌 「青の足跡」インタビュー
配信日:2026/07/29 7:01
アニメなどが人気のラブライブ!シリーズの「ラブライブ!スーパースター!!」の嵐千砂都役などで活躍する声優でアーティストの岬なこさんの4枚目となるシングル「青の足跡」が7月29日に発売される。アーティストデビューから約3年、「最初は右も左も分からなかった」という岬さんは歌い続ける中で、変化していった。岬さんに歌への思い、「青の足跡」について聞いた。
◇“一つの物語”として歌う
岬さんは2023年7月5日、アルバム「day to YOU」でソロアーティストとしてデビューした。それから約3年がたち、2枚のアルバム、3枚のシングルを発表し、2度のライブツアーを開催するなど精力的に活動してきた。
「本当に時の流れがあっという間すぎて、3年と言われても実は実感が全然ないんです。そんなに活動してたっけ?って思ってしまうくらい(笑)。でも年数で言ったら、確かに結構な年月がたちましたよね。最初は本当に右も左も分からなくて、歌との向き合い方も分からなかったんです。それが気付けば、こんなにたくさんの楽曲に囲まれて、みんなに支えられて活動できている。不思議な人生だな、何があるか分からないなと思いますし、とっても楽しいです」
約3年の活動の中で、右も左も分からない状態から成長してきた。一方で、キャラクターではなく“岬なこ”として歌うことには「最初は自信がなかった」と明かす。
「今はもう、こっちが右でこっちが左、これが前と分かるようになりました(笑)。走り始めの不安な気持ちに比べたら、今は地に足がついて歩けているなという感覚があります。最初は歌に自信がなかったんです。元々、歌に良い思い出がなくて、昔、自分の歌声を人に否定されてしまったことがあったんです。歌うのは好きだけど、人に聴かせるものではない。ずっとそんなふうに思っていました。だから、“岬なこ”という一人の人間として歌うなんて、当時の自分からは本当に考えもしないことでした。1ミリも自信がない状態で、歌うことへの恐怖心が拭えなかったんです。役者であればキャラクターという存在を背負って表現できますが、真っさらな自分自身として歌を通して発信するのには、正直に言うと抵抗がありました」
恐怖心はあったが、歌う中で変化が訪れた。
「最初は本当に受け身で、分からないけど、お声がけいただいたからやってみようと敷いていただいたレールの上を半信半疑で歩き出しました。変わるきっかけになったのは、デビューアルバムのレコーディング期間です。グループ活動を経て気付いたのですが、私は『歌を歌おうとしない』のが自分に合っているなと。普通はメロディーに乗せて歌おうとしますよね。そうではなく、歌を歌だと思わずに『一つの物語』として捉えるようにしたんです。声優のお仕事をさせていただいているので、物語の主人公を作って、自分がその主人公になりきって言葉を届ける。歌うのではなく『言葉を伝える、届ける』ということにポイントを絞るようになってから、すごく楽になりました。その向き合い方は今も変わっていません。歌わなきゃと思うと余計な力が入ってしまうので、歌わないようにしたんです。私は妄想や想像を膨らませるのが好きなので、自分の性質に助けられているなと感じます。もし役者をやっていなくて、いきなり歌手としてデビューする世界線があったとしたら……それはゼロですね。絶対に無理だったと思います。ゼロからイチを自分だけで生み出すのは、あまり向いていない気がします」
◇皆さんの顔、めちゃくちゃ見えています
ソロライブも精力的に行っている。ソロアーティストとしてステージに立つ中で成長を実感している。
