ウィッチウォッチ:全力の「うろミラ」回は「よく分からない」が肝 原作ファンが喜んでくれるアニメに 谷口英久Pインタビュー

配信日:2025/08/16 7:01

「ウィッチウォッチ」の一場面(C)篠原健太/集英社・ウィッチウォッチ製作委員会・MBS
「ウィッチウォッチ」の一場面(C)篠原健太/集英社・ウィッチウォッチ製作委員会・MBS

 「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の篠原健太さんの人気マンガが原作のテレビアニメ「ウィッチウォッチ」。アニメは、パロディーも含めたテンポのいいギャグシーンや、アニメならではの構成がファンの心をつかみ、人気を集めている。7月6日放送の第14話「うろんミラージュ 第119話『ファジー討伐-4』」では、劇中に登場するマンガ「うろんミラージュ」がアニメ化されたことも話題になった。アニメを手がけるのは「映画『五等分の花嫁』」「魔法少女マジカルデストロイヤーズ」などで知られるバイブリーアニメーションスタジオだ。同スタジオの谷口英久プロデューサーに制作の裏側を聞いた。

 ◇熱量の高いスタッフ マンガの勢いをなくさない構成

 同作は「SKET DANCE」「彼方のアストラ」で知られる篠原さんのコメディーマンガ。「週刊少年ジャンプ」で2021年2月に連載を開始した。魔女になるべく修行中の若月ニコと、幼なじみで鬼の力を持つ高校生・モリヒトの同居生活が描かれる。モリヒトには予言された災いからニコを守る使い魔としての使命がくだされ、前途多難でまか不思議な日々が始まる。

 バイブリーアニメーションスタジオでは、アニメ化の企画が進行する前から、谷口さんはじめ原作ファンのスタッフが多く、「ぜひ携わらせていただきたいと立候補させていただきました」と語る。

 「原作を読んでいる時から、キャラクターたちが可愛くて、かつ面白い掛け合いが多いと感じていました。話数が進むにつれてキャラクター性がどんどん立ってきて、それにつれて面白さも増していくのが、この作品の魅力と思ってます」

 アニメは、「キラッとプリ☆チャン」「トニカクカワイイ」などで知られる博史池畠さんが監督を務め、「がっこうぐらし!」「妖狐×僕SS「かつて魔法少女と悪は敵対していた。」などの飯塚晴子さんがキャラクターデザインを担当している。

 スタッフの起用については「『ウィッチウォッチ』をアニメ化するのであれば、懇意にさせていただいている池畠監督がかなり得意分野だなと、これはうまくやれる可能性が高いのではないかと思い、お願いしました。飯塚晴子さんは、女の子のキャラクターや華奢なキャラクターを柔らかい線で、優しい絵として描かれる方なので、そういった要素が『ウィッチウォッチ』にあると、いいスパイスになるかなというところもあり、ご依頼しました。サブキャラクターデザインとして参加されている沢友貴さん、杉村价秋さんも『ウィッチウォッチ』が好きで、すごく熱量がある方たちなので、このスタッフでいけるんじゃないかなと考えました」と力強い布陣で挑んだ。

 アニメ化において重要視したのは「マンガの勢いをなくさないこと」だった。

 「この作品においてはテンポ感が命なのだと、マンガを読んでいる時から感じていました。特に構成の際には、1話内に原作のエピソードを組み合わせて、テンポよく間延びしないように調整することを大切にしました。1クール目で新しいキャラクターが次々と登場する中で、見ている皆さんにとってはキャラクターに対する解像度が高くない状態にある。そんな中で原作の第1話から順番に放送していくと、キャラクターの印象が薄れてしまう恐れがあったので、新しいキャラクターが登場する回はそのキャラクターのエピソードを2、3個詰め込んで、魅力を知ってもらおうと考えました。これがうまくいってるんじゃないかなという感触はあるので、シリーズ構成の赤尾でこさん、池畠監督はじめ、皆さんのお知恵を拝借できたところも強くあったのかなと思っています」

