安野希世乃:歌に“役”を宿して 声優アーティストとしての矜持 「アルゴリズム」インタビュー
配信日:2025/11/16 11:01
声優アーティストの安野希世乃さんの5枚目のシングル「アルゴリズム」が11月19日に発売された。タイトル曲は、10月から放送中のテレビアニメ「嘆きの亡霊は引退したい」の第2クールオープニング主題歌で、4人組ロックバンド「YOURNESS」の古閑翔平さんが作曲・編曲を手掛け、演奏も「YOURNESS」が担当した。安野さんに新曲や声優アーティストとしての活動について聞いた。
◇YOURNESSの演奏と一つになる
「アルゴリズム」は、安野さんの歌と「YOURNESS」の演奏が一体となったロックで元気が出る楽曲だ。
「爽やかで疾走感があって、ド頭からトップギアです。私のこれまでの楽曲では、歌と演奏の調和を大事にすることが多かったのですが、今回は楽曲が先行してできあがっていましたし、私がこの曲に挑むんだ!と感じていました。YOURNESSさんの演奏の一体感がすごいんです。バンドメンバーとして長年共に演奏をされている皆様の中に『はじめまして』と入っていく形だったので、最初は緊張しました。楽曲の中で、歌として演奏と一つになれるよう努めました」
安野さんは「YOURNESS」のレコーディングを見学する機会があったといい、熱い演奏を実際に見て、演奏と一体になろうとした。
「バンドメンバーの皆さんは長年の戦友のようで、和気あいあいとしていました。声を掛け合いながら録音していて、呼吸と演奏が合わさっていくんです。バンドの録音は初めて見ましたし、すごく勉強させていただきました。格好いいキメがあるから、私も力強くしようと考えたり、演奏を実際に見た経験は大きかったと思います」
歌のレコーディングでもこの曲ならではの疾走感を表現しようとした。
「実は紆余曲折がありまして……。コーラスになっているパートは、元々メインボーカルのラインだったんです。息継ぎのポイントなどを考えると、壁にぶつかり、音楽プロデューサーの福田(正夫)さんから『コール&レスポンスの形に変えよう』と提案があって、組み替えていき、今の形になったんです。サビにキーが高いところもあったので、そこも含め力強く出せる音程までキーを下げました。さまざまな調整があって、パワフルに歌い上げる一曲になりました」
12月6日のYokohama Bay Hall(横浜市中区)公演を皮切りにライブツアー「安野希世乃 5th LIVEツアー2025~僕らの、雨が、やむまで。~」もスタートする。ツアーでは、横浜、福岡、東京、仙台、大阪を巡る。
「過去最多公演のツアーで、ソロライブで福岡に行くのは初めてです。安野希世乃の歌手としてのフラッグを福岡にも立てることができればうれしいです。ライブは一期一会で、土地柄によって会場の雰囲気が違うので、その地にしかない皆さんとのコミュニケーションを大事にしたいです。あと、おいしいものも食べたい(笑)。もちろん皆さんにも、ライブに来ることで元気になっていただきたいです。たくさん体を動かして声が出せるツアーにしたいです。『アルゴリズム』もコーレスポイントがありますし、皆さんと一体となっていきたいです」
◇心情を読み解きながら楽曲に向き合う
2017年に声優アーティストとしてデビューした安野さんは、高い歌唱力や表現力に定評がある。歌への思いについても聞いた。
「常に“自分の歌”としては歌っていないです。歌わせていただくそれぞれの曲を物語として考え、その主人公はどんな人なのか?を考えています。その人の感情、年齢、人生のどのタイミングでこの歌を歌うんだろう?と役作りをするように、それぞれの楽曲の人物を作っています。声優アーティストならではなのかもしれません。安野希世乃の気持ち、安野希世乃の物語としては歌っていなくて、誰かの気持ちを代弁したり、演じているような心持ちです。私はシンガー・ソングライターというわけではないですし、作曲家さんや作詞家さんに作っていただいた楽曲という物語を預かっている身なので、声の表現者としてイメージを膨らませて歌っています」
歌に“役”を宿すという安野さんが歌と向き合う姿勢は、役者としての姿勢に通じる。
「音楽プロデューサーの福田さんと私のレコーディングは独特かもしれませんね。今、これはどういう状況ですかね? この時の気持ちは?と心情を読み解きながら楽曲に向き合っています。意見交換をしながら、読み解いていって、そこは違うんじゃないですか!って、たまにケンカもします(笑)」
「アルゴリズム」ではどんな物語、人物をイメージしたのだろうか?
「実は最初は、ノーアイデアだったんです。格好いい演奏についていくのに必死でした。『嘆きの亡霊は引退したい』の主題歌ということもあり、主人公のクライの気持ちなのかな?と考えていました。ただ、歌い出してすぐに福田さんから『ちょっと張り切りすぎですね』と言われたんです。『この主人公はやる気がないんです。目の前にの問題から逃げたい』と説明してくれたのですが、表現するのが難しいんですよね。『ちょっと肩の力を抜いて歌いましょう。主人公はやる気満々な人ではない。巻き込まれていくんです』と言われ、いい意味で肩の力を抜いて歌うことができました」
肩の力を抜きつつ、疾走感もあり、元気も出る……と複雑ではあるが、安野さんの卓越した表現力があったからこそ実現したのだろう。最後に、声優アーティストとして今後、挑戦してみたいことについても聞いた。
「安野希世乃としてほかのアーティストさんとコラボしてみたいです。これまでもワルキューレやぽかぽかイオンなどもやらせていただいていますが、そういったユニットという意味ではなく、安野希世乃×○○のような形で、デュエットソングなどのコラボもしてみたいです。実は、長年の夢なんです!女声×男声コラボも憧れますね。もっと大胆にコラボをやってみたいです」
阿仁間満/MANTANWEB
提供元:MANTANWEB











