全然毛色は違うが、山岸凉子先生のバレエ漫画「テレプシコーラ」にもこんな感じのイジメが横行する。どうしようもないクズの両親で、ひどい貧乏で、そしてルックスも可愛いとは言いづらい空美ちゃん。性格も、仏頂面で無口で暗く、他人とのコミュニケーションを極力避ける。この転校生をクラスの男子が徹底的にイジメる。先生も見て見ぬふりだ。更に彼女は、将来に渡りひどいトラウマになるようなことを実の親に強要されながら、日々の生活を送っている。そんな悲惨な彼女の唯一の生きる理由とでも言うべきものが、バレエだ。彼女は本当は、素晴らしいバレエの才能とプロポーションを持つ天才なのだが、そのことを知っているのはただ1人、主人公の少女・六花のみだ。空美ちゃんという人間には、文字通り、「バレエしか無い」のだ。輝くような才能と、激しい情熱の全てを、バレエだけに賭ける執念。あまりにも痛々しい彼女の境遇を思えば、当然のこと、(と、当人でない人間はついつい簡単に言ってしまうけれど)「バレエをしている間だけは、何もかも全て忘れられる」流鶯くんもそんなダンサーなのだろう。
テレプシコーラの六花も、ダンスールの主人公も、イジメられてる「バレエの天才」を助けることも、やめろとも言えない。その子のコミュニケーション能力に問題があるから「イジメられてもあれじゃ無理はない」と、自分で自分の良心の咎めを無理矢理納得させてしまう。子供同士のイジメの一番タチの悪いことは、仲の良い友達が、「自分に対しては普通のいいヤツなのに、イジメの対象に対しては悪魔に豹変する」それを不快なことと感じるのに、何故か「友達」に対して子どもは制止できずに逡巡し、多くの場合させるがままにしてしまう。なんとなく同調し、一緒に面白がるフリをする。その状態が、とても不快なのに。実は、しつこくイジメをして楽しもうとする側の子の情動に、必ず何か深刻な問題があるのに、子どもは(大人さえ)それを面と向かって指摘することが非常に困難となる。兵ちゃんの中にかなりあるんだろうな。そしてそれは主人公との過去の関係とも少なからず影響があるんだろうな。
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ダンス・ダンス・ダンスール
015話
第12幕