 ◇リサーチを重ね、ファンが喜ぶキャラクターデザインに

 個性あふれるキャラクターたちも魅力だ。キャラクターのビジュアル面では、「原作の読者の方たちが求めている『ウィッチウォッチ』をちゃんと届けられるのか」を重視し、試行錯誤を重ねたという。

 「やはり原作から大きくずらしすぎてもいけない。その上で今のトレンドの手法も使って、ブラッシュアップし、さらにいい形を探れればと考えました。原作の絵をそのまま拾うというよりは、髪の毛の処理や目のハイライトの入れ方を工夫しました。色に関しても、原作のイメージプラスαで、より映える形をみんなで模索していきました」

 キャラクターデザインにおいては、原作ファンの声もリサーチしたという。

 「途中から原作にどれだけ寄せていくのかというところが、すごく重要になってきました。そこで、集英社さんのファンの方からのアンケートや、SNSでのファンの方の篠原先生に対する質問など細かいところも見ていきながら、ファンの方がどんなところに目を向けていて、気にしているのだろう?と。例えば、ファンの方がニコ、カラ、クックの名前の由来を篠原先生に質問していたのですが、先生からは『オノマトペです』と。ニコはニコニコ笑っている、カラはカラカラ笑っている、クックはクククッと笑っているからだと。では、そういう笑い方を自然にできるような形のデザインにしたほうが求められているものになるかもしれないと、そういったところに力を入れました」

 篠原さんの考え、ファンの声をアニメの絵に落とし込む作業を丁寧に重ねたからこそ、よりキャラクターが魅力的に映るのだろう。

 ◇「うろミラ」回は「やるならとことん!」 「よく分からないまま」制作!?

 「ウィッチウォッチ」は、魅力的なキャラクターが数多く登場する中、第9話では、英語の教科書の「ニューホライズン」「ニュークラウン」風のキャラクターが登場したり、第18話では、キャラクターたちがモリヒトが幼い頃に描いたマンガのキャラクターに“変身”したりと、さまざまな画風のキャラクターが登場する。

 「『ウィッチウォッチ』は、そうした違和感が面白い部分もあります。英語の教科書や、第18話でキャラクターたちがモリヒトが描いた絵になってしまうところも、ミスマッチというか、作品の世界観からうまく画面に落とし込めるかどうかは難しいと思いますが、その普通じゃない部分、ほかのアニメではなかなかやっていないような面白いアプローチができるのはすごく楽しいです。原作が面白いからこそ、アニメでもいい効果が出ているんじゃないかなと」

 「ほかのアニメではなかなかない」というと、第14話「うろんミラージュ 第119話『ファジー討伐-4』」も話題になった。劇中に登場するマンガ「うろんミラージュ」が“ざっくり”ではなく“がっつり”気合を入れてアニメ化された。「うろんミラージュ」のためにキービジュアルのほか、主題歌も作成され、音楽ユニット「Who-ya extended」がオープニングテーマ「Bitter end」、シンガー・ソングライターのLEOさんによるソロプロジェクト「ALI」がエンディングテーマ「FLASHBACK SYNDROME」を手掛けた。げそいくおさんが絵コンテを担当するなど特別なエピソードとなった。

 「オープニング、エンディングを『うろミラ』用に作ったのは、すごくこだわったところです。ほぼほぼ1回限りのために作ったものなので、普通だったらやらないことですが、『やるならとことんやろう!』と。おふざけと言えばおふざけなんですけど、そういったことも全力でやろうと。スタッフもすごく楽しんでやってくれていました」

 「うろミラ」は、アバウトな設定、曖昧なセリフ、煙に巻く演出、思わせぶりで確定的でない、どうとでも取れる表現が多用されるのが特徴で、「分からないことが多すぎる」というその難解さから考察好きの熱狂的読者もいる……という設定の作品だ。アニメの「うろミラ」回は、いい意味でスタッフも「よく分からないまま」制作したのだという。

