3.0
危うい、とても危うい糸の上を進んできた関係の2人でした。盲目的な信仰対象の如く全ての「厄災」を排除する内に、最終的に「厄災が生まれる元凶」に考えが巡ると言う…。エンディングで何が行われたか妄想は尽きません。
何故モンスターが育ってしまったか、それは身内の接し方だと作中では描かれています。賛否両論と思いますが、自分を神と勘違いした者、美しい人間を神と勘違いした者、彼らは境遇によってそう刷り込まれてしまいました。悲劇です。周りにとっても。
お兄ちゃんをそうさせたのは間違いなく母親でしょうね。器量が悪いのを絶対的な欠点として増幅させてしまった。シンママで、がむしゃらに、無我夢中で、育て上げなきゃならなかった、は言い訳である。見た目に絶対的なコンプレックスを持った彼は、神々しい迄のまばゆさを彼女に見てひふれし魂の底から陶酔してしまい、彼女の表情が陰る憂いになるもの全てを排除せずにはいられなくなってしまった。
母親の周りの人間を見ても、人の幸福にはケチを付け、愚痴には乗っかり、しかし重大な結末がやって来るまでは誰も本気で心配はしなかったのが、母親の人間性を表している。
この作家さんはダークな作品が多々あるが、他の天然サイコな話より、鍛え上げた結果サイコになったと言う部分でより悲惨な話だと思う。
- 10