毛死?ねぎ死…?漫画の“死に様・死に方”名シーン集
更新日:2016/09/05 10:00
漫画の登場キャラクターの死。
伝説的なものとして、「我が生涯に一片の悔い無し」のセリフで有名な『北斗の拳』(武論尊・原哲夫/集英社)ラオウの昇天シーン、「あしたのジョー」 (高森朝雄、ちばてつや/講談社) の力石徹は、その死を偲んで実際に葬式が行われたほど。
漫画キャラの死は、物語の区切りやクライマックスなど、ここぞという場面で描かれ、大きな反響を呼びます。それは、読者の思い入れの強いキャラだったり、物語の主要人物であれば尚更。
しかし、そうじゃない場合でも、“キャラの死”という出来事には、何か特別なものが宿っていると思います。それは一体何なのか、様々な形の死から見つけていきましょう。
あなたの心に刺さるのはどの“死に様・死に方”ですか?
毛死、ねぎ死、一風も二風も変わった“死に様”
バジリスク~甲賀忍法帖~
まずは「バジリスク~甲賀忍法帖~」 (山田風太郎、せがわまさき/講談社) から。
巨匠・山田風太郎の時代小説を漫画化したもので、江戸時代初頭、甲賀と伊賀という忍法の二大宗家の生き残りをかけた争いを描いた作品です。
どちらかが全滅するまで、両家の忍者たちが忍術合戦を繰り広げるのですが、塩に全身を溶かしてナメクジみたいになる奴、食道にすごく長い槍を隠し持っている奴、不死の術ができるから全然死なない奴…などなど、どの忍者も人間とは思えないほど怪奇です。
その中で、今回取り上げたいのが、伊賀イチ毛深い忍者・蓑念鬼(みのねんき)さんです。彼は体毛を自由に操って、針のように刺したり、伸ばして締め付けたりして戦います。
この蓑念鬼さん、我先に手柄を立てようとノリノリで敵の寝床を襲うのですが、待ち構える甲賀忍者・室賀豹馬(むろが ひょうま)の、“己に向けられた敵意を相手に跳ね返す”「瞳術(どうじゅつ)」によって体毛が暴走。自身の毛に体中を締め上げられ、無残な“毛死”を遂げます。
毛暴走。鼻毛爆発。
もう何が何だか…。
うわぁ…。
本作は、他にも奇想天外な忍術合戦が目白押しなので、甲賀VS伊賀の戦いの結末を見届けてみては。
おまけに…こちらが「瞳術」です。その目に見た敵意を全て無効にして跳ね返す最強の幻術。大変かっこいいので、つい載せちゃいました。
GANTZ
次は「GANTZ」 (奥浩哉/集英社) です。
死んだはずの人間たちが、変な部屋に集められて、「ガンツ」と呼ばれる変な球体から、地球に潜む宇宙人たちを倒すよう命令されて、頑張るお話。簡単な説明になりましたが、アニメ化・映画化もされ、知っている方は多いと思います。
登場する人間、星人ともに激しい戦いでバタバタと死んでいきます。ここでは、主人公・玄野をはじめとするメンバーたちの記念すべき初陣となった「ねぎ星人編」をピックアップ。
とにかく気弱そうで、ヤクザ風の男ら好戦的な人間たちに囲まれてオロオロ…そうこうしているうちに、ねぎ星人は特殊な銃で撃たれて絶命します。
ああ…なんだか可哀相。「ね…ねぎあげます ねぎあげます」を繰り返すばかり。ねぎに免じて見逃してほしかったのでしょうか。
この後、ねぎ星人と同じようなデザインだけど見るからに凶暴そうな大人(親子だった?)のねぎ星人が登場。敵討ちと言わんばかりに、人間たちはメッタメタに復讐されます。
精神的にやられる! キツイ“死に様”
あとあと引きずってしまうような精神的なダメージを受けるものも少し紹介します。
バトル・ロワイアル
最後の一人になるまで中学生がクラスメイト同士で殺し合うというキツイ内容で、小説・映画ともに物議を醸した「バトル・ロワイアル」 (田口雅之、高見広春/ヤングチャンピオン・秋田書店) 。
生徒たちが次々と散っていく中、“友達と殺し合いたくない”という意思から身を寄せ合い、灯台に立てこもっていた女子グループ6人の死は、悲痛極まりないものでした。
あることがきっかけで、誤解が誤解を呼び、それぞれが疑心暗鬼。「この中に裏切り者がいる!」と、グループ内に取り返しのつかない亀裂が入ります。
そして、とうとう友達同士で銃口を向け合い、銃撃戦に――。
みんなのまとめ役だった学級委員長の内海幸枝さん(右上コマ)。仲間が仲間を銃殺した修羅場で、それでも何とか立て直そうと悲痛な思いで銃を構えます。
「腕ならっ……」と、まだ仲間を思いやる気持ちが切ないですね。彼女たちの悲しい結末は本編で。
賭博堕天録カイジ 和也編
こちらもなかなかキツイ、「賭博堕天録カイジ 和也編」 (福本伸行/highstone, Inc.) から。
毎度毎度、主人公・カイジを苦しめる帝愛グループ(巨大悪徳金融コンツェルン)会長の息子・兵藤和也とギャンブル対決をすることになったカイジ。勝てば巨額のお金、負ければ死…と懲りずに勝負をするのですが、対決前に腹ごしらえをするシーンで事は起こります。
突然、和也が書いた小説『愛よりも剣』を読めと言われるカイジ。この小説に書かれていた「死」はかなりえげつないものでした。
囲おうとしていた女にイケメンとお金一緒にトンズラされた暴力団の組長。二人を捕らえた組長は、ものすごくキツイ刑を執行します。
それがこちら。もう嫌な予感しかありません。
ルールは組長が説明するように、お互い7個ずつ計14個の穴に9本の剣を刺していき、貫通する(致命傷にいたる)穴は5個、残りの9穴は鉄板で塞がれていて、運が良ければ死なずに済む、というもの。
最初のうちは愛の名のもとにイケメンが女を庇い、自分の穴に剣を刺させていたのですが、いよいよ終盤になると、お互い自分が助かりたいだけの醜い争いに。
本当に愛し合い、信頼関係を築いていた二人であれば生還の道もありました。しかし、彼らの業の深さが出てしまったのか、その様は阿鼻叫喚、まさに地獄絵図。
そして、最後の剣が……!!
