5.0
お勧め
内容も構成もよく出来ており、大正時代初頭を舞台にしているようだが、概ね時代背景も正しく描かれていた。
特に情景描写が優れている。主人公の鈴が雨夜に家を出るくだりは容易に場面を想像でき、何度読んでも泣ける。また、人物のキャラクターが魅力的に描き分けられていて、感情移入できる点も素晴らしいと思う。
題材は遺産相続を巡る話だが、話が進むほどに叔父夫婦が執拗に鈴を虐め抜いた理由が「本当に鈴が死んでくれたら良いのに」と考えての行動だったのだと納得。
一つ難点を挙げれば、手紙は現代風で細かいミスが気になった。宛名は文頭ではなく、文末の結びの言葉の後に書くのが正しい。
それでも、多くの人にお勧めしたい作品である。
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