早見沙織:アニメ「雨と君と」インタビュー 収録は「濃密な時間」 丁寧、繊細に 優しく美しく

配信日:2025/07/05 10:01

「雨と君と」の一場面(c)二階堂幸・講談社/雨と君と製作委員会
「雨と君と」の一場面(c)二階堂幸・講談社/雨と君と製作委員会

 「ヤングマガジン」(講談社)で連載中の二階堂幸さんの人気マンガが原作のテレビアニメ「雨と君と」が、テレビ朝日の深夜アニメ枠「NUMAnimation(ヌマニメーション)」で7月5日から放送される。雨降る夜に出会った小説家の女性・藤と“1匹”のほっこりと尊い日常が描かれ、人気声優の早見沙織さんが藤を演じる。早見さんは「濃密な時間」だったという収録について聞いた。

 ◇ここでしか味わえない独特の空気感

 早見さんが演じる藤は、マイペースで、口数こそ少ないが感受性が豊か。ある梅雨の雨の日、段ボールに入った“君”と出会い一緒に暮らすことになる。“君”は人の言葉を理解し、フリップに文字を書いて自分の意思を伝えることができる。藤は、“君”のことを芸達者な雑種犬だと思っている。早見さんの出演が発表された際に「あまりの物語の美しさと絵柄の繊細さに心が揺さぶられました」とコメントしていた。

 「魅力がたくさんあるんです。私が最初に作品と出会ったのは、原作PVの収録でした。その時はアニメ化の話は全然知りませんでした。短い映像で、セリフも少なかったのですが、一つ一つの言葉がすごく印象に残っています。私が好きな要素の一つは、四季の移り変わりをとても大切に丁寧に描いているところです。四季を一人で過ごしてきた藤が“君”と一緒に過ごす中で、見えるものが鮮明になったり、何かに気付けるようになったり、四季の捉え方が変わっていく。それがとても美しくて、素敵なんです。もしアニメ化されることがあったら、オーディションに呼んでいただけたらうれしいなあという思いをずっと抱えていました」

 まるで一目ぼれのようだ。早見さんは「雨と君と」の世界にすっかり魅了された。

 「アニメのオーディションの話をいただき、資料をいただいた段階で、緊張していました(笑)。ドキドキしていましたが、気合を入れて臨みました。藤役が決まったとご連絡をいただいた時はもううれしくて。思い返せば、それが濃密な時間のスタートでした」

 アニメでは、心の動きが丁寧に描かれており、繊細な演技が求められるはずだ。収録は“濃密”だった。

 「この作品に流れる空気を言語化するのは難しいのですが、ここでしか味わえないこの独特の空気感を映像と音で表現しようとしていて、すごく繊細なんです。それが肌で分かるような現場でした。藤は感情の表出の幅がそんなに広くありません。その中で、感情を表現する繊細さが求められます。“君”との出会いによって、少しずつ変化していきます。そこを丁寧に描いていきたいという思いがあり、毎回すり合わせながら収録していました」

 早見さんは「藤は声のボリュームが小さいんです」と続ける。

 「小さな声で話すのは彼女の個性ですし、その中でどう表情を付けていくかを探りました。音響監督の吉田(光平)さんは本当にプロフェッショナルなので、全幅の信頼を置いて、相談しました。音響ブースで、収録したセリフを聞く機会をいただきました。収録を一時中断することになるので、演じた直後に自分のお芝居を確認させていただく機会はあまりないのですが、みんなで一緒に作品を作っていく上で、思いが重なり合い、そういう時間が生まれたんです」

 ◇会話になっていない方がいい?

 「雨と君と」の原作を読んでいると、優しい気持ちになったり、ほっこりしたりする。早見さんは収録でも“優しさ”を意識していたが、一筋縄にはいかなかったようで……。

 「優しい気持ちになってしまうんですよね。優しく、美しい作品ですから、自然と気持ちがほんわかしてしまいます。収録の序盤に『“君”に対して優しすぎる』というディレクションをいただくことがありました。先生からは『優しいお姉さんと可愛い動物の物語ではなくて、不器用でちょっととげのある女性を可愛い動物が中和してくれる』というお話もありました。たしかに、藤は辛辣(しんらつ)なことを言っていますし、“君”がいることで和らいでいくところが、この作品の面白さなんです」

 藤以外のキャラクターも個性的だ。

 「ほかのキャラクターの個性がすごく強くて、監督が『バラバラの方向を向いているけど、その方向を修正することなく、みんな生きていられる世界』とおっしゃっていました。多様さが受け入れられている世界というのが、この作品の素晴らしさだと思います。音響監督からも『会話になっていない方がいい』というお話がありました。 みんなが同じ方向で盛り上がるのではなくて、それぞれ自由だけど、着地している。『会話になりすぎている』というリテークもありました」

 麦穂あんなさんが“君”を演じる。“動物声優”と呼ばれることもある麦穂さんが“君”をどう演じるのか。

 「動物の表現も素敵なんです。以前、『終末のイゼッタ』でドロテというワンちゃんを演じられていた時、共演させていただいたのですが、すごく驚きました。本当にワンちゃんがいますよね?と現場が騒然としまして。麦穂さんは、あらゆる動物を声で表現されるプロフェッショナルです! 動物の研究者みたいなんです。“君”のリアルなところ、動物離れしている行動を絶妙なバランスで演じられていて、本当に素敵です。作中に登場する動物は大体、麦穂さんが演じています」

 ◇動物からしか得られない癒やし

 動物の思い出を聞いてみると「大好きです!」と目を輝かせる。

 「うさぎをずっと飼っていましたし、動物からしか得られない癒やしがあると思います。藤のように自分のペースで生きていたけど、動物と過ごすことで、生活のリズムが変わっていくところにも、共感していただけるはずです。動物は、自分の知らなかった表情を引き出してくれます。この作品でも家を出る、家に帰るという描写が描かれていますが、その際の“君”がすごくいいんですね。そこもポイントです」

 うさぎ以外では、子供の頃にメダカを飼った経験もあったという。

 「小学校で稚魚をもらって、大きな水槽で育てていました。当時、ベッカムが流行していたので、メッカムという名前を付けていました。」

 動物との生活は癒やしだけでなく、“気付き”も与えてくれる。藤は“君”と生活する中で、どう変化していくのか。「深夜に癒やしとして見ていただいてもいいでしょうし、時間帯や季節、天気によって見え方が変わってくると思います。雨が降っている時、外で見ても素敵ですよね」と話す早見さん。「雨と君と」は、癒やしや気付きを与えてくれるアニメになっているようだ。

提供元:MANTANWEB

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