LONA:野木亜紀子 原案・脚本のオリジナルアニメで「アニメでしかできない表現を」 片桐崇監督と語る誕生の裏側

配信日:2026/07/01 7:01

アニメ「LONA」のティザービジュアル(C)WIT STUDIO/LONA COMMITTEE
アニメ「LONA」のティザービジュアル(C)WIT STUDIO/LONA COMMITTEE

 ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」や映画「ラストマイル」などで知られる脚本家の野木亜紀子さんが原案・脚本を担当する新作オリジナルテレビアニメ「LONA」が制作され、2027年春から放送される。野木さんは、2022年公開の劇場版アニメ「犬王」(古川日出男さん原作)の脚本を手掛けたことがあるが、テレビアニメの原案・脚本を担当するのは初めて。劇場版アニメ「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」などの片桐崇さんが監督を務め、「進撃の巨人」「SPY×FAMILY」などのWIT STUDIOがアニメを制作する。オリジナルということで、まだまだ謎も多いが、一体どんなアニメになるのだろうか。野木さんと片桐監督を直撃した。

 ◇実写でできることなら実写でやればいい

 「LONA」は、WIT STUDIOが製作委員会幹事として企画、アニメーション制作の双方で指揮を執る。「約束のネバーランド」で知られるマンガ家の出水ぽすかさんがキャラクターデザイン原案、数々の映画音楽を手掛けてきた世武裕子さんが音楽を担当するなどトップクリエーターが集結した。企画が始動したのは、約6年前の2020年までさかのぼる。全ては、WIT STUDIOの代表取締役社長の和田丈嗣さんの一通のメールから始まった。

 野木さん コロナ禍の真っ最中に、和田さんから人づてに「アニメに興味ないですか?」というメールをいただきました。「MIU404」を書いた後で、あまりにも忙しくて疲れ切っていたときだったのですが、WIT STUDIO!?となって。アニメ「進撃の巨人」のSeason(シーズン3)を震えながら見ていたこともあり、「『進撃の巨人』めっちゃ面白いです!」と言いたいがために、リモートでお話させていただいたのが始まりです。

 片桐監督 野木さんからのお返事があったことを、和田さんがたまたま隣にいた僕に教えてくれたのを覚えています。すごいアニメが始まるんだろうなと思っていました。そのとき、僕は演出になったばっかりの新人だったので、まさか自分が監督になるとは思ってもいませんでした。僕が参加することになったのは、もう少し後になって、企画が本格的に動き始める段階でした。

 野木さん 和田さんから「実はすごい才能のある若者がいて、監督をやらせたいんですよ」と片桐さんを紹介してもらいました。片桐さんはアニメだけでなく、実写映画やドラマもたくさん見てきている方だったので、話がすごく通じやすかったです。

 モチーフは「脳科学」。少し未来の壊れた世界で、人々は「死んだはずの人間に襲われる」という新たな事変に直面する。政府はこの事態の対処を脳神経光解析研究室(通称LONA)に依頼する。研究員の青と見習いの珊瑚は、死者の脳を解析することで、事態の謎に迫る。LONAのモデルは、兵庫県の播磨科学公園都市にある理化学研究所のSPring-8だ。

 野木さん 元々、SPring-8にときめきを抱いていて、2018年の施設公開日に一人で行ったんです。いつかSPring-8を舞台にした映画かドラマを作りたいなと。でも、撮影も難しそうですし、なかなか機会もないだろうと思っていました。和田さんに「何に興味がある?」と聞かれて話しているうちに、今こそSPring-8なんじゃないかと思い立ちました。私がアニメに求めるのは、「アニメでしかできない表現」なんです。実写でできることなら実写でやればいいので、もし自分が関わるなら、アニメでしかできないアニメを見たいなと。SPring-8は実写では難しいけど、アニメならできるかもしれない。その後、SPring-8で何をするかを相談するうちに「脳」の話になっていきました。

 SPring-8は、世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設。放射光を用いてナノテクノロジーやバイオテクノロジー、産業利用まで幅広く研究している。

