名塚佳織:「薬屋のひとりごと」インタビュー 抑圧されてきた翠苓 複雑な思いを表現(※ネタバレあり)

配信日:2025/06/11 7:01

「薬屋のひとりごと」の一場面(c)日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会
「薬屋のひとりごと」の一場面(c)日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

 日向夏さんのライトノベルが原作のテレビアニメ「薬屋のひとりごと」。第1期に登場した外廷で働く薬草に詳しい謎の官女・翠苓(スイレイ)が第2期に再登場し、正体が明らかになったことが話題になっている。翠苓の正体は、子翠(上級妃・楼蘭妃)の異母姉で、主人公・猫猫を狐の里に連れ去る。翠苓を演じるのが「交響詩篇エウレカセブン」のエウレカ役や「ONE PIECE FILM RED」のウタ役などで知られる人気声優の名塚佳織さんだ。名塚さんは、謎多き翠苓をどのように演じているのだろうか?

 ※5月30日放送の第44話までのネタバレを含みます。

 ◇感情を出さないが…

 「薬屋のひとりごと」は、ライトノベルがヒーロー文庫(イマジカインフォス)から刊行されており、コミカライズも人気を集めている。原作のシリーズ累計発行部数は4000万部以上。舞台は、とある大陸の華やかな後宮で、毒見役の少女・猫猫が、美形の後宮管理者・壬氏と共に陰謀やウワサのひしめく後宮で起きる事件に巻き込まれていくことになる。テレビアニメ第1期が日本テレビ系で2023年10月~2024年3月に放送された。第2期が日本テレビのアニメ枠「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」で放送中。

 第1期で翠苓は、官女として働きながら子の一族のための諜報工作活動を行う。自死を装って、一度は姿を消すことになる。謎多きキャラクターではあるが、第1期で強烈なインパクトを残した。

 「最初、つかみどころがなくて、どういうふうに演じるのか迷ったところもありました。第1期では、彼女は印象を残さないつもりで動いていたと思うのですが、子翠と同じようにどこか気品を感じる部分もあります。祖父である先帝の血を受け継いでいますし、品格が少し漏れてしまった方がいいのかな?とは感じていました。『あまり感情を出さないでほしい』というディレクションもありました。猫猫と話していても、何かを言われても動じない。思うところがあっても、表情や言葉には出さないし、動揺したりするところは基本的には見せません。どういうつもりなのか分からないし、切れ者なのか、そうでないのかも分からないようにしつつ、印象も残していかないといけないので、さじ加減を丁寧に相談しながら演じていました」

 第2期では宦官として再び後宮に潜伏し、猫猫をさらう。子翠との関係、生い立ちも明らかになる。

 「身長もあって、目鼻立ちもはっきりしていて、見た目としては、強そうな印象を受けていましたが、抑圧された中で生きてきて、その内面は見た目と正反対。心が押し込められたところで生きてきた人間だったことが見えてきます。言葉数が少なかったのは、いろいろなことを隠して、バレないようにしていたからかもしれません。昔からあまり目立たないように生きてきたんでしょうね。どこにでも染まって、任務から外れないようにして生きていく術を身につけていたところが見えてきます。第2期では、自分で考えて動いているというよりも、指示されたことを全うしようとしていることも分かってきます。その中で、猫猫を助けたいという気持ちもあったりしますが、結局動くことができない。演じていてそういうもどかしさがありました」

 楼蘭(子翠)の母である神美に逆らえず、抑圧されてきたことも見えてくる。はかなさ、憂いも感じるようになる。

 「猫猫を助けたいけど、幼少期からさげすまれ時には暴力も振るわれていた神美への恐怖心があって、強く出ることができない。収録では最初、割と強めに出たのですが、『音にそこまで気持ちを乗せないでほしい』というディレクションもありました。自分の力では、何かを変えることができないことが分かっているので、強く言うことで、より強い罰に発展する可能性もあるという恐怖心がある。私自身の気持ちとしては、言い返したい気持ちになりますが、翠苓はそうではない。彼女の悲しい部分がどんどん見えてきます。演じていて面白いところでもあります」

 ◇子翠は大好きだけど

 異母妹・子翠との関係も複雑だ。しかし、姉妹の絆のようなものも垣間見える。複雑な思いを表現している。

 「本当は子翠が大好きで、感謝もしているし、もっと仲良くしたい。けど、自分から近付いていくと子翠に迷惑をかけてしまうという気持ちが勝っているように感じています。本当は気持ちを返したいし、思いっきりうれしい顔を見せたいけど、そうしない方がこの距離感、二人の関係性を継続できることを肌で感じているのでしょうね。私にも姉がいるので、姉妹がお互いに感じる気持ちは少し分かる気がします。姉は『お姉ちゃんなんだからしっかりしなければ』と頑張ることが多くて、妹は自由奔放に生きている。私は、姉が大好きだったのですが、姉が反抗期の時期、姉はおそらく妹の私のことをうっとうしいと感じていたんです。口を聞いてくれない時期もありましたが、それでも私は姉が大好きで、尊敬していましたし、姉も私を嫌いなわけではなかった。そんなふうに姉妹には言葉を交わさなくても通じる何かがある気がするんです。子翠と翠玲も常にお互いを意識し合い、ほどよい距離感を保っている印象があります」

 神美も重要なキャラクターだ。深見梨加さんの演技によって、神美が登場すると、ピリッとした空気が流れるようにも感じる。

 「お芝居はリアクションが一番大事だと思っていて、受け取った相手の反応で変わってくるものですが、神美が言葉を発した瞬間に空気が凍り、あの緊張感のある雰囲気がスタジオ全体に流れ、みんな自然とそれに反応していた気がします。息を吸っただけでも怒られるような空気感があったので、芝居中は彼女の言葉を一言一句を聞き逃さないよう常に気を張っていました。その空間をみんなで作れたのが演じていてすごく面白かったです。あの緊張感がテレビを通して皆様にも伝わっていたらうれしいです」

 ◇瀬戸ちゃんに引っ張ってもらった

 名塚さんは翠苓役として「薬屋のひとりごと」への出演が発表された際、「猫猫がとても魅力的で、一瞬で世界に引き込まれました」ともコメントしていた。

 「本当に可愛いんです。彼女独特の一線引いてる感じがあって、“ひとりごと”も大きな魅力です。原作はもちろんですが、あおちゃん(猫猫役の悠木碧さん)が演じることによって、より面白くなるんです。彼女の“ひとりごと”をずっと聞いていたくなるような心地よさもあって、素晴らしいです。現場にいても常に楽しいですし、何度聞いても飽きない。さすがです! 言葉数の少ない翠苓のキャラクター性が見えてくるのも、猫猫の“ひとりごと”があるからこそだと思います。やっぱり猫猫は魅力的です」

 6月6日放送の第45話は「子翠が行動するエピソード」になった。

 「子翠の笑顔の奥にはいろいろな考え、思いがありますし、演じている瀬戸(麻沙美)ちゃんも苦しかったと思います。私は、瀬戸ちゃん演じる子翠に引っ張っていってもらったところが多々ありました。そしてこれからも子翠と翠苓は周りに翻弄されていきます。そんな二人を最後まで見届けていただけるとうれしいです」

 運命に翻弄される翠苓と子翠はどこに向かうのか……。姉妹の動向から目が離せない。

提供元:MANTANWEB

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