4.0
できない「リセット」
容姿をめぐる人間の美醜の感覚というのはとても残酷で、信じられないくらい差別的な判断を無意識に行っている。
しかも、非常にイージーに。
それは、私も同じである。
例えば、善悪を判断しようとするとき、慎重に、あるいは理性的に努める人であっても、美醜についてはそうはいかないと思う。
自分が醜いと感じてしまったものを、努力によって美しいと思うことは、私には不可能だし、そんな自分を残酷だと思う。
しかし、どうにもならない。
できるのは差別的にならない努力をすることくらいだが、差別的にならない努力をしている時点で、差別の根が自分の中にあることを認めているのと同じだ。
「カワイイ」は日本の文化のひとつらしいけれど、その陰で、どれほどの「かわいくない」が踏みつけられていることか。
別にそれを肯定も否定もしない。
ただ、それが現実である、というだけだ。
その現実はあまりに強烈で、場合によってはそのどうにもならなさゆえに人を決定的に傷つけるから、ある種の「リセット」を望む人がいることも、頭では、理解できる。
「いや、自分の容姿がそこまで好きなわけじゃないけど、別にリセットはしなくていい」というふうに生きられている時点で、人は、まあまあ恵まれているのかもしれない。
そんな「リセット願望」に、希望を与える漫画も、あっていいと思う。
しかしもちろん、人生にリセットボタンはないし、無理にリセットしようとすれば、大抵、綻びが生じる。
この漫画が提示したのは「私もやり直せるかも」というポジティブなビジョンではなく、「リセットなんてできないよ」という残酷なメッセージではないかと思った。
そう言ってしまうと救いがないけれど、いくぶん肯定的に見れば、「あなたの運命を背負って生きるしかないのよ」というメッセージであると、まあ、とれないこともない。
いずれにせよ、口当たりのいい偽りよりも、苦くて現実的な教訓を、というこの漫画のスタンスが、私は嫌いではなかった。
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