櫻井孝宏:「呪術廻戦」インタビュー 夏油傑は「闇落ちしたとは思っていない」 悲哀を飛び越える色気
配信日:2025/05/24 8:01

「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された芥見下々(あくたみ・げげ)さんの人気マンガが原作のテレビアニメ「呪術廻戦」の第2期「懐玉・玉折」の総集編となる「劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折」が5月30日に公開される。「懐玉・玉折」は、2023年7月から放送された全5話のエピソードで、“最強の2人”五条悟と夏油傑の呪術高専時代の“もう戻れない青い春”が描かれた。夏油傑役の櫻井孝宏さんに「懐玉・玉折」への思い、夏油傑の魅力を聞いた。
◇夏油が感じていた呪霊の味 「あれ、すごく嫌なんですよ」
「懐玉・玉折」は、五条と夏油が、不死の術式を持つ呪術界の要・天元と同化しなければならない星漿体という運命を背負う少女・天内理子の「護衛」と「抹消」という任務を課されるところから始まる。理子の暗殺をもくろむ伏黒甚爾との戦いの末、“最悪の事態”が起こり、五条と夏油に大きな変化をもたらすことになる。
櫻井さんは、「懐玉・玉折」で描かれた五条と夏油達の青い春について、「すごく切なくて、苦しくて、どうしても彼らを切なく見てしまうのですが、それでも大事な時間だった」と語る。
「夏油にフォーカスすると、彼はずっと孤独を抱えていて、彼の現実があったわけですよね。五条に何度も投げかける『呪術は非術師を守るためにある』という言葉は、ほぼ自分に言い聞かせるようなものだったりする。彼は、呪術師として、ある種、選ばれた人間なんですけど、術式自体は、呪霊を自身に取り込むようなギフトとも、呪いとも言えるような術式で。夏油が玉にした呪霊を飲み込む時の味の描写(『吐しゃ物を処理した雑巾を丸飲みしている様な』)があるじゃないですか。あれ、すごく嫌なんですよ。味って結構人間に影響を及ぼしたりすると思うんです。それが全部じゃないですけど、そうした一つ一つを拾っていくと、彼が苦しくなっていく気持ちも分かるな、と」
そんな夏油にとって五条は「つかまるところのような」存在だったのではないかと感じているという。
「対等と言いましょうか。丁々発止のやり取りができる存在がいるというのが大きかったのではないかと。それも、『私達は最強なんだ』が『五条悟が最強』になり、雪だるま式に嫌なことが重なった。私達は、その先も知った上で見ているので、結局、夏油傑としてはうまくいかないわけじゃないですか。十代でそういう境遇であると、結構激しいですよね。改めて『懐玉・玉折』はとんでもないドラマだなと」
◇「彼の人生を否定したくない」 櫻井孝宏が語る夏油傑の魅力
夏油は、結果、最悪の呪詛師となってしまうが、櫻井さんは「私は彼が闇堕ちしたとは思っていない」と語る。「あくまで道をたがえただけなので。今までの考えと価値観が変わった。『呪術は非術師を守るためにある』と言っていたけど、とある任務で、術師が化け物扱いされ、虐げられているのを見て、一気に振り切るという形になった」と感じているという。
櫻井さんは、テレビアニメ第1期、「劇場版 呪術廻戦 0」、第2期でさまざまな“夏油傑”を演じてきた。「劇場版 呪術廻戦 0」でインタビューした際には「今後また夏油を表現することになったとしたら、それはそれで私に呪いがかかったようなものなので、難しくなったなと思っているんですけどね」とも語っていた。今、夏油に対してはどのような思いを抱いているのだろう。
「結局うまくいかない人だから、そこの悲哀はありますね。切なさを感じる人で、その中身を探ると、結構いい人だったり、優しかったり、優等生的だったり、ちゃんとしていたり、そういう言葉がいっぱい出てくる。でも、それを飛び越えた色気みたいなものがあって。五条も夏油もグッドルッキングガイなので、ビジュアルも含めた色気みたいな魅力というか。言葉にするのが難しいような魅力を感じます。格好いいなって。やっぱり彼を“良いもの”としたくなるんですよね。彼の人生を否定したくないというか。彼をできるだけフォローしたい、弁護したい、そういう気持ちが発動してしまう」
夏油を演じる上では、「懐玉・玉折」の高専時代を演じたことで「これまでやってきたものをやっと支えることができた」と感じているという。
「自分の中で発見もありましたが、それはとびきりな発見というよりは、『ああ……』とパッと思って、すっと通り過ぎていくようなささいなもので、それをつぶさに拾ってはいました。『懐玉・玉折』は、話が激しい分、淡い表現、繊細な表現ができたらいいなと思っていたので、そこに注力していました。それが、劇場作品にまで至った今、なんとなく今まで漠然と自分の中であった表現の不安が払拭できた感覚です」
櫻井さんが淡く、繊細に表現した高専時代の夏油傑。劇場でじっくりと感じたい。
提供元:MANTANWEB