DIGIMON BEATBREAK:AI時代の新しいデジモンの挑戦 ターゲット拡大の狙い 宮元宏彰、高田伸治インタビュー
配信日:2025/11/09 7:01
アニメやゲームなどが人気の「デジモン」シリーズの新作テレビアニメ「DIGIMON BEATBREAK(デジモンビートブレイク)」がフジテレビほかで毎週日曜午前9時に放送されている。「デジモン」は、1997年に携帯ゲームが発売され、テレビアニメ第1作「デジモンアドベンチャー」が1999~2000年に放送され、テレビシリーズを全9作、劇場版全13タイトルが制作されるなど長く愛されている人気シリーズだ。同シリーズは、時代に合わせて“進化”してきた歴史があり、「DIGIMON BEATBREAK」でも、AIなど現代ならではのキーワードもちりばめられている。東映アニメーションのシリーズディレクターの宮元宏彰さん、プロデューサーの高田伸治さんに「DIGIMON BEATBREAK」の誕生の裏側、込めた思いを聞いた。
◇10、20代向けにターゲットを上げた
--企画が立ち上がった経緯は?
高田さん テレビアニメシリーズは「デジモンゴーストゲーム」以来、約2年ぶりです。「デジモン」は長い歴史があり、常に新しい取り組みに挑戦してきました。「デジモンアドベンチャー」から続く日曜朝の番組ですし、2025年のタイミングで何をやるか?を考え、これまでの「デジモン」と違って、少しターゲットを上げた作品として一から作り上げようとしました。これまではキッズ向けでしたが、今作は10、20代向けにターゲットを広げています。今、流行しているアニメを見ると、「鬼滅の刃」などキッズ向けではない少し残酷な描写のある作品も子供が楽しんでいます。子供は内容的に大人っぽい作品も見ています。ターゲットを上げても子供が見てくれると考えていました。
宮元さん 最初から今の若い世代に見てもらいたいという話がありました。「デジモン」は、長く続くシリーズですが、「これまでのイメージをあまり気にしないでやってほしい」という話だったので、自分なりに今できることがあるかもしれないと思いました。
--AIが浸透しつつある時代性も意識した?
宮元さん 「デジモン」が立ち上がった当時は、デジタルが浸透していなかった時代ですし、デジタルという言葉にワクワクするところがあったんだと思います。それから25年以上経って、デジタルが当たり前になりすぎている中で、「デジモン」とは何か?をすごく悩みました。やっぱり現代の話にしたいですし、AIがこれからどうなっていくのか?と考えていたので、メインのテーマとして組み込もうとしました。
--作中でデジモンはAIのバグなのかもしれないという描写もありました。
宮元さん デジモンはネットの中に存在していますし、そもそもAIに似ていると思っていました。AIがデジモンのようになってきて現実が「デジモン」に近付いてきたのかもしれません。デジモンが人間のパートナーでもあって、今の人間とAIがどう関わっていくのか?という問題に近いところがあります。そこでテーマ的なものが見えてきました。AIは、人によっては恐れがあったり、友達として付き合ったりと……AIへの向き合い方にはさまざまな意見があります。使う人のリテラシーが求められ、恐ろしいことになるかもしれないし、人間を進化させてくれるものにもなるかもしれない。簡単に答えが出る問題でもないですし、こうであると決めつけていくのではなく、悩んでいくアニメにしようとしました。決めつけていくことが、人間らしさを失っていくことにつながっていくのかもしれないとも思っています。
高田さん 宮元さんの悩む性格は、主人公・天馬トモロウの性格にも反映されているとも思うんですよね。
宮元さん 答えは一つではないし、余白があることで、考えることができます。決めつけないで考えていくことが大きなテーマとしてありました。デジモンと人間の繋がりもきっちり見せようとしました。ぶつかったりもするけど、お互い理解して絆を深め、進化していく。そこをしっかりしていれば、これまでと違うこともできるはずです。
◇感情が高ぶり世界を壊す
--「ビートブレイク」というタイトルは、音楽をイメージするところもあります。
高田さん ただ、音楽ものではないんです。
