聖女と悪女の異名が決定的になった日。けど、それならどうして、親世代は平手事件を知らないのか、という話である。
多分、どうしてエルザは妹をぶったのか、リリエルのシンパは聞かれたくないんだろうな。さすがに、エルザネスが何の理由もなく妹をぶったとは思わないだろうし、あれだけ怒鳴っていたのだから、話の内容は伝わっている筈だ。
おばあ様の宝石箱=形見の品を、善行の名の下に勝手に売り捌き、宝石なんてどれも同じと暴言を放ち、故人の悪口まで言う。お姉様の評判を上げるため、というのが、第3皇子曰くの「差しのべられた手」なのだろうが、そういうのは余計なお世話という。
リリエルが実際に何をしているか、どんな思想を唱えているかより、これだけ国の事を考えているんだから、という雰囲気だけで、本人があんなに望むのだから妃に、と運動しようとしている父親より、エルザの方が余程、リリエル本人に関心を持っているだろう。
両親に愛されて、弟とも仲良くて、使用人からもチヤホヤされて、且つエルザとは一緒に住んでいない期間もあるのだから、姉1人から関心を向けられない(ように見えた)ところで、リリエルにそんな痛手はないだろうに、寂しいなんて言うのは、多分、面白くない、の言い換えなんだろうな。エルザだけ、自分に対する態度が皆と違うから。
宝石なんてどれも同じというなら、リリエルは、後に王太子からもらった装飾品の数々も、換金して寄付したの? なんのかんの言いつつ受け取るよね、というプリッケの言い方からして、王太子からの贈り物は保存しているんだろうな、きっと。どうしてこうなった。
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悪女は変化する
056話
第55話