「ぼのぼの」の名言集。考える哲学と考えない癒しの融合を見よ!
更新日:2016/08/15 10:00
「ぼのぼの」 (いがらしみきお/竹書房) は、かわいいどうぶつのキャラクター達が繰り広げるほのぼのとした日常と、独特の視点や哲学感とのギャップが魅力的な4コマ漫画です。
一見すると子供向けの画風ですが、その独特な哲学感は深く大人向けな一面も持ち合わせている唯一無二の魅力を持つ作品。
2016年4月からは新作アニメが始まるなど、今注目が高まる漫画作品です。
「哲学」と称され「癒し」を与えてくれる『ぼのぼの』はどのような作品なのか。今回は数々の名言をセレクトして『ぼのぼの』の魅力を紹介していきます。
「ぼのぼの」とは
主人公のラッコのぼのぼのと、その友達のシマリスくんとアライグマくんの三人が繰り広げるほのぼのとした日常。三人はたくさんの場所に出向き、多くの経験をして、思ったことを試してみて、いっぱいのどうぶつ達と出会います。
そしてその「日常」は、現代社会で急ぎ足の私達にとってはあまりに「ゆっくり」で、ほっとできる「癒し」の瞬間を与えてくれるのです。
ぼのぼのの名言
ぼのぼのはこの物語の主人公のラッコ。
おとなしくのんびりとした性格をしたぼのぼのは、普段から物思いにふけることが多く、想像力が豊か過ぎて怖い考えに発展してしまうことも多くあります。
そんなぼのぼのには、物事の「本質」をとらえるような深い名言が多くあります。
「どの石がボクを好きなのかわからないなァ」
お気に入りの貝を割る為の石が割れてしまっていたぼのぼのは、アライグマくんとシマリスクくんと入江に石を探しにいきます。
そこでぼのぼのは多くの石を見ながら選んでいくのですが、どの石も好きなぼのぼのがこの一言。
純粋な気持ちから出てきたこの言葉は、ぼのぼのらしい「視点」が光る一言でした。
「『生きるキリョク』ってなんだろう 『生きるキリョク』がなくなるとどうなるんだろう」
シャチの長老からシャチのスカーフェイスの恋人が殺されてしまった話を聞いたぼのぼの。
そのとき長老が話した「スカーが生きるキリョクを無くしてしまった」という言葉に、「生きるキリョク」とはなんなのかと疑問に思ってこの一言。
何でも疑問に思ったことを考え抜くぼのぼのの特徴でもある「疑問」の始まりをよく表している一言でした。
「シマリスくん こわれたりしても ほんとになくなってしまうことってないんじゃないかなぁ」
小さい頃に遊んでいたかっこいい石が今どこにあるのかを探し始めたぼのぼの。
シマリスくんに「もうこわれてなくなってるかもしれない」と言われたぼのぼのは、それでもどこかに小さく残るはずだと、壊れてもまた欠片が残ると物思いにふけって一言。
単純な疑問から生まれた考えでも、実はそれが物事や万物の「本質」を突いているとも思わせる一言でした。
「数が増えるとなぜみんな好きじゃなくなるのかなぁ」
増えていくミンナ虫について話すぼのぼの、シマリスくん、アライグマくん。
ミンナ虫をひとつずつ捕まえていこうとする三人でしたが、ぼのぼのは数が増えていくことに対して疑問に思ってこの一言。
人間社会でも通用するような数に対しての「価値」という概念にするどく入り込む一言でした。
「困らないんなら きっといらないんだよ」
新しい島が崖崩れによってできたのを知ったぼのぼのとぼのぼののお父さんは、家を作ろうと奮闘します。
色々と試行錯誤を繰り返して作るも、島も家も満ち潮で無くなりそうな状況に…。しかしぼのぼのは、そんな状況でふとお父さんに一言。
さまざまな悩みが付きまとう現代社会に向けられたような、ぼのぼのだからこそ言える「単純」という名のわかりやすい一言でした。
シマリスくんの名言
シマリスくんはぼのぼのの友達のリス。
