5.0
悲しく切ない嘘
ある日、小説家の木島は大学生の久住に怪我をさせられて右手を負傷し執筆出来なくなる。
保険に加入していなかった久住は途方に暮れ、示談をするにしてもお金もない。
そんな中、木島が口述筆記を依頼することで諸々チャラにする提案をし、ふたりの奇妙な共同作業が始まる。
官能小説家だけあって木島が生み出す言葉を読み上げている際には、思わず吹き出しそうになるのだけれど
怪我をさせてしまった責任として
必死に文章を捉え様とする純粋な久住によって色々と救われます。
右手を怪我したけど、利き腕は左手とか。
締め切りを立て続けに(3本)抱えているかの様に見せておいて本当は仕事が入ってなかったり。
木島の虚言癖に振り回される主人公は純粋で真っ直ぐな分、怒りを露にするのですが
こんな切なくなるような悲しい嘘をつかなければ自身を保っていられなくなるほどに追い詰められていたのかと思うと憎めなくてやりきれなくなります。
木島の嘘はどれも憎めなくてかわいいのです。
マンションを引き払って田舎に帰った木島が携帯を持っていないからと久住と文通をしているのですが本当は携帯を持っている。
その理由が、久住の文字が好きだから。
久住からの手紙が楽しみで何度も読み返してるとか、、色々拗らせながらもかわいい。
純文学くずれの官能小説家というキャラクターはありがちだけど、映画の様に引き込まれ物語に浸れました。
- 5