押井守監督:「イノセンス」20周年 今だから語れる秘話 「死ぬ思いをした…」

配信日:2025/03/02 16:19

「イノセンス」「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の4Kリマスター版のトークイベントに登場した押井守監督
「イノセンス」「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の4Kリマスター版のトークイベントに登場した押井守監督

 士郎正宗さんの人気マンガ「攻殻機動隊」の劇場版アニメ「イノセンス」「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の4Kリマスター版が上映されたことを記念して3月2日、TOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)でトークイベントが開催され、同作を手掛けた押井守監督とバトー役の声優の大塚明夫さんが登壇した。「イノセンス」は、2004年に劇場公開され、昨年20周年を迎えた。同作の4Kリマスター版が劇場上映されるのは初めて。押井監督は「死ぬ思いをしたので、記憶が飛んだのかもしれません。20年間、何をしていいたんだろう?」「素子が去った後の物語。生きる屍(しかばね)のようになったバトーが素子と再会する。暗号があって、それが再会の合図になっている。それが2カ所に仕掛けられている」と20年以上たった今だから明かせる秘話を語りだした。

 「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」は1995年に公開された。「イノセンス」の企画が立ち上がったのは「きっかけは自分にあったわけではなく、石川(Production I.Gの石川光久社長)に呼び出された。アニメをやっていなかった時期だった。つらいからやめようと思っていた。『(アニメに)戻ってこないと、誰もあなたとやってくれなくなる』と言われた。アニメを作るのは好きだし、合っている。3本の候補があって、その一つだった。やるなら『攻殻』の続編をやってみたかった。終わっていないし、あの後の素子を見たい。残ったバトーは引きずっている。話もすぐできた。脚本も2週間くらいで書いた」と明かした。

 押井監督は「イノセンス」の制作当時について「病んでたな」と語ったこともあった。「アニメの大変さは、基本的に“待つ”つらさ。絵が上がってくるのを待つ。2年半くらいかかった。ずっと待っている。(声優は)明夫さんや(田中)敦子さんとか同じ顔ぶれだからイメージできる。同じじゃない部分がある。どこが変わったかを確かめたい。確かめるまで安心できない。第一声が入って、つながった感じがした。同じキャラクターデザインで同じ声優でも変えないといけない。続編のつらさでも醍醐味でもある。サイボーグが年をとって変わるとは?と考えた。素子のオリジナルの体がなくなった。ゴーストだけになった素子が、バトーにどんな感情を持つのか?を考え続けた。『変わってないわね』というセリフは変わっているから言える」と振り返った。

 「イノセンス」は「難解」と評されることもある。押井監督は「あんまり難しく考えないで、バトーと素子の再会、魂の恋の話というのが、素直な見方になると思う。切ない話なんです。情緒的でウエットでセンチメンタル。能書きが硬いけど、聞き逃してもらって構わない」と話した。。

 公開当時、オーディションに登場する人形の目に「何かが映っているのでは?」と話題になった。押井守監督は「何かが映っている。コンマ1秒もないと思う」と明かした。

 最後に「完成した当初、これ以上の仕事はできないと思った。ある人に『まだまだ若い』とも言われた。20年たっても特殊な観念、情緒は変わらないと思った。切ない部分なんです。人形だったり、犬だったり、人間じゃないものと関わる時にでてくる感情です。その後の仕事でも引きずっていると思う。映画はいずれ死ぬ。でも、この作品は少し寿命が残っている」と思いを語った。

 「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」は、草薙素子ら公安9課(攻殻機動隊)が国際手配中のハッカー、通称・人形使いを追うことになる……というストーリー。全米ビルボード誌のビデオチャートで週間1位を獲得するなど海外でも人気を集めた。2021年9月に4Kリマスター版が公開された。「イノセンス」は、「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の3年後の2032年が舞台の続編で、日本のアニメとしては史上初めて、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出されたことも話題になった。

提供元:MANTANWEB

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