すばしっこくてオスでありながら女言葉で話し「いぢめる?」と首をかしげるシマリスくんは、森のみんなからよくいじめられる存在でした。複雑な家族構成でのトラブルに日々巻き込まれて少し疲れ気味な一面も増えていきます。
そんなシマリスくんには、苦労から生まれる「悟り」のような現代社会にも通じる名言が多くあります。
「いぢめる?」
シマリスくんの代名詞とも言えるのがこの名言。
物語初期に目立つこのセリフは、シマリスくんの愛らしさと憎らしさを合わせもった素晴らしい一言で、これによってシマリスくんはいつもアライグマくんにいじめられてしまいます。
「誰にでも やれることとやれないことがあるものよね」
木の枝に大きな石を乗せている「石の木」を見に行くぼのぼの、シマリスくん、アライグマくん。
小さな枝が石を乗せたまま成長したのではないかと言うぼのぼのに対し、アライグマくんはぼのぼのが例えで小さな石を乗せて使った小さな枝を持って、「石の木」の大きな石を乗せようと考えます。
しかしそもそもその大きな石をどうやって持ちあげるかに止まってしまった姿に、シマリスくんが悟ったような一言。
シマリスくんは度々こういう「諦め」とも取れる発言が多く、子供らしからぬ一言でした。
「雲は 気持ちを運んでくるのでぃす」
空にある雲を眺めていたシマリスくんのもとに姉のショーねえちゃんがやってきた。
雲は「何をするもの」なのかというシマリスくんの疑問にショーねえちゃんは「雨を降らすもの」と答えるも、シマリスくんはそれだけではないと一言。
子供ながらにどこか大人びたて感情的なシマリスくんの「センチメンタル」な一言でした。
「趣味というのは役に立たないことなのでぃす」
趣味の話をしていたぼのぼのは、どういうものが趣味でどういうものが趣味じゃないかの疑問を持ち始め、その疑問に対してシマリスくんが堂々とこの一言。
少し強引だけどなぜか違うとも言い切れない「納得」の一言でした。
「だからこの世にどうしようもないことなどないのでぃす」
昔と違ってしまいさびしいと思うことに「どうしようもない」というシマリスくんのお父さんに対して、シマリスくんは「さびしかったら元に戻せばいい」と、お父さんに強く一言。
普段は感情的でネガティブなシマリスくんには珍しい、人生訓にもつながるような「ポジティブ」な一言でした。
アライグマくんの名言
アライグマくんはぼのぼのの友達のアライグマ。乱暴で気性の荒いアライグマくんは、ぼのぼのやシマリスくんののんびりとした行動にいつも腹を立てています。
親父譲りの気性の荒さと物事の白黒をハッキリとさせたい気持ちからか、明快で強引な思考が目立ちます。
そんなアライグマくんには、物事を判断する上での「単純」で爽快な名言が多くあります。
「後でこまるんだったら 後でこまればいいじゃねえか」
ぼのぼのが貝を全部食べてしまい、後で食べたいときに困ると考えていたことに対して、アライグマくんは不思議そうに一言。
後のことを今考える必要があるのかと、その必要性を問うようなアライグマくんらしい「明快」な一言でした。
「オレたちはバカで もそもそメシを喰うしかないのさ」
いつものように遊ぶ三人のなかで、ぼのぼのはまた答えのないような考え事をするのだが、その考え事をふっきるようにアライグマくんは一言。
まずは自分たちを「バカ」と称してしまう潔さと、メシを喰うという生物の「欲求」を端的に表してしまう一言でした。
「ああ…ひとりでいる時のみんなはなんで あんなにさびしそうなんだろ…」
いつもは変な顔をして遊ぶヤマビーバーくんがひとりでいるところを見つけてしまったアライグマくんは、ふとしたときに「ひとりでいるところ」を見た感情を一言。
物事に対してあまり疑問を持たずに解決してしまうアライグマくんには珍しい「負」の一言でした。
「古くならないものなんかないよ」