 「原作でも『うろんミラージュ』の回がそんなに多いわけではないので、設定からして分からないことだらけで(笑)。ただ、この作品の特徴として『何がなんだかちょっとわからない』というところがあるので、制作側も『分からないまま作ったほうがいいものになるんじゃないか」と(笑)。僕たち自身、キャラクターが何を言っているかよく分からないんだけど、すごく画面が決まっている、なんか格好いい、という。全てを『ふんわりさせたい』という意図があったので、背景もボカしているんです。見てくださった方が『なんだかよく分からなかったけど、ちょっといいものを見れたね』と思ってくれたらいいなという狙いがありました」

 原作で「うろんミラージュ」を読んだ人の読後感に沿うようにアニメも制作したといい、「受け手も作り手も『よく分からない』というところが、面白く作用するんじゃないかなと思いました」と語る。

 ◇バイブリーアニメーションスタジオの魅力 チャレンジングな姿勢

 「ウィッチウォッチ」では、オープニング、エンディング映像もバイブリーアニメーションスタジオが制作している。例えば、1クール目のオープニングは、絵コンテ・演出を担当した石谷恵さんは「篠原先生のマンガやイラストを見ていく中で、石谷さんが大学時代に制作されていた作品の雰囲気と合うかなとご依頼させていただいた」という。1クール目のエンディングと2クール目のエンディングは同スタジオのURAさん、2クール目のオープニングは川瀬まさお副監督がそれぞれ担当し、「作品の魅力を凝縮した映像」を目指したという。

 「バイブリーアニメーションスタジオでは、基本的に自社で全ての作業ができる形になっています。スタッフ間で細かい打ち合わせができますし、何か困ることがあれば気軽に相談し合える場が設けられるところが強みかなと。それが作品の良さにもつながっていっていると感じています」

 挑戦的な試みも多いアニメ「ウィッチウォッチ」において、その強みがより生かされており、「スタッフも若い方が多く、チャレンジングなことを率先的にやってくださるので、すごく心強いです」と語る。

 最後に今後の見どころを聞いた。

 「2クール目の終盤は、『ウィッチウォッチ』って何なんだろう?というところにも関わってくるようなエピソードが描かれます。原作ファンの方からも『ここがアニメになるんだ』と楽しんでもらえるようなお話をご用意していますので、楽しみにしておいていただけたらうれしいです」

提供元:MANTANWEB

この記事をSNSで共有する

新着ニュース記事

人気のニュース記事

新着の診断コンテンツ

ショート漫画の新着記事

インタビュー・取材の新着記事

コラムの新着記事

めちゃマガで人気の記事

copyright(C)2016-2025 アムタス > 利用規約

サイト内の文章、画像などの著作物は株式会社アムタスあるいは原著作権者に属します。文章・画像などの複製、無断転載を禁止します。

  1. めちゃコミック
  2. おすすめ無料漫画コーナー
  3. めちゃマガ
  4. ニュース
  5. ウィッチウォッチ:全力の「うろミラ」回は「よく分からない」が肝 原作ファンが喜んでくれるアニメに 谷口英久Pインタビュー

めちゃマガとは?

電子コミックサイト「めちゃコミック」がお届けする、無料で読めるアナタの漫画情報マガジンです。

漫画がもっと面白くなった!

みんなにオススメしたい作品が見つかった!

漫画の新しい読み方に気づいた!

人生の1冊にめぐり合えた!

こんな運命の出会いをアシストできるように、独自の視点でたくさんの作品を紹介していきます。

【公式SNSでも情報を配信中!】

めちゃコミックとは?

CM・広告や口コミで評判の国内最大級・電子書籍サイトです。

テレビや映画で話題の最新人気漫画から定番作品、無料立ち読みまでラインナップも充実!

いつでもどこでも気軽に漫画を楽しめる毎日を提供します。

※めちゃコミックは、docomo / au / SoftBankの公式サイトです。

めちゃコミックについて詳しく見る