鎧真伝サムライトルーパー:35年ぶり新作アニメは「真っすぐ王道」 魂の継承とリスペクト 藤田陽一監督インタビュー
配信日:2026/07/05 10:01
1988年4月~1989年3月にテレビアニメが放送された「鎧伝サムライトルーパー」シリーズの正統続編となる新作テレビアニメ「鎧真伝サムライトルーパー」の第2クールが7月7日からTOKYO MXほかで放送される。1991年発売のOVA「鎧伝サムライトルーパー MESSAGE」以来、約35年ぶりとなる新作で、テレビシリーズとしては約37年ぶりの復活となった。監督を務めるのは「銀魂」「おそ松さん」などで知られる藤田陽一さんだ。「鎧伝サムライトルーパー」にリスペクトを込め、魂を継承しつつ、「真っすぐ王道」を目指したという新作について、藤田監督に聞いた。
◇主人公がちゃんと成長するアニメ
「鎧伝サムライトルーパー」は、“鎧擬亜(ヨロイギア)”を持つ5人の少年が、運命に導かれて集結し、妖邪帝王・阿羅醐が率いる妖邪の軍勢と戦う姿が描かれた。1988年4月~1989年3月にテレビアニメが放送され、人気を受けてOVAも制作された。「鎧真伝サムライトルーパー」は、35年後の新宿を舞台とした完全オリジナルストーリー。「仮面ライダービルド」「クローズZERO」「テルマエ・ロマエ」などの武藤将吾さんがシリーズ構成・脚本を担当する。
「『サムライトルーパー』の新作を作ろうというところから始まっていて、正統続編にすることは決まっていませんでした。今回は脚本主導なところがあって、武藤さんの本をどうアニメに落とし込むかというところから始まっています。武藤さんがシリーズ構成・脚本としてアニメに参加されるのは今回が初めてだったのですが、しっかり勉強をされて、アニメに寄せていただいています。初めてアニメに参加する方の脚本という点で、演出家として違和感なくアニメに落とし込むことが面白そうだと思っていました。劇中で『あれから何年』と言われる作品はありますが、リアルでも劇中でも35年たっている設定というのは珍しい。武藤さんは、そこを生かすことを考えて組み立てていったと話していました」
企画を進める中で、藤田監督が希望したのは「成長もの」にすることだった。
「主人公がちゃんと成長するアニメを作りたかったんです。『おそ松さん』はモラトリアムだったけど、まっとうに成長する話も好きなんで。もちろんモラトリアムを楽しむ話も好きなんですけどね。少年マンガらしいド真ん中の成長ものを作ってこなかったので(笑)。せっかく変身ヒーローものですし、そこをやりたいと思っていました」
1978年生まれの藤田監督は、子どもの頃に「鎧伝サムライトルーパー」を見ていた。
「小学4年生で、まだまだ子どもででしたから、ストーリーよりも『鎧、かっけえ』『技、かっけえ』とか『どんな敵が出てくるんだろう?』というノリで純粋に楽しんでました(笑)。見直してみると、今だったらもう少しテンポが速くなるだろうと感じますね。あとはキャラクターのオフショットも見せていきたかった。新作では合宿をやっていますが、それぞれのキャラクターをきっちり拾うことを意識してほしいと武藤さんにお願いしました」
「鎧伝サムライトルーパー」は子どもだけでなく、女性アニメファンの心もつかんだ。ただ、小学生男児のほとんどは、女性アニメファンの存在には気付いていなかったようだ。
「放送当時は子どもだったので、そこはよく分かっていなかったんです。当時、『聖闘士星矢』『魁!!男塾』の2本立ての映画があったのですが、『聖闘士星矢』が終わった途端、劇場を後にする女性がいて。それに衝撃を受けたことを、今でも覚えています。面白いものが始まるのに、なんで帰るの?と(笑)。自分はおもちゃ屋で超弾動(玩具)を見て、ほしいな……と眺めているくらいの視界でしたから」
「鎧伝サムライトルーパー」は幅広い世代に強烈にインパクトを残した。新作では、既存のファンだけでなく、これまで作品に触れてこなかったアニメファンにもアプローチしようとしている。
「女性ファンにはもちろん見ていただきたいと思っていますが、新しいファンとこれまでのファンがつながれば面白いという思いがありました。特に『鎧伝』のテレビシリーズは、完全に男の子向けアニメだと思いますし、受け取る側がどう受け取るかは自由なはずです。意識しすぎると根底が変わってくるかもしれないので、そこはあまり意識しすぎないようにしようとしました。あくまで変身ヒーローものを真っ当にやっていく。そこがブレないようにしようと。『おそ松さん』のときもそうでしたが、基本自分はコメディーをやっていたつもりで、その受け取られ方は結果だと思うんです。最初からそこを狙うなら、もっと特化した作品がたくさんありますし、同じようなものになっても違うかな?とも思っていました。真っすぐな王道、ある種のベタなことも恥ずかしがらずにド真ん中にやることが大事だし、それが個性になるのかなという思いもありました」