貝が腐ってしまったことをきっかけに「古くならないもの」を探していたぼのぼのに対して、アライグマくんはぼのぼのにキッパリと一言。
古くなるという万物の「真理」を感じさせる、アライグマくんにハッキリと言ってもらえるからこそ納得できる一言でした。
「疲れてきたら 次はあそこまでっていう目標を決めるとまた歩けるようになるよ」
ラッコのレリちゃんに好意を持ち、少し疲れてきたレリちゃんに対していつもとは違うやさしい気持ちで語りかけたアライグマくんの一言。
単純な思考だからこそ見えてくるものもある「勇気」を感じるようなアライグマくんらしからぬ一言でした。
スナドリネコさんの名言
スナドリネコさんは、非常に物知りでたくさんの相手から質問を受ける頼れる存在。冷静沈着で知識も豊富で達観している為か、どこか哀愁漂う雰囲気を持っています。
そんなスナドリネコさんには、思わず唸ってしまうような深い「哲学」を感じるような名言が多くあります。
「それはヒミツです」
スナドリネコさんの代名詞とも言えるのがこの名言。
普段は冷静で相手に対しての助言が目立ちますが、いざ自分のことを聞かれるとこの一言で逃げ切るシーンが見受けられます。
「こまらない生き方なんか 絶対 ないんだよ そしてこまるのは絶対 おわるんだよ」
いつも物事に対して考え込み、「どうしてこまってしまうのか」ということにこまってしまっているぼのぼのに対して、スナドリネコさんはぼのぼのの悩みを解決させるように一言。
物知りで達観したスナドリネコさんから放たれる一言には、人生で誰しもが通る「悩み」に対して安心させてくれるような一言でした。
「なぜなれるかは問題じゃないよ なぜなれないのかが問題なんだ」
何かに「なれる」「なれない」でのヒグマの大将との議論で、スナドリネコさんは真っ直ぐな目でこの一言。
現代社会にも通じる「可能性」ということに対しての一種の答えを教えてくれたような一言でした。
「夢がどうしてへんかだって? へんな方が楽しいからじゃないか 楽しいとみんなちゃんと寝るだろ」
ぼのぼののいつもの「答えのないような」質問に対しても、スナドリネコさんはいつもわかりやすく答えを教えてくれる。
聞くとなるほどと、なぜか納得をしてしまうスナドリネコさんらしい「納得」の一言。
「なにもないのを確認するために歩いているようなもんなんだだから歩いているとだんだん気分が落ち着いてくる あぁ今日もなにもなかったってな」
スナドリネコさんがいつもなぜ歩いているかを質問するシマリスくんに対して、スナドリネコさんは「何もないのが一番」とそっと一言。
スナドリネコさんらしい達観した視点と、どこか「心」にスーっと入り込んでくるような一言でした。
まだまだある!その他登場人物の名言
ぼのぼのの作品にはまだまだ個性あふれるキャラクターが登場し、さまざまな視点と心強い名言を作り出しています。
今回はそのなかでも特に心揺さぶる名言を紹介します。
「生き物が悩まなきゃいけないことなど この世にはないような気がするんじゃよ」(シャチの長老)
ぼのぼののお父さんの昔のことをぼのぼのに話すシャチの長老。シャチの長老は長く生きてきた中での教訓のような一言を話しだします。
「考えることをふたつだけにすりゃあ やるべきことはすぐ決まるってもんだぜ」(ヒグマの大将)
テンの父親との会話のなかでヒグマの大将は、物事をかんたんにする解決策を思いついてこの一言。
「生き物の目的は生きて死ぬことだけじゃ 余計なことをつけ足すな」(オオサンショウウオさん)
クマのカシラとの対決でボロボロになったスナドリネコさんを見たオオサンショウウオさんは、「生きる目的」は単純でなければいけないと一言。
「なにができないなんてのはたいしたことねえぞ なにができるのかなんだ」(アライグマくんの親父)
アライグマくん親子の協力もあって木に登ることができたぼのぼの。
ぼのぼのは「できること」や「できないこと」に対してアライグマくんのお父さんに質問をすると、アライグマくんのお父さんは、スナドリネコさんのかつての「なぜなれるかではなく、なぜなれないかが問題」という考えとは全く真逆の答えを一言。
「おまえは助ける場合の一番いい助け方って知ってるか? 助ける方が助けた時におもしろかったのが一番いいんだよ」(子持ちリスさん)
物知りリスさんと「助ける」「助けない」の話になった子持ちリスさんは、一番いい助け方という持論をマイペースに一言。
「思ったとおりにならなかった楽しさというのもあるものさ」(クズリくんの親父)
スナドリネコさんを上手く動かしたクズリくんのお父さんに「思ったとおりになって楽しい?」と聞かれたクズリくんのお父さんが一言。
「好きかどうかというのは二人だけの問題です 決して誰かに証明しなければいけないものではないのです」(ダイねえちゃん)
シマリスくんの姉のダイねえちゃんの夫ピッポさんに対して、ダイねえちゃんを好きな「証拠」を聞こうとするアライグマくんに対して、ダイねえちゃんが話を遮るように一言。
「みんな心配でもないことまで心配しすぎるんとちがうかな」(カマチョ先生)
「メシを食うのがめんどくさい」と言うクズリくんのお父さんを、ヒグマの大将は師であるカマチョ先生のところに連れて行きます。
そこでカマチョ先生は、「心配」に対しての考えを一言。
「恋か…うん…地平線と恋って関係あると思うよ」(ヨンジャさん)
地平線を眺めることが好きなヨンジャさんは、アライグマくんに恋のことについて聞かれるとこの一言。
「みんなね 生きて行けなくなると 死ぬんだよ」(ぼのぼののお父さん)
シャチの長老が死んでしまったことに対して、ぼのぼのはお父さんに「悲しくないの?」と聞くと、ぼのぼののお父さんは普段通りの顔で悟りを感じる一言。
最後に…
「ぼのぼの」にはなんの変哲もない「日常」という時間が流れています。そしてその日常は、一見すると「無駄」とも思える程にゆっくりとゆっくりと進んでいきます。
忙しい日々を送る現代社会で私達は、「無駄」を嫌い、常に「効率」と「結果」を求めます。その時間の流れは必ず現在から未来へと進みます。
ぼのぼののあるシーンで「川が流れている」のではなく「水が流れている」と気付く話があります。そしてそれは川底が動いていないことで気付くのです。
川の流れを時間とするならば、私達はきっと川の流れの「速さ」や「行く先」などの「時間」を気にするでしょう。しかしぼのぼのは「何」が流れているのかを知りたいだけでした。そこに「時間」の概念はありません。
このぼのぼのの知りたかったことは、現代社会で求められる「効率」でも「結果」でもなく「無駄」とされがちなもの。
しかしそれは、現代社会で逆らうことのできない絶対的な時間の流れから唯一逆らう「瞬間」でもあるのです。この「瞬間」こそぼのぼのが「哲学」や「癒し」と言われる理由であるのだと思います。
そんなぼのぼのの世界に入り込めば、時間に追われる毎日のなかで忘れがちな大切なことに気付かせてくれるのかもしれません。
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作者
アナゴ
「アナゴさんの%表示マンガ感想」というマンガ紹介ブログを不定期に更新中。インドア趣味がマンガで、アウトドア趣味がロードバイクの1988年生まれ。好きな漫画家は「荒木飛呂彦先生」「福本伸行先生」「浅野いにお先生」「柴田ヨクサル先生」です。面白いマンガには「リアリティ」がある。それは「世界観に引きずり込む力」。そういうマンガに出会えたとき、マンガを読み続けて良かったと心から思えます。記事タグ
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