霧尾ファンクラブ:オーバーアクションを封印 女子高生の“現実”を描く 外山草監督インタビュー

配信日:2026/04/04 8:01

アニメ「霧尾ファンクラブ」(C)地球のお魚ぽんちゃん・実業之日本社/「霧尾ファンクラブ」製作委員会
アニメ「霧尾ファンクラブ」(C)地球のお魚ぽんちゃん・実業之日本社/「霧尾ファンクラブ」製作委員会

 地球のお魚ぽんちゃんのマンガが原作のテレビアニメ「霧尾ファンクラブ」が、MBS・TBS系のアニメ枠「スーパーアニメイズムTURBO」で4月2日から放送される。「霧尾ファンクラブ」は不思議なアニメだ。二人の主人公の女子高生は、いわゆる美少女キャラクターではない。笑いと切なさが同居するような独特の空気感、シュールな会話劇が魅力となっている。アニメでは“不思議”をどう表現するのか。アニメの監督を務める外山草さんに聞いた。

 ◇あえてオーバーアクションは封印

 女子高生の三好藍美と染谷波が、クラスメートの霧尾賢に対して止まらない妄想や愛のやりとりを繰り広げる“一方通行”ラブコメディー。原作は「COMICリュエル」(実業之日本社)で2022~24年に連載された。「このマンガがすごい!2024」オンナ編で第6位、「このマンガがすごい!2025」オンナ編で第10位と2年連続トップ10にランクインするなど人気を集め、実写ドラマ化もされた話題作だ。

 「日常を描いてはいますが、会話がぶっ飛んでいる。漫才やコントの掛け合いのようなテンポのよさがあります。一方通行なベクトルで、誰かが誰かを一途に思っている。その様子が、何とも言えない平和な世界として描かれています。理想的な世界が根底に流れていて、その中で彼女たちの青春が描かれている。そこに魅力を感じました」

 女子高生の会話はシュール。しかし、爽やかでもあるから不思議だ。独特の空気感をアニメで表現しようとした。

 「その原作の空気感に心をつかまれたのですが、アニメにするのはなかなか難しい。懐の深い作品なので、アニメとしての表現手法は無数に考えられます。そこで突き詰めて考えたのは『何をやらないか』でした。アニメ特有の記号的なオーバーアクションはやらないようにしようと決めました。これは彼女たちの日常だからです。非現実ではなく、それが彼女たちの現実なので、それが普通であることが伝わると、すごく面白い作品になるんじゃないかなと思っていました」

 アニメ的な表現をあえて封印するのは、勇気ある決断なのかもしれない。

 「全くその通りです。優秀なキャストさんに演技をしていただき、それから絵をつけているので、困った時は声に戻る。こうすればいいんだという打開策が生まれてきます。あとは、割り切りました。オーバーアクションができないということは、絵が止まってしまう瞬間もあります。でもそれは『間』にしようとしています。そこにシュールさを感じていただいたり、この子は何かを抱えているんじゃないかと感じていただいたりする。オーバーアクションにするくらいだったら絵が静かに止まっててもいいという考え方をしています」

 アニメでは、稗田寧々さんが三好藍美、若山詩音さんが染谷波をそれぞれ演じる。声優陣の演技がキーになった。

 「2人の掛け合いこそが作品の生命線ですから、バラバラに選ぶことには意味がないと思ったので、さまざまな組み合わせを考えました。満場一致で稗田さん、若山さんのコンビでした。二人は同年代でプライベートでも仲がいいということですが、不思議なことに、マイクの前に立つと絶妙な緊張感が生まれるんです。仲が良いからこその互いを高め合うような心地いい緊張感です。これが作品の空気感に完璧にマッチしていました。相手の言葉を受けたときの息遣いが本当に素晴らしくて。掛け合いでなければ絶対に出せないものです。お二人の化学反応に賭けて、本当に良かったと思っています」

 ◇霧尾は「ゴドーを待ちながら」のように

 色彩でも不思議な空気感を表現した。アニメならではの表現がありつつ、リアリティーもある。

 「色彩設計を担当してくださったのぼりはるこさんが、作品を気に入ってくださって。ぜひ、自分にやらせてほしい、と。原作の色の情報は、実はコミックスの表紙くらいしかありません。そこからアニメの色を落とし込んでいくわけですが、僕からは『日常であることを大切にしてほしい』とお願いしました。アニメ的な華やかさ、水彩画のようなアーティスティックな表現にする方向もあります。アニメでは華やかな制服を着させたりすることもありますが、こういう制服あるよねとなるようなシンプルさがあった方がいいと思っていました。原作者の地球のお魚ぽんちゃん先生も、現実にある靴などをモデルにして描かれているとお聞きしました。ただ、リアル感が邪魔してしまうこともあるので、さじ加減が大切です。そこをうまく表現していただきました」

 藍美と波は普通の女子高生だ。いわゆる美少女キャラではない。

 「キャラクターデザインの林奈美さんが原作の大ファンなので、多くを委ねました。ただ、すごく悩まれていました。二人ともアニメっぽくないキャラクターなんです。波はかろうじてアニメっぽさはあるけど、藍美は個性的です。個性派俳優のようなイメージを持っていました」

 二人が思いを寄せる霧尾の存在も重要だ。タイトルに名前はあるが、出番が決して多いわけではない。

 「存在するのかしないのか、つかみどころのない不思議な存在ですよね。彼をアニメでどう動かすか考えたときに僕の頭に浮かんだのは、ベケットの『ゴドーを待ちながら』でした。藍美と波が会話を繰り広げることで、視聴者の頭の中に霧尾というキャラクター像が形作られていく。それが正解なのか、あるいは裏切られるのか分からない。そこを表現しようとしています。デザイン的にも目が見えていません。オーバーな演技もさせません。ただ、そこにいるだけで、藍美と波がキャラクター像を造っていく。そこを徹底して見せていこうと考えました」

 ◇実は“仕掛け”が

 アニメ化にあたり、原作者の地球のお魚ぽんちゃんさんも全面的に協力した。

 「先生はアニメ制作に対して深い理解を示してくださり、シナリオ会議からアフレコまで、全工程に立ち会ってくださいました。こちらの意図を100%受け止めてくださる方で、発展的なアイデアをくださるんです。例えば、シナリオのト書きに『ここはカフェオレの“オレ”のイントネーションで……』と指定があったり、こだわりが随所に生きています。原作でも異彩を放っているチゲ男は、当初のシナリオでは本筋に関係ないとして外されていたのですが、そのノイズになりそうな存在が作品の魅力なので、出しましょうと提案させていただいたこともあります。先生の理解があったからできたことです」

 ネタバレになるため、詳細は説明できないが、最終回まで見ると、第1話から見直したくなるような“仕掛け”もある。

 「そこは狙っているところです。詳しくは言えませんが、1周目では気づかないような伏線をあちこちにちりばめています。特にこだわったのはキャラクターの目線です。結末を知った上で2周目を見ると、発見があるはずです。登場人物たちの関係性を理解した上で、もう一度彼らの視線を追いかけてみてください。星羅も重要です。セリフがないシーンでも画面の端っこに映り込んでいたりします。そこも楽しんでください」

 テレビアニメ「霧尾ファンクラブ」は、緻密な計算、細部のこだわりで何気ない日常を表現した。ただ、そこには“不思議”が漂っている。最後まで見ると、“不思議”の正体を垣間見ることができるかもしれない。(阿仁間満/MANTANWEB)

提供元:MANTANWEB

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