アイカツ!×プリパラ:ライバル? 気になる関係が明かされる 原田真史×大庭晋一郎インタビュー
配信日:2025/10/21 7:01

アニメやゲームなどが人気の「アイカツ!」と「プリパラ」がコラボした劇場版アニメ「アイカツ!×プリパラ THE MOVIE -出会いのキセキ!-」。「アイカツ!」のあかりGeneration(ジェネレーション)と「プリパラ」の10周年を記念した“奇跡のコラボ”となった。「アイカツ!」はバンダイがアーケードカードゲームを展開し、バンダイナムコピクチャーズがアニメを制作している。一方、「プリパラ」は、タカラトミーアーツがゲーム、タツノコプロがアニメを手掛けている。「アイカツ!」と「プリパラ」はライバル関係にあったようにも見えるが、実情はいかに? 「アイカツ!」「プリパラ」を長年手掛けてきたバンダイの原田真史さん、タカラトミーアーツの大庭晋一郎さんを直撃。気になる2作の関係が明かされる。
◇相乗効果で市場が広がった
--お互いを意識していた?
大庭さん 紐解くと「プリティーリズム」時代の話から始めないといけないのですが……。「オシャレ魔女 ラブ and ベリー(ラブベリ)」から始まった女児向け筐体ブームがあって、「ラブベリ」のサービスが終了した時に、ムーブメントが一度落ち着いてしまいました。その後、女の子たちにJSファッションブームが訪れ、女の子がオモチャ売り場に来なくなってしまったと言われていました。オモチャからメークホビーにいかず、いきなりファッションにいってしまったんですね。そこで女の子にオモチャ売り場に戻ってもらうために売り場の劇場化を目指しました。それが「プリティーリズム」だったんです。「プリティーシリーズ」は最初、カードではなく、宝石(プリズムストーン)から衣装が出てくるところから始まりました。その後、「アイカツ!」が出てきて……。
原田さん 「プリティーリズム」が本稼働した時、お店に見に行きましたよ。すごい! 筐体のここ、回るんだ!って。バンダイは、当時、「ドラゴンボール」などの男の子向けのデータカードダスを中心に展開していましたが、本格的に、女の子向けタイトルにも挑戦しようとしていた時期でした。もともとデータカードダスは、カードダスの流れをくんでいたので、あくまでもカードビジネス視点でした。いかに楽しくカードを集めて、ゲームを楽しく遊んでもらうか。女の子向けに本格的に挑戦するならば、データカードダスの本来持つ遊びの楽しさを引き出すオリジナルな世界が、必要だということで、アニメを含むプロジェクトをスタートさせました。それが「アイカツ!」でした。
大庭さん 僕らは、プリズムストーンを使ったギミックを見せようとしていて、玩具を拡張した発想でした。営業をする際、当時は女児向け筐体がもう終わったものだと思われていたので、説得するのが大変でした。そういう意味でもプリズムストーンという玩具の持ち味が生きてきました。
原田さん メディアミックスもされており、いろいろチャレンジされている「プリティーリズム」は、注目していました。
大庭さん 新弾の稼働日も意識しましたよね。稼働日を先にするか後にするかという問題があって、先だったら、先行できるけど……。
原田さん 後出しの方が有利だったりもしますよね。子供は新しいものが好きですし。
大庭さん プリズムストーンは生産の都合上、3カ月ごとだったけど、「アイカツ!」を見ていると、どうやら2カ月ごとが正しいのでは?となったり。ただ、アニメの盛り上がりと連動させようとすると3カ月がよかったりもしますし。
--ゲームの内容やデザインなども意識した?
大庭さん 「プリティーリズム」の話ばかりになってしまうけど、いわゆるJS(女子小学生)ブームでしたし、ファッションは当時のリアルクローズを意識して、キッズファッションブランドともコラボしていました。「AKB48」が人気になって、アイドルブームが起きて、子供にも浸透していったんです。「プリティーリズム」も「AKB48」とコラボしていましたが、そんな中に「アイカツ!」がやってきたんです。「アイカツ!」はアイドルをキャラ化していました。
原田さん オリジナルキャラクターは、世界観含めて、自由な分、いろいろ研究しましたよ。やっぱり、「アイカツ!」を好きになってもらう、という点で、差別化しないといけませんし。
大庭さん タカラトミーアーツだけで孤軍奮闘していた時で、「アイカツ!」が参入してきたことで市場が広がったところもあります。
原田さん アニメをやっていなかったら、売り場にいる子供を取り合って、終わっていたかもしれません。両タイトルがそれぞれ、アニメと一体になって、新たな子供たちを取り込み続けたことがよかったと思っています。
--正直、面白くないと思ったこともあった?