◇力強い線の理由
王道ではあるが、驚かされることも多かった。例えば、第1話では主人公・凱は妖邪界側として登場し、躊躇なく人間を殺す。
「武藤さんのアイデアが大きいです。テレビドラマの世界で戦ってこられた方なので、どう驚かせて、どう心をつかんで、来週への引きを作るかというサービス精神が脚本に色濃く出ています。最初、凱は人間を殺すけど、直接的すぎないように見せるなど、塩梅を調整しています。(凱の殺戮シーンは)個人的にはあまり気にならないところでもあるのですが。昭和の小学生だったので『北斗の拳』とか見ていましたし。こういう作品があってもいいんじゃないかと思っているところもあります」
藤田監督の話の通り、「鎧真伝サムライトルーパー」の独自性は武藤さんの脚本に寄るところが大きかったようだ。
「脚本だけ読むと実写でやっても成立する。アニメでやったときに映えるよう、ト書きを細かく調整していました。いい意味で、アニメの型にハマりすぎていなくて生っぽいんです。毎話のように驚かされるところがありますし、敵側もきっちり見せる。それが短い尺にまとまっていて、すごい技術だと思います。敵側も『鎧伝サムライトルーパー』は4人(四魔将)だったけど今回は10人(十勇士)と倍以上になっている。そこをしっかり描いています。個人的に第1話に敵幹部がずらっと並んでいると格好いいし、テンションが上がるのでやりたかった。昭和の特撮ドラマでよく見た形式ですね」
「鎧真伝サムライトルーパー」は“令和のアニメ”だが、“昭和の匂い”を少し感じるところもある。その一つがキャラクターの太い輪郭線だ。令和的なキャラクターデザインではあるが、太い輪郭線が力強い印象を与えている。
「『鎧伝』は男の子向けのアクションアニメだったし、やっぱり力強い線でやってみたかった。それと、CGも入っている作品なので、技術的にCGと作画のシーンが分離して見えないように線に特徴を付けたんです。線を強調することで、CGと作画のシーンがつながって、違和感を軽減できればという意図もあります」
◇ジェットコースターのようなドライブ感
藤田監督は「基本的にはおもちゃがほしいなと思って見てくれるとうれしいです。自分と『サムライトルーパー』の出会いのきっかけがおもちゃだから、自然に出ているところかもしれませんが」と愛を込めて作品に向き合っている。
そもそも藤田監督は「鎧伝サムライトルーパー」を制作したサンライズの制作進行からキャリアをスタートした。これまで「鎧伝サムライトルーパー」に携わってきた伝説的なスタッフと仕事をしてきた経験もある。
「塩山さん(キャラクターデザインの塩山紀生さん)とも生前に仕事をしたこともありますし、池田さん(池田成監督)の作品『犬夜叉』で業界デビューしていますしね。縁を感じたところもありました。サンライズに入ったけど、ガンダムシリーズにはあんまり縁がなくて、変な進み方をしてきたのかもしれません。だからメカの見せ方とかよく分かっていない(笑)。知識だけでできるものでもないと思いますしね。時代劇が好きなので『銀魂』もそうでしたが、真面目にチャンバラできるのが楽しいです」
第1クールの第12話「恵緋浪愚」で、初代サムライトルーパーの5人が集結したことも話題になった。
「世代を超えて新旧サムライトルーパーを並び立たせたいという思いがあったのですが、やっぱり気を使いますよね。新作なので新世代を立たせることが念頭にあるけど、初代の皆さんへのリスペクトが当然あります。見せ方には気を使っていて、格好よく見せるのは半分趣味ですね(笑)。新しい見せ方も考えたけど、昔のものを今の技術でやるところに落ち着きました。自分の中ではそれで腑に落ちて、ああいう形になりました」
藤田監督をはじめスタッフは「鎧伝サムライトルーパー」へのリスペクトと熱い思いを込めて“令和のサムライトルーパー”を制作している。第1クールは驚きの展開が続いたこともあり、第2クールはさらに……とハードルが上がっているところもある。
「毎週、何かが起きるという武藤さんのサービス精神の塊のような本になっています。ジェットコースターのようなドライブ感を楽しみにしていてください」
偉大な先人の熱い魂を継承し、令和の時代に再び産声を上げた「鎧真伝サムライトルーパー」。第2クールも毎回何かが起こる予測不能な展開から、一瞬たりとも目が離せない。(阿仁間満/MANTANWEB)
提供元:MANTANWEB











