押井守監督:伝説のOVA「天使のたまご」は「今はできない」 4Kリマスター化に「感無量」
配信日:2025/10/30 23:02
東京都内で開催中の「第38回東京国際映画祭」で10月30日、1985年に発表された押井守監督の“伝説のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)”「天使のたまご」の4Kリマスター版が上映された。押井監督、“少女”役の声優の兵藤まこさん、アニメ評論家の藤津亮太さんが登場。
「天使のたまご」は、押井監督の初めてのオリジナル作品で、天野喜孝さんが原案、アートディレクションを担当したOVA。限りなくモノトーンに近い色彩、ごくわずかのせりふ、異例の長回し、約400カットという通常のアニメ約3分の1という少ないカット数といった禁欲的なスタイルで制作された。1985年にOVAとして発売され、期間限定で劇場でも上映された。
同作は商業的に成功したわけではなかった。押井監督は「こんなつもりじゃかった。40年前の作品がこうやって世に出るとは夢にも思っていなかった。今のお客さんはどう思うか? 半信半疑で来ました」と切り出し「よくこんなもん作ったな。よく作れたなと思いましたし、やっておいてよかった。今はできない。個人的にできないし、企画自体もできないと思う」と語った。
収録の話題になると、押井監督は「二つだけ覚えている。『あなたはだあれ?』というセリフ。あれが一番大事。何十回もやってもらった記憶がある。『誰』は、誰に向かって言っているのか? 自問しているのかもしれない。この映画は実存主義と言われたことがあったけど、あながち間違っていない。とても難しいセリフだと思う」と振り返った。
押井監督は、もう一つ覚えていることを「卵が割られた翌朝、女の子が悲鳴を上げる。斯波さん(音響監督の斯波重治さん)と相談して、(兵藤さんに)一応演じてもらった。やってもらって、凍り付いた。すごかったよね。静かな映画だけど、唯一感情が爆発するシーン。今思えば、録音しておいてよかった。素晴らしかったです」と話すと、兵藤さんは「何回も演出を受けて、本当に泣いたんです。おえつは本物です」と明かした。
最後に、兵藤さんは「支えてくださった皆さんに感謝をお伝えしたいと思います。感謝するばかりです」と話し、押井監督は「40年前の作品なので、スタッフも大分、鬼籍に入りました。あの方たちが生きていれば、きょうの日を喜んでくれると思います。僕も終わったものだと思っていたけど、こうやって見ていただけることになった。ありふれた感想ですが感無量です」と思いを語った。
4Kリマスター版は、同作が40周年を迎える2025年に向けて制作されることになった。押井監督による監修の基、35ミリのフィルム原版をスキャニングし、最新技術で4Kリマスター化する。11月14日からドルビーシネマ限定で先行公開され、11月21日から全国で順次公開される。
提供元:MANTANWEB











