CITY THE ANIMATION:細かすぎて伝わりにくいこだわり 漂うインテリジェンス 石立太一監督インタビュー 

配信日:2025/07/27 7:01

「CITY THE ANIMATION」の一場面(c)あらゐけいいち・講談社/CITY THE ANIMATION 製作委員会
「CITY THE ANIMATION」の一場面(c)あらゐけいいち・講談社/CITY THE ANIMATION 製作委員会

 「日常」などで知られるあらゐけいいちさんのマンガ「CITY」が原作のテレビアニメ「CITY THE ANIMATION」が、7月からABCテレビ、TOKYO MXほかで放送されている。アニメ「日常」と同じく京都アニメーションが制作し、同社が新作テレビアニメ企画を手掛けるのは約6年ぶりとなることも話題になっている。監督を務めるのは「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」などで知られ、「日常」に副監督として参加した石立太一さんだ。シュールでありながら、緻密な構成が魅力の同作をどのようにアニメで表現しようとしたのだろうか? 石立監督に制作の裏側を聞いた。

 ◇ギャグではなくコメディー

 「CITY」は「モーニング」(講談社)で2016~21年に連載され、現在カムバック連載中のマンガ。大学生・南雲美鳥やにーくら、泉わこなど普通の“CITY”に住むちょっと楽しい人々の生活を描いている。

 石立監督は「あらゐさんの作品は、読み進めるほど面白みや味わいが増してくるんです。読み進める中で、この作品の主人公は“CITY”なんだ……と受け取り、すごい!と勝手に感嘆しながら読んでいました」と純粋に読者として同作を楽しんでいた。

 アニメ化するにあたり、“笑い”について考えた。

 「くすっと笑える原作で、笑わせなきゃいけないというところに重きを置きすぎると失敗すると思っていました。マンガだからこその見せ方もあって、アニメにした時、どうしてもマンガに負ける瞬間があるかもしれない。僕を含めてあらゐさんの作品が好きな人は、この世界観を味わいたい、浸りたいと思っている。ギャグではなくコメディーだと考えています」

 石立監督は「ギャグとコメディーの違い」をどのように考えているのだろうか?

 「あえて使い分けるとしたら、頭を空っぽにして、腹を抱えて笑えるのではなく、コメディーはちょっとクスッとするようなイメージで、笑いの中にインテリジェンスのようなものも感じる。考えさせられたり、知的好奇心をくすぐるものだと考えています。僕自身、年を重ねて、チャップリンの無声映画の楽しみ方が分かるようになったところがあって、あらゐさんの作品にも同じようなものが流れているところがあると思っています。素直に日曜の夜に見て、クスッと笑っていただく楽しみ方もあるのですが、これが面白いと思えた方が面白くないですか?と見ている方の感受性を刺激したい気持ちもあります」

 ◇原作を丁寧に再現する

 「CITY THE ANIMATION」は、マンガがそのまま動き出したかのような印象も受ける。

 「あらゐさんとは、マンガはマンガ、アニメはアニメで、せっかくメディアが変わるんだから、もっと面白くできるんじゃないか?という話をしていました。美術監督やキャラクターデザインを含めてスタッフはある意味、あらゐさんから挑戦状をたたきつけられて、あらゐさんをびっくりさせたいと思っていました。例えば、背景は今のルックにたどり着くまでに紆余曲折がありまして、テクスチャーを貼ってみたり、模様を入れたり、いろいろチャレンジしようとしたのですが、あらゐさんの世界観の味わいには到達できず、もうマンガにしよう!と原作を丁寧に再現する方向に舵を切りました。あらゐさんをどれだけびっくりさせるかを考えていたので、ちょっと悔しいんですけど(笑)」

 「原作を丁寧に再現する」というのは、それはそれで難しいはず。あらゐさんの作品は絶妙なバランスで成り立っているところもあり、バランスが少しでも崩れると、成立しないところもあるように感じる。

 「原作の世界観を徹底的に再現することになり、何がその世界観を成り立たせているのか?と自分たちなりに考え、ルール化していきました。例えば、伝わりにくいところですが、背景はキャラクターの線よりも絶対に細くするというルールを作りました。アニメーション制作は分業なので、その辺りのバランスを取るのが難しいところもあるのですが、徹底しました。原作と同じように、地面の影を線で表現しました。それをアニメにした時、動きがあるので、難しいところもあるのですが、そこをルール化しました。そういうルールがいっぱいあって、迷うことなくできたところもあります。見ている人には伝わりにくいんですけどね」

 ◇どうせやるなら一番楽しいやつがいい!

 実は話数によって全体の尺が違うなど、「CITY THE ANIMATION」は挑戦的な作品でもある。こだわりは細かすぎて伝わりにくいかもしれない。ただ、こだわりを積み重ねることで、「CITY THE ANIMATION」の独特の世界が生まれているのは間違いない。

 「#1の南雲のセリフに『どうせやるなら一番楽しいやつがいい』とありますが、あれが答えだと思っているんです。それを作品で体現していけばいい。キャストさんにも、南雲のこのセリフがこの作品の概念だとお伝えしました。南雲は『楽しいこと』について『いっぱいありすぎて選べねえ』と言っていますが、その“いっぱい”にチャレンジしていこうとしました。後半にいけばいくほど、チャレンジは増えているので、楽しんでいただきたいですね」

 「楽しい」ことを大切にしたので「大変なことはそんなになかった」とも話す。

 「弊社のスタッフもそうですし、キャスト、音楽、音響……といろいろな方々の“楽しい”を合体させた。それを受け入れてくれる作品の懐の広さに救われました。苦労よりも“楽しい”が勝っていました。子供からお年寄りまで楽しんでいただける作品になっていると思います」

 「CITY THE ANIMATION」は、さまざまな“楽しい”を感じられるアニメになっている。原作と同じく見れば見るほど面白みや味わいが増してくる。頭を空っぽにしても楽しめるが、細かなところに目を向けると気付くこともあるはずだ。

提供元:MANTANWEB

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