「気付けばライブもたくさんやらせていただいていますが、グループのときとは本当に全然違います。まず空気感から違います。グループでは、肩を並べる仲間がいて『みんなで一つに』という感覚が強いんです。でも、ソロになると、心強いバンドメンバーはいてくれますが、ステージを作り上げるのは自分しかいないという感覚がすごく強くなります。浮き足立ってしまわないように、わざと自分にプレッシャーをかけているところもありますね。ライブを重ねるほど、楽しいと思えるようになってきましたが、ふわふわした状態で終わりたくないんです。一曲一曲を大事にしたいし、一瞬一瞬をかみ締めるために、浮き足立っている時間がもったいない。セカンドライブツアーでは、ファーストライブから2年半ほどたっていたこともあって、緊張との向き合い方やステージでの表現、感覚のつかみ方が分かるようになったなと実感できました」
ライブは“生もの”だ。だからこその面白みがある。
「もちろん準備やリハーサルは土台を固める意味ですごく大事なのですが、私の場合は、本番で全く違うものが出ちゃうんです(笑)。ライブは本当に生ものだと思います。土台としてフラットなものを作っておいて、本番になったら、目の前にいる皆さんの表情を見て、そのときにどういうふうに遊びたいか、表現したいかを考えて動きます。本番にならないと分からないこともあります。私は性格的に、事前にきっちり固めすぎると、少しでも予定からそれたときにものすごく焦ってしまうんです。それは旅の計画でも、面接の自己PRでも同じでして、自分の進路を決めるときの自己PRを通して、その苦手意識に気付きました。全部を決めてカチカチにして臨んだ面接で、内容が飛んで頭が真っ白になって何も言えなくなっちゃったことがあって。それからは、決めない方がいいんだと思うようになってからは、伝えたい言葉が素直に出るようになりました。その経験が、ライブにも生かされています」
ステージから見えるファンの反応が大きな力になっている。
「皆さんの顔、めちゃくちゃ見えていますよ! 見えていると言っても、そんなことないだろう……と油断されているかもしれないですけど、本当に見えています。心動かされて涙を流してくれている人がいたり、満面の笑みの人がいたり、皆さんが想像しているよりも何倍も見えています。見ているぞ!とちょっと圧をかけていこうかな(笑)。楽しみ方はそれぞれ自由だと思いますが、ライブは全員で作り上げるものだと思っています。私は皆さんの表情を見ていますし、皆さんも歌を通してキャッチボールをしていただけたらうれしいです。ライブは皆さんのリアクションを直接受け止められるので、本当に楽しい時間です」
◇絶妙なニュアンスを表現した「青の足跡」
シングル「青の足跡」の表題曲は、爽やかさと夏の切なさを感じられる楽曲になった。タイトルは岬さん自身が付けた。
「このタイトルは、期日を延ばしてもらいながら、ねばりにねばって決めました。タイトルだけでいろいろな想像をしてほしかったんです。だからなるべく直接的な表現を避けて、空模様が変わる様子、思い出と一緒に歩んでいく姿、どこかにある切なさ……といろいろなものを重ねて感じてもらえる言葉を探しました。どんどん難しく考え込んでしまって(笑)。結果的に、ジャケットや衣装のビジュアルも青が基調になっていたので、分かりやすく『青』という言葉を入れつつ、前に進んでいるけれど、振り返ってもいるという、絶妙なニュアンスを表現したくて『青の足跡』にたどり着きました」
「足跡」という言葉にも思いを込めた。
「この楽曲は、綺麗な青空から夕方、そしてオレンジ色の空へと少しずつ日が沈んでいくグラデーションのようなイメージがあります。歌詞にもそういった情景が入っているのですが、青からオレンジに変わりきっていない、青がかすかに残っている絶妙な瞬間を『足跡』という言葉で表現しました。空の情景とも捉えられますし、自分が歩んできた道や、思い出を振り返るという意味にも受け取ってもらえるかなと思っています」
歌で絶妙なニュアンスを表現しようとした。これまでにない楽曲になった。