大庭さん 「ない」と言えば嘘になってしまいます(笑)。場所の取り合いですからね。
原田さん そうですね(笑)。ただ、結果として、「アイカツ!」と「プリパラ」の筐体が隣同士にあることで、子供たちの選択肢が増え、「プリパラ」に人が並んでいたから、今日は「アイカツ!」で遊ぶ……とかその逆もあったので、相乗効果があったんです。
大庭さん 「アイカツ!」と「プリパラ」のどっちが好き?と子供にアンケートした時、「どっちかが好きじゃないといけないの?」と言われたことがありました。子供は両方で遊んでいたんです。違う会社であることも意識していない。「プリパラ」「アイカツ!」は同じテレビ東京でアニメを放送していましたしね。
原田さん 「アイカツ!」で遊んでいた子供も友達が「プリパラ」をやっていたら一緒にやっていたんですよね。もちろん、一途な子供もいたとは思いますが(笑)。
◇根底に流れているものが共鳴した
--原田さんと大庭さんは放送・稼働当時、交流はあった?
大庭さん 「ちゃおフェス」などのイベントで顔を合わすことがありますし、話しかけないのが不自然な距離にいた時に話しかけました。プリズムストーン原宿のオープンの時に、原田さんがワインを持ってきたこともありました。しゃれたことをしますよね(笑)。
原田さん 僕はバンダイで、ビデオゲームなどのプロデュース業務が長かったんです。ゲーム業界は他社とも割と仲がいいですからね。
大庭さん 話しちゃいけないことはもちろん話さないんだけど、嘘はつかない。「ちゃおフェス」の発表前日に、食事しながら発表することを言い合ったこともありました。
原田さん 前日だからね。発表の内容を知っても手の打ちようがないですし。
--お互い切磋琢磨しながら続けてきた?
原田さん そうですね。こんなに続けられているのは本当にありがたいですね。ファンの皆さんの支えと、アニメチームのおかげです。そういえば、当時から大庭さんは、二本立ての映画をやりませんか?と言っていましたよね。何を言ってるんだ!?と思っていた(笑)。
大庭さん マンガ、アニメとやって、次は映画だよなと思っていた。でも、映画は大変そうだから、昔の“まんがまつり”みたいに二本立てにしたらいいと考えたんです。「ちゃお」さんの冠でやればできるかもしれない。ただ、その場で気持ちいい話をしていただけで、そういうタイミングではなかったですよね。
--業界的にあり得ないってことだった?
原田さん 今だったらスマホゲームでいろいろな作品同士がコラボすることが当たり前になっているから、ない話ではないと思うんです。当時はなかなかなかったけど。
大庭さん 今回のコラボの話がきた時、「キラッとプリ☆チャン」の5周年のバーチャルミュージカルや「プリパラ」の10周年展をやり切って、感慨深くなっていた時期だったんです。ちょっと油断してたところに依田さん(タツノコプロの依田健プロデューサー)から話がありました。僕はやりたいけど、誰かが冷静な判断をして、ダメと言うかもしれないと思っていたんです。ただ、誰も言わなかった(笑)。
原田さん その前に「Dream Collaboration Festiva(ドリコラFes,)」(アイカツ!とプリティーシリーズのコラボ)があったのが大きかったんだと思います。
--劇場版アニメには二人も関わった?
大庭さん 企画の段階で、誰を出して、歌わせるかなども考えました。それぞれの人数を合わせたり、組み合わせを考えたり、いろいろなパターンを考えました。
原田さん 結局はファンの方に納得していただかないといけない。「アイカツ!」ばかり出したいとか、その逆だったり、そういうことは全くなかったです。
大庭さん ハマることを最優先にしようとしたんです。さっきの話にもありましたが、子供たちが両方で遊んでいたことが大きかったと思います。
原田さん 「アイカツ!」は「それもまたアイカツだね」と否定をせずに受け入れるから、成立するんですよ。
大庭さん みんな違ってもいい。「み~んなトモダチ、み~んなアイドル」だから、「プリパラ」にとって「アイカツ!」の子たちも友達でアイドルなんです。
原田さん 根底に流れているものが共鳴した。
大庭さん 同じ場所で遊んでいた子供たちが、劇場に再び集まっている。もしかしたら、劇場で隣に座っている人は、子供の頃、隣で遊んでいたかもしれない。それは、奇跡の出会いだと思います。
「アイカツ!」と「プリパラ」はライバルではあるが、高め合いながら10年以上走り続けてきた。コラボによってライバルが共鳴して一つになった。それはファンも同じだ。「アイカツ!×プリパラ THE MOVIE -出会いのキセキ!-」は、まさに“奇跡のコラボ”になった。
提供元:MANTANWEB