4.0
正解かどうかなんて
とても重いテーマを描いている作品。
しかもそのテーマはひとつではなくいくつもが盛り込まれていて、どんな人でもその様々な立ち位置で、感情移入出来る作品になっているのではないかと思います。
私自身は生まれも育ちもどちらかというと都会的な地域ですが、認知症の祖母と2年ほどだけ田舎暮らしした経験があります。
その経験を思い返してみると、この作品で描かれているあらゆる場面が決して単なるフィクションではないと感じます。
その土地独自の空気、暗黙のルール、密な距離感。
こう書くとネガティブに響きますが、その土地の人々からすれば、ごく自然にやっているし当然だとされている事が多々ありました。
「良かれと思って」←魔法の言葉。
そんな独特の雰囲気を思い出しました。
でも作中の老夫婦にとって、そのすべてが救い以外の何物でもなかったんですよね。
ちょっと乱暴に聞こえてしまうかもしれませんが、老夫婦や地域の皆さんがした選択、そしてその結果が正解かどうかなんて、正直どうでもいいとさえ思えてしまった自分がいます。
それは作中の登場人物の皆が、その事実を受け入れ、最終的に納得しているから。
社会的にとか倫理的にとか、そんなレベルの話ではないものが通るこの世界観は本当の意味での優しさと愛なんだと思います。
この世できっと、一番苦しむであろう死に方を選んだ老夫婦は、それがせめてもの贖罪だと決意したのでしょう。
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