「これまでは『爽やかな曲』『切ない曲』と、どちらかに振り切ったものが多かったのですが、今回はその両方が織り交ざったような楽曲です。私は夏の昼間のカラッとした空気よりも、少し涼しくなってきた夕方や夜の時間帯が好きです。今回は落ち着いた雰囲気で、全く取り繕わないナチュラルな表現を目指しました。まるで友達としゃべっているような距離感のアプローチです。大きな表現をあえてせず、語尾の処理の仕方や、本当に拳を握りしめるくらい微細なニュアンスの込め方にこだわりました。聴けば聴くほど引き込まれるような、そんな挑戦をさせていただいた楽曲です。何気ない日常の中で、友達や大事な人と過ごす毎日の景色を思い浮かべました。日が昇って沈んで、当たり前に過ぎていくけれど、今この時間が終わってほしくないなと思う瞬間。また明日会えるのに、お別れの時間を惜しく感じてしまう。そんな限りのある時間の愛おしさを想像しながら歌いました」
◇自分の弱さも見せた「ココロの糸」
カップリングの「ココロの糸」は、表題曲「青の足跡」とのつながりも感じさせる楽曲だ。
「元々、2曲のつながりを意識していたわけではないんです。2曲がそろったら、キレイにグラデーションのようにつながっていて、自分でも驚きました。インタビューなので『狙ってつなげていました』と言った方がいいのかな(笑)。でも、偶然が生んだもので、キレイな流れになりました。『ココロの糸』は、自分の心の奥底にある素の部分、普段皆さんにはあまりお見せすることのない感情をバラードに振り切って表現したいという思いがありました。歌というよりも、独り言のような世界に入り込めるバラードに挑戦したくて、それが形になった楽曲です。結果的に『青の足跡』とつながることで、明るく見えていたところから、孤独を感じつつも光を探しているという人間の表と裏のようなキレイな流れになりました」
「素の自分」や「弱さ」を歌で表現することに葛藤もあった。
「今でも、自分のネガティブな気持ちや頑張っているんだ!という努力をアピールするのはあまり好きではないんです。私は、苦しそうな過程を見せるよりも、出来上がったものがこちらです!と涼しい顔をしていたいタイプなので(笑)。強がりだし、努力している姿を見られたくない。でも、それを歌という形に落とし込むのであれば、言葉にできない自分の気持ちを表現できると思えました。今回の楽曲には、聴いてくださっている皆さんへの感謝の気持ちも込めています。歌詞の『君』は、まさに皆さんのことです。皆さんがいてくれるから、私はここにいられる。それなら、自分の弱い部分もしっかり見せられると思えました」
「ココロの糸」は、岬さんの素直な気持ちがストレートに響いてくる。
「作詞家の方に、私の弱い部分が全部バレていて、解像度がびっくりするくらい高いんです。自分と向き合っているときに感じている不安がそのまま言語化されていて、曲を聴いたとき、自然と涙がこぼれました。この曲を歌うことで、自分自身の不安もちゃんと肯定してあげられた気がします。聴いてくださる皆さんにとっても、歌詞に出てくる『君』の存在がご自身のことだと感じてもらえたらうれしいですし、お互いに支え合っている関係と思っていただけたら幸せです。この3年間、いろいろな経験をして、ライブを経てきたからこそ、ここまで深く気持ちを込めて歌うことができました」
4枚目のシングル「青の足跡」で岬さんはこれまでにない一面を見せた。アーティストとして今後もさらなる進化を目指す。
「これまでは受け身だったところもありましたが、今回のシングルを経て、次はこんな曲に挑戦してみたい、こういう歌を届けたいという自発的な感情が自分の中に芽生えるようになりました。これから先、自分がまだ知らない新しい自分に出会っていくのがとても楽しみです。ライブでは今年のツアーで3都市を巡り、『次も楽しみ!』と言ってくださる皆さんの声が本当にうれしかったんです。だから今後は、さらにツアーの場所を増やしたり、今まで行ったことのない場所へ足を運んで、より多くの方に楽しい時間を届けていきたいです」 (阿仁間満/MANTANWEB)
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