 野木さん 脚本家になるよりずっと前に科学が好きな友達に誘われて、和光の理化学研究所の見学会に何度か足を運んでいたんですが、そこで放射光施設を知り、こんなに巨大な施設でミクロの世界を見るという部分にロマンを感じました。しばらくリモートで打ち合わせをしていたのですが、「SPring-8が熱いんだよ!」といくら言っても、みんな行ったことがないし、ピンときてないわけですよ。なかなか通じないので、みんなで行くことになり、そこで片桐監督と初めて実際に会いました。コロナ禍ということもあり、それまではリモートだったので。

 片桐監督 2021年頃です。まだ企画が固まってない状態だったのですが、SPring-8を実際に見て、とにかく大きくて圧倒されました。野木さんの言っていたことが体感できて、共通認識ができたところもあります。その日の夜、居酒屋で話をして、そこから転がっていったんです。そこが始まりです。

 ◇“才能ほとばしる”片桐監督

 アニメが発表された際、野木さんは「アニメにしかできない表現を!ということで、憧れだった大型放射光施設を舞台に、脳と世界に挑みます」とコメントしていた。

 野木さん アニメでしかできないことばかりです。もし実写でやったらハリウッドなみのフルCGや美術セットや背景合成が必要で何百億もかかるだろうものが、アニメだからこそできている。「アニメっていいね」って言いながら作っています。設定が多いのでスタッフは大変でしょうけど。

 片桐監督 SPring-8という舞台は、現実がベースにはなっていますが、死んだ人の脳、過去の記憶などが主軸になってきますし、リアリティーを持たせつつ映像にするというのは、アニメでしかできないと思います。

 野木さん アニメの世界は本当に恐ろしいです。例えば、ドラマだったら長くても1年くらい、短い作品だと半年くらいで作りますが、もう6年費やしていますから。これで脚本がつまらなかったらやばいなと責任の重さも半端なく、非常に恐ろしいです。コスパは悪いのかもしれません(笑)。それだけ熱量の高いスタッフが集まっているんです。和田さんもお忙しいはずなのに、打ち合わせにもきっちり来てくれますし。

 片桐監督をはじめとするスタッフは、野木さんとアニメを制作する中で大きな刺激を受けているという。

 片桐監督 野木さんが手掛けた作品がずっと好きでしたし、こんなことは一生に一度あるかどうか分かりません。本当に幸せです。シンプルに言ってしまえば、シナリオがやっぱり面白いんです。初めてシナリオを読んだときは衝撃を受けました。この時代ならではの作品になっていますし、普遍性もあります。まだ言えないことも多いのですが、関係なかったと思われるものが急に伏線になったり、科学に対する造詣の深さが物語に反映されたりと、シナリオが進んでいくうちにその面白さはさらに増していきました。

 野木さんは、片桐監督について「才能ほとばしる」とコメントしていた。片桐監督は「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」を手掛け、今回「LONA」でテレビアニメシリーズの監督に抜てきされた。

 野木さん 片桐監督は非凡です。とにかく見てくれとしかいいようがないのですが(笑)。私自身、初めてオリジナルのテレビアニメシリーズを手掛けるのがこのチームで、本当によかったと感じています。上がってくるコンテや設定画を見て、想像を大きく超えてくるので、毎回楽しみにしています。

 片桐監督 作り方が少し特殊なんです。野木さんがシナリオを書いて、僕がイメージボードみたいなものを描き、その後にシナリオを決定稿にしていく。ほかのアニメとは作り方が違いますが、順調に制作が進んでいます。

 初めてテレビアニメの原案・脚本に挑む野木さんと、熱量あふれる気鋭のトップクリエーターたちが集結した。長い歳月をかけて一歩一歩丁寧に紡がれてきた「アニメでしかできない表現」がどのような映像として結実するのか。2027年春の放送に向け、期待は高まるばかりだ。(阿仁間満/MANTANWEB)

提供元:MANTANWEB

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