5.0
飽き飽きしているあなたに
正直、「ゲームもの」の漫画には、飽き飽きしていないだろうか。
「またそういう系ね」と思いつつ惰性で読んでしまう自分に、うんざりしていないだろうか。
そんなあなたに、「今際の国のアリス」。
とにかくひとつひとつのゲームがよく練られていて、完成度が高い。
緊張感も半端じゃない。
子どもの頃のかくれんぼに感じたような、無邪気なドキドキを思い出した。
アイデアの数々と確かなクオリティーでもって、最近の「ゲームもの」への失望感を完全に蹴散らしてくれた。
感謝したいくらいである。
結末は賛否両論あると思うが、私はこれ以上のオチも浮かばないし、特に文句はない。
ただまあ、途中のスピンオフはちょっと多すぎる気もする。
そして、いかんともしがたい、「今際の国」への憧れ。
学校や職場や家庭がそれなりに充実していたりして、「まあ、幸せだよな」と感じていたりなんかして、決定的な不満や致命的な欠陥が日常にあるわけでもなくて。
それでも。
心の片隅に、魂の奥底に、もしかしたら、潜んでいないだろうか。
現実の日常の秩序が全て崩壊した世界に対する、ないものねだりの妄想や、渇望が。
私にも、もしかしたら、あなたにも。
そんなあなたに、「今際の国のアリス」。
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