宮元さん デジモンが戦う時、人間はデジモン任せで、人間がずっと見ていることが多かったので、そこを変えたいとも考えていました。「DIGIMON BEATBREAK」では、人間の思考や感情がe-パルスというエネルギーになり、それがデジモンに作用します。人間とデジモンが一緒に戦う形にしようとしました。この人間の感情がキーになっています。この先の時代、決められたものに型をはめていくことが、みんなにとって都合がよい、というふうになっていくかもしれません。そこで大事になってくるのが、人間の本質的な感覚、感情で、それが人間の深みになっていくと考えています。感情の高ぶりがデジモンに作用することで、予想しないことになっていく。シリーズ構成の山口亮太さんが提案してくれたのですが、ビート、感情の高まりを作品のイメージにしようとしました。音楽とはあまり関係なくて、ビート、感情が高ぶることで、決められた世界を壊していく……という意味を持たせようとしました。
--ターゲットを上げたことでビジュアルの印象もこれまでと変わりました。メインビジュアルからも新しい「デジモン」であることがしっかり伝わります。
高田さん メインビジュアルは、アジトの前にたたずむグローイングドーン(賞金稼ぎを生業とするチーム)のメンバーを描いていて、宮元さんが描いたラフを見た時、新しくなる!と感じました。気だるげで、ギラッとしていて格好いいんですよね。
宮元さん 最初のラフは高田さんが提案したんですけどね。グローイングドーンはこの世界では異端の人たちの集まりで、この世界が間違ってんじゃないのか?と世界を見ています。ただ、自分が絶対に正しいとは思い切れていない。強がっているので、にらみつけるような表情をしています。いろいろな境遇のキャラクターが、この世界とどう関わっていくかを描いていきます。そこをビジュアルで見せようとしました。
高田さん キャラクターデザインの小島隆寛さんのキャラクターもすごくいいんです。親しみやすさや格好よさもありますし。
宮元さん 小島さんのキャラクターはすごく魅力的で、頭身が上がっているけど、リアル寄りになりすぎず、デフォルメも効いていて、キッズ向けのとっつきやすさも少し残っています。線がシンプルなので、アニメにする時、センスが要求されて少し難しくもあるのですが、ハマった時に格好いい。動きも遊べますし。
◇デジモンは分身で自己対話する
--主人公のトモロウもそうですが、社会とうまく関われないかもしれないと感じているキャラクターも魅力的です。
宮元さん 「これが正しい」とされている世界で、溶け込んでいるキャラクターではなくて。大多数になじめない。デジモンにしてもモンスター、怪物として恐れられ、不要なもののように扱われるけど、それがない世界は楽しいのか? AIの現状を見てみても、全部をAIの言うとおりにしていく未来にはワクワクしません。昔、想像していたAIはワクワクするものじゃなかったっけ?とも思うけど、そうじゃない方に向かおうとしている気がします。
高田さん 本作ではパートナーの関係においてデジモンはある意味で自分の分身であり、自己対話の中で、お互い成長していきます。
宮元さん 完璧じゃないのが人間の魅力ですし、AIが人間に近付いて、人間らしくなると、どんどんダメになって、愛せるものになるのかもしれません。ゲッコーモンはそこを体現しているところもあります。今回のデジモンは、サポタマというガジェットから生まれるのですが、与えていたe-パルスの影響を受けています。だから、人間の思考や感情の影響があって、合わせ鏡のようでもあるんです。自分の分身のような存在なのですが、ゲッコーモンは言うことを聞かない。それは、世界に抑圧されていた気持ちを解放しているんです。トモロウは、そんな自分の分身に戸惑います。自分と向き合う話なんです。
--今後の展開は?
高田さん 宮元さんがおっしゃっていたように、新しいことに挑戦していますが、「デジモン」であることが大事ですし、パートナーとの絆や関係性を描き、未来をどういうふうに提示していくことが大きなテーマになっています。見てくれた方の感情が揺れるような作品にしていきたいです。
宮元さん バトルだけじゃなくて、人間ドラマも重視しています。どんどんキャラクターも増えてくるので、楽しみにしていてください。
阿仁間満/MANTANWEB
提供元:MANTANWEB


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