5.0
心理描写たまらん!
大好きな作者さん。愛とはかくも〜と地味リーマン~から本作へ来ました。好き過ぎて紙書籍も購入済です。
今回は終始シリアスで、私が先に読んだ2作とは、全く毛色が違うけど、もしかすると一番好きな作品かもしれない。エロも好きなんですが本作はほぼなし。でも何より心理描写がとにかくお上手。他の作品より重めだから、特に巧みに感じるのかも。
「船戸は4人いる=その辺では特に珍しくない名前」という伏線。これが抜群に効いていてミスリードさせ、本当に思いがけない方向へ転がって行く。
ショックなのは純のはずなのに、我が身に起こったかのような衝撃。あの展開すごい。
そして、本作も相変わらずの台詞回しの巧さ。何でこんな表現思い付く?ってどの作品でも唸らされるけど、今回は特に印象的な表現が多い。
お互いが狡いようで優しくて誠実なようで嘘つきでもある。この大いなる矛盾の描き方が秀逸で、どんどん引き込まれる。
どれだけ真剣に好きになったとしても、望むような形で報われることはそうそうないってことを、2人を取り巻く色んな関係性で見せてくれる。とても切なくもあり、新たな関係性を築くこともできるんだ…と妙に感心してしまったり。
皆さんのレビューでハッピーエンドであることはわかっているはずなのに、安易な落としどころはなく、簡単に安心させてはくれない。拗れてしまった感情と関係のためには、相応の時間が必要だったってことですね。
恐らく多くの人が経験しているであろう微かな希望からの絶望とか切なさとかもどかしさとか、そういう心理描写が実にリアル。
本作も滅茶苦茶読み倒して、それでもまたすぐ読みたくなって…いつになったら他の作品に行けるんだ?ってことになると思います。本当に尊敬しかない。ますますファンになりました。今後のご活躍も楽しみにしてます。
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