阿字野がどうやってカイを育んできたのか、どうやってカイの人間性を大きくしていったのか、その細やかで深い愛にうたれる。私は雨宮修平も好きだが、修平の父が「阿字野はどういうレッスンをカイに?」と表層的な面で悩むのだけれど、いわゆる一般のピアノ教師のしている「ピアノの技術を教え、導くこと」とはまったく次元の違うことを阿字野はカイにほどこしてきた、それは雨宮父の想像の範囲を超えていることがこの話から読者はしっかりとわかる。…もちろん雨宮父も修平を可愛がって育てたのだろうけれど…。阿字野とカイは本当の父子でないからこそ、接する時間が限られていたからこそ、その運命的な結びつきを思わずにいられない。
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