鉄板で塞がれている穴だったら「キンッ」、そうじゃない場合は「ぬるん・・」。
読み終えたカイジは開口一番、「なんだっ!! この救いのない話は!!」と本を叩きつけて叫びます。まったくもってその通り。
さらに、この話は和也の実体験に基づいているって言うんだから大変。この後、カイジと和也がやるゲームってどんなだよ! と空恐ろしくなるばかりです。
カイジをはじめとする債務者たちが命がけのギャンブルに身を投じる様を描いたシリーズ中、ここまで凄惨に、はっきりと死が描かれたのは珍しく、実に衝撃的なものでした。
ここいらで、だいぶ磨り減ってきたのではないでしょうか? 可愛いチワワ等を撫で回わすなど、自分なりの癒し方法でMPを回復しておきましょう。
悲哀、無念の“死に様”に泣く
星守る犬
人生を失った男とその飼い犬の最期の旅を描く、「星守る犬」 (村上たかし/双葉社) より。
冒頭、朽ち果てた車の中に男性の遺体とそれに寄り添うように犬の遺体が発見されるところから物語は始まります。
男性は死後一年から一年半、犬は死後三ヵ月……この二人に何があったのか、どんな旅路を経てここにたどり着き、最期を迎えることになったのか、その道のりを追っていきます。
持病のために職を失い、妻子にも逃げられた男「おとうさん」に残されたのは、飼い犬の「ハッピー」と少しのお金とワゴン車。わずかばかりの荷物を持って、二人はお父さんの故郷を目指します。
途中、財布を盗まれたり、ハッピーが病気になったり、決して順調な旅ではありませんが、二人仲良く明るく乗り切っていきます。でも、二人の悲しいラストが分かっているだけに切なさも感じます。
このあたりになってくると「もう、やめてくれ~」です。待ち構えていた運命は残酷。お父さんは病魔に襲われ、二人の旅はにっちもさっちもいかない状況に…。
泣ける話が必ずしも名作とは限らないし、動物お涙頂戴モノは世に腐るほど溢れています。しかし、本作は、人と犬の関わりをただただハートフルに見せるのではなく、人間の都合でいくらでも左右される動物の悲哀のようなものもきちんと描かれています。
作品の特徴の一つとして、「ありがとうございます!! おとうさん!!」「さんぽですか おとうさん!!」という風に、犬のハッピーの気持ちが描写されています。それこそ人間に都合のいい解釈かもしれないし、ハッピーが本当にそう思っていたのかは分かりません。 でも、二人は一緒にいて幸せだったと思えるし思いたい、そんな優しい気持ちにさせてくれる作品です。
お~い!竜馬
最後を飾るのは、「お~い!竜馬」 (武田鉄矢、小山ゆう/小学館) です。
幕末の英雄・坂本竜馬の活躍を魅力いっぱいに描いた作品。激動の時代にあって、多くの命が散っていく中、特に印象的だったのが、竜馬と同じ土佐藩の志士・武市半平太の切腹シーンです。
武市は、志士たちを弾圧する土佐藩主・山内容堂に捕らえられ、切腹を命じられます。
志半ばでこの世を去ることになった武市。その無念さを自分の腹を裂く刃に込め、多くは横一文字に切腹するところ、それを連続で三段「三文字の切腹」をやってのけます。
その直後の武市。見届けていた、敵の後藤象二郎と乾退助(のちの板垣退助)はあまりの迫力に後ずさり。
後藤には「た……武市…… みごとであった!!…」とまで言わしめます。
《抜粋》
『幕末の志士たちは、その最期をいかに死ぬか…にこだわった。
切腹においては、もっとも困難である死の恐怖を克服するという、精神力の強さを示すことができる。
半平太は、誰もやれなかったと言われる、横三文字に切り裂くという切腹をし………
誇りと……意地と……無念さを……後藤ら上士に見せつけたのであろう………』
と、漫画の中ですべて語られているので、余計なことは書かないでおきます(職務放棄)。本編で、武市半平太の壮絶な三文字切腹を見届けてください。
色んな種類の死を並べてみると収集がつかなくなりそうでしたが、共通していたのは、どのキャラの“死に様”も、その“生き様”が色濃く表れているということ。
必ずしも良い死に方だけではなく、凄惨なもの、痛ましいものもありました。しかし、そのどれもから、物語から退場するキャラの最後の花道をどう飾ってあげるか、という作者の魂のようなものが感じられました。
そんな風に漫画を読んでみるのも新たな発見があって良いかもしれません。
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作者
小山喜崇
昼は編集者、夜はイラストレーターとして働く。好きな漫画は、吉田戦車や和田ラヂヲ、漫☆画太郎などのギャグ作品。記事タグ
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