5.0
たまらなく面白くて切ない
現在発売の4巻まで読みました。
勇者ヒンメル、戦士アイゼン、僧侶ハイター、魔法使いフリーレンが魔王討伐を終え王都に戻る場面から始まる物語。全てが終わったところから始まる設定は本当に面白く素晴らしい作品だけど、読み始めてからずっと胸が苦しい。郷愁とでも言うべきか…
ある程度の年齢になると誰にでも思い当たる節があると思うが、愚かな事に大切な人を失ってから気付くことの方が遥かに多い。その時には気付けなかった相手の言動の意味や気持ち。自分が本当に伝えなければいけなかった言葉や気持ち。どれだけ悔やんでも既に相手はこの世に居らず、自分の記憶を辿り後悔するしかない。
何を教えてもすぐに死んでしまう人との旅は時間の無駄だと言い切ったフリーレンが、ヒンメルの死によって自分の一生の100分の1にも満たない時間(10年)の旅にかけがえの無いものを見出す。
幻影鬼がヒンメルを見せたときにはぐっと来たし、ハイターとアイゼンが自分たちの頼みとしてそれぞれの弟子をフリーレンに託し、フリーレンを天国のヒンメルと会わせようとしてるのも泣ける。そして全てお見通しだった師匠(大魔法使いフランメ)の愛情にも心を打たれる。
周りに与えられるだけだったフリーレンが、ヒンメルの死後、人に愛情を表現できるように変わっている。銅像をピカピカにしたり、蒼月草の花畑を作ったり、葡萄を酸っぱくしたり、仲間のための魔法の収集に余念がなく、例え一緒に居なくてもフリーレンは常に彼等とともにある。
フリーレンが未来で独りぼっちにならないため至る所に立ててもらった銅像、いつか一緒に見たいと言った故郷の蒼月草、久遠の愛を意味する鏡蓮華の指輪をフリーレンに捧げるヒンメル。どの場面をどう切り取っても愛情でしかないけれど、その時のフリーレンは大して気にも留めていないように見える。天国でヒンメルに会えたとき伝えられるかな。自分の気持ちとヒンメルの人生は素晴らしいものだったってこと。
今のところ、読者はほぼ登場人物の記憶の中のヒンメルしか知らない。勇者たるヒンメルを目の当たりにしていないし、魔王討伐に成功した一行の具体的な活躍も知らない。にも関わらずとても惹き込まれる。
魔王討伐後も次々と敵は現れ、新たな仲間と魔王討伐の足跡を辿って行く。この先も様々な思い出と気付きを与えてくれるに違いない。楽しみにしてます。
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葬送のフリーレン