現役主婦推薦!産後クライシス克服のためのヒント漫画
更新日:2016/04/13 10:30
ミドルエイジ・クライシスという言葉がある。いわゆる“中年”になると、職場では中間管理職となって部下と上司の板挟みにあい、また家庭でも両親の介護や自分の老後の問題が吹き出してくる。その結果、鬱症状などに悩まされることもあるのだ。
この症状を女性の産後の不安に当てはめたのが、産後クライシスだ。出産でホルモンバランスは崩れるし、子育てに不安を覚え、夫に家庭を顧みる余裕がなくなる。また、そうした具体的な環境の問題ばかりでなく、自分の人生はこれでよかったのかといった深い苦しみにも襲われる。
夫婦の間に出現する「産後クライシス」は、夫婦関係そのものを壊して、ひどいときは離婚にまで発展することもある。また、夫を男性としてみることができなくなり、セックスレスに陥ったり、子育てをむずかしくさせたりと、問題が次々と出てくるパンドラの箱である。
克服する方法は、さまざまにあるとは思うが、愛をメインテーマとする漫画のなかに、力強いキーイメージがあるはずだ。誰にでも訪れる可能性のある「産後クライシス」からの、生還のヒントを漫画から探っていこう。
産後クライシスとは
出産後、夫婦の間に生まれ出た危機を「産後クライシス」と呼んでいる。
子供が0~2才のころの離婚がとても多い。これは「育児ノイローゼ」や「産後ブルー」など呼ばれ従来は母親の側に問題があると考えられてきたが、実は夫婦の「関係」の歪みが起こす症状と定義され始めている。
原因
妊娠・出産後にホルモンバランスが崩れてしまうことや、子育てが始まることによるライフスタイルの変化が大きな要因として考えられている。近年では、積極的に育児をする“イクメン”という概念もメジャーになり、理想と現実のギャップに悩む女性もいるのではないだろうか。
時期(いつから~いつまで)
一般的には産後2~3年の間で、産後クライシスによって夫婦関係に危機が訪れるといわれている。
ベネッセ教育総合研究所が行った「第1回 妊娠出産子育て基本調査・フォローアップ調査(妊娠期~2歳児期)」によると、妊娠期から2歳時期までで、結婚生活に対する満足感や配偶者に対する愛情が激減していることが分かる。
起こること
産後クライシスは離婚のきっかけにもなりうる。一方で、ギクシャクしたまま離婚をしてしまい、復縁をしたくてもできない…と後悔をしている人も少なくない。このような事態にならないためにも、まずは関係修復に努める必要があるのかもしれない。
克服法・乗り越え方
例えば、里帰りをする、旦那さんとしっかり話し合って家事や育児を手伝ってもらうなど、人によってさまざまな乗り越え方があるだろう。大切なことは辛いときに我慢をしないこと。周りの人を頼ることが一番の克服方法なのかもしれない。
現役主婦に聞いた!産後クライシスの描き方・乗り越え方が素晴らしい漫画
「産後クライシス」について現役主婦に聞いたアンケートをもとに、その実態と回復のヒントを探ってみた。
『コウノドリ』 126話~127話「妊娠高血圧症」
鴻鳥は天才ピアニストの別の顔を持つ産婦人科医だ。彼のもとに搬送される妊婦たちのさまざまな症状を、リアルな筆致で描いてゆき、産後クライシスへの警鐘を鳴らす。
産後クライシスは女性だけでなく、男性にも起こりうる。些細なことでセックスレスなどのさまざまな要因を作り出し、関係を悪化させてしまうのである。
産後クライシスを乗り越えるためには、夫婦同士の理解と協力が必要であると教えてくれるシーンだ。
『ヨルノセイカツ』 2話「ヨルノセイカツ2」
さちは出産後、妻でなく母となってしまったせいか、ホルモンバランスの崩れのせいか、セックスができなくなってしまった。夫を男でなく、お父さんとしてしか見られないのだ。
「夫婦の葛藤にワカルワカル!となる方も多いのでは?」(40歳、1児)
愛しているのに、夫にさわられるのが嫌…触れられると全身にサブイボが出てしまう…。そのことに自責を感じるさちだったが、やがて悩んでいるのは自分ばかりでなく、夫も苦しみのなかにいるのだと気づく。
妻の前では明るく笑顔で接していても、かげでは悲しげな表情で眉を曇らせている。夫の真意を知ったところから、ふたりは夫婦として、男と女としての付き合い方を見つめなおし、次第に関係を修復していく。
『はざまのコドモ 息子は知的ボーダーで発達障害児』 6話「傷つくコドモ」
自分の子供が障害者だったらどうだろう。しかもこの作品中の子は、健常者にも知的障害児にも当てはまらず、そのボーダー、つまり「はざまの子」なのだからなおさらだ。
一般の学校では問題行動が多いといわれるが、知的障害としての手当も出ない。そのうえ「この家では安らげない」と夫が浮気をし、とうとう離婚にまで発展してしまう。
作者を救っているのはただ一つ。
そのことを、ほのかに笑いを含んだコミックに描けるということ。自分を客観視できる力だ。この力が読者をも慰撫する。
『くらしのいずみ』 11話「冬木家」
(c) 谷川史子/少年画報社
幸せの形は夫婦の数だけある、とよくいわれる。それは裏を返せば、夫婦の数だけ危機もあるということだろう。このオムニバス作品は、日常のなかに芽生えるクライシスを、七つのケースに分けて描き出している。
「夫婦っていいなーと思えるお話です。」(32歳、1児)
突然実家に帰ってしまった妻に、何をしでかしたかしきりと考える夫。妻との関係、自分のこと…夫はあらためて見つめ直すのだ。
夫婦の危機を解決するのは、日々の暮らしを大切にすることしかないのかもしれない。
『37.5℃の涙』 7~9話「母親の敵は常にすぐ側にいる」
(c) 椎名チカ/小学館
桃子は研修を終えて、病児保育士としてさまざまな家庭を訪問することになる。家庭にはそれぞれの事情があって、母親が一日中家を空けることもある。
出産後も仕事場に復帰したい美咲もその一人だった。しかし、子供が熱を出してもちっとも家事を手伝ってくれない夫や、仕事場でのプレッシャーにどんどん追い詰められてゆく。そんなとき出会ったのが病児保育だった。
一人で思い詰めないこと、夫に手助けのメッセージをきちんと形にして出すこと。美咲は目が覚めるような思いに安堵を覚える。
「女性の心情などが手に取るようにわかる。共感できるところがいいですね。」(41歳、2児)
『透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記』 13~14話「初産指導」
産婦人科は夫婦の幸せが宿る場所と思うのは間違いだ、この作品を読んでいるとつくづそんな気持ちになる。
産婦人科でアルバイトをする沖田×華は、出産現場の過酷さを知る。
不妊治療を4年も続けている神楽田夫妻のケースでは、不妊の原因が妻でなく夫の側にあることが判明。妊娠が分かっても、本当に自分の子なのかと疑われDVへと発展してしまう。
不妊の原因は必ずしも妻にあるとは限らない。夫の深い理解が必要だ。
出産現場のシビアな様子が淡々と描かれていることが、かえって赤ちゃんへの愛情や、夫婦の絆の重要さに気づかされる。
登場人物たちが大人の感性を持っているから安心して読めるのだ。
『女の問題提起 SEX編』 2話「問題提起・1 セックスレス さわれない月(2)」
瑞希は仕事先でカタタタキにあい、専業主婦になる。この際だから子供を作ろうと思ったのだが、計画的なSEXスケジュールに夫・哲生は嫌気を感じ、次第にセックスレスに陥ってしまう。
「夫婦のHは義務なのか。普遍的なテーマだと思います。」(32歳、1児)
産後クライシスというより、産前クライシス。夫を失いかけたとき、瑞希は本当の愛に気づく。
クライシスはつい自分のなかだけにあると思ってしまいがちだが、夫も含めた「関係」の歪みなのだと思った。
『にこたま』 5話「蚕豆(1)」
交際歴9年の温子と晃平は、交際歴の長さからか結婚のタイミングを掴めないカップル。そんなとき、晃平は職場の女性を妊娠させてしまう。その女性は一人で産んで育てると強い意志を持つが、晃志は動揺から抜け出せず、温子の顔もまともに見られないありさまだ。
父親としての自分の責任、認知の問題、恋人への罪悪感、職場でこのことが知れたらという恐れ、あまたの不安に襲われる。だが、考えても考えてもどうしたらいいのか分からない。一挙に解決する手段なんてないのだ。
結局、晃志は温子に事態を告白し、ねじ曲がった二人の関係を、じっくりと修復してゆく。真実は時として辛いものだが、その辛さに向き合うことこそ、明日への一歩となるのかも知れない。
浮気のあげくの妊娠、結婚、セックス、産後クライシスこそあらわれないものの、「妊娠」や「結婚」、「自分の子供」とは何なんだろうと主人公と一緒に考えさせられる。
『イクメン!』 6話「休めん!(3)」
(c) 森脇葵/講談社
「産後の奥様の気持ちを理解するために男性にぜひ読んでもらいたい」(40歳、1児)
週2のアルバイトをしながらバンドのメジャーデビューを目指す洋哉と、突然の妊娠を告げて出産の意志をはっきりと表明する美郷。洋哉は子育てと家事を引き受ける主夫となるが…。
男にはなかなかリアルに感じられないシチュエーションがコミカルかつ生々しく描かれている。相手の立場を知ることが危機解決の一助となるのではないだろうか。
『ごんたイズム 子育てバトル365日』 10話「夫婦の攻防」
仕事でちょー忙しい私は、柊太の世話を夫にまかせっきり。ところが夫は子供の面倒を完璧にこなし、柊太はなんだか私よりもパパの方が好きみたい。休日にSLに乗りに行った夫と柊太は、ヘトヘトに疲れて帰ってくるはずが、元気いっぱいのご帰宅。私と夫の間には、なんとはなしの溝が生まれてきているみたいな気がするこの頃…。
どうしてだろうか、笑える「産クラ対策の裏技」を見ているような気持ちになる。
「産後クライシス」は、病気でもないし、性格の歪みでもない。ただ普通に妊娠して出産しただけなのに、夫婦の間に暗い影が落ちてしまう。誰を恨むわけにもいかないところが、本当に辛い。
けれど忘れてはならないのが、この不幸が子供を巻き込んでしまうことだ。幼児の思惑を確かめることはできないから、夫と妻の間のいさかいは、いつの間にか子供をどこか遠いところへ置き去りにしてしまう。
「産後クライシス」だけはなんとか避けたい。もし避ける方法がないなら、より多くを知ることによって、解決する手がかりを得ることはできるだろう。ここにあげた漫画がせめてなにかのヒントになればと思う。
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作者
岡野宏文
1955年横浜生まれ。フリーライター&エディター。原稿を書いて食べている。書いた原稿を食べているわけじゃない。出版社・白水社にて演劇雑誌「新劇」の編集長をつとめた。「ダ・ヴィンチ」「せりふの時代」「デジタルTVガイド」などに何が専門だか分からない連載を書いたりして、NHKBSテレビ「名作平積み大作戦」にプレゼンター役での出演まであるとなれば、手の施しようがない。著書に、20世紀のベストセラー100冊を痛快に対談書評した『百年の誤読』共著著・豊崎由美がある。